オルタナティブ・ブログ > 技術屋のためのドキュメント相談所 >

専門的な情報を、立場の違う人に「分かるように説明する」のは難しいものです。このブログは「技術屋が説明書や提案書を分かりやすく書く」ために役に立つ情報をお届けします。

報告書添削:目標・問題・障害のパターン

»

前回に引き続き、今回も報告書の添削をする中で出てきた話題から。

何か問題が起きたときはたいていその報告が必要です。そのために使えるパターンをご紹介しましょう。

まずはこちらの文例から。新入社員研修中の新卒ITエンジニアが週報の中で書いた一節です。

[Javaに関して]
■問題
以前に使用したことのある文法やライブラリの使い方をすぐに思い出せず、本やネットで調べ直さなければいけないことが多い。

■障害
演習問題を解くのに予想以上の時間がかかっている。

■解決策
調べる時間を短縮することと、すぐに思い出せるように頭に定着させるため、使った文法やライブラリについては自分の言葉でまとめなおし、分からない箇所はすぐにそのメモを見返すよう試してみる。

大変わかりやすく書かれているので普通はこれで十分なところですが、ここでいったん「目標・問題・障害」というパターンをご覧ください。

何かが目標地点に向かって進行しているところで障害物があって先に進めず、そのため目標にたどり着けない、というのが目標・問題・障害パターンの基本形です。

kioku-220617-104457-0052.png

具体例で救急車が病院に向かっているとき、途中の細い道を一般車が塞いでしまっていて通れない、という場面を考えるとこうなります。

kioku-220617-104514-0053.png

「救急車はいつ着くんだ?」
「着きません!」
「・・・それは問題だな」 

↑ここは「問題」で良いでしょう。「障害」ではありません。

「なぜ着かないんだ?」
「道路を塞いでる車があるんです」
「・・・そんな障害があるのか」 

↑「障害」はここに使うのが適切ですね。ただし「問題」は意味が広いのでここにも使えてしまいますね。(それは問題だ!! ・・・おっと)

さらに、問題解決をするには普通は「障害」の原因を調べてそこに手を打ちます。

kioku-220617-104524-0054.png

「障害」を特定し原因を特定できればその解決策も立案出来るわけです。

この「目標・問題・障害・原因・解決策」という構造がハッキリわかるように報告するのがポイントなんですね。

Q:問題は何だ?
A1:救急車が着かないんです(狭義の「問題」)
A2:一般車が道路を塞いでいるんです(障害)
A3:事故車が横転して動かないんです(原因)

上記のQに対してはA1~A3のいずれも答になってしまうので、「問題」という言葉は実際には広い意味で使われます。そのため、「○○が問題です!」とだけ言っているとそれが狭義の問題なのか障害なのか原因なのか不明瞭です。問題解決には障害と原因を特定する必要があるので、「問題」という用語だけでは説明しきれません。

さてそれでは最初の新入社員の報告書をもう一度読みましょう。

■問題
以前に使用したことのある文法やライブラリの使い方をすぐに思い出せず、本やネットで調べ直さなければいけないことが多い。

↑これは「狭義の問題」ではなく「原因」ですね。論理構造を整理するとこんな感じになります。

kioku-220617-110317-0056.png

↑ごらんのように「原因」と「解決策」の間に「方針」という層を設けたほうがいいケースも良くあります。

これを踏まえて文章(箇条書き)で書き直すとこんな感じです。

■問題
 研修が予定の時間に終わらない

■障害
 問題を解くのに予想以上の時間がかかっている。

■原因
 (1) 以前に使用したことのある文法やライブラリの使い方をすぐに思い出せない
 (2) あらためて本やネットで調べなおすのに時間がかかる

■方針
 (1) 覚えられるようにする
 (2) 短時間で調べられるようにする

■施策
 (1) 使った文法やライブラリについて自分の言葉でまとめなおす
 (2) 分からない箇所はすぐにそのメモを見返す

↑原因、方針、施策の(1)(2)という番号は同番号どうしが対応します。

以上、目標・問題・障害のパターンでした。

これもどの職場・職種でも応用が効くパターンですので皆様の参考になれば幸いです。

Comment(0)