書評:外資系コンサルのビジネス文書作成術
「外資系コンサルのビジネス文書作成術」(著者:吉澤潤特、東洋経済新報社刊)という本を読みました。
いやー、この本、間違いなく「名著」ですね。MS-Wordでビジネス文書を作る機会がある人なら一度は手に取って読んでみることをお勧めします。ひとまず「はじめに」だけでも目を通してみましょうか。
「外資系コンサルが扱う書類」と聞くと、PowerPointによるチャートやExcelの表を思い浮かべる読者も多いだろう。しかしビジネスを動かすベースはWordで作成した文書である。PowerPointやExcelはプロジェクトを加速させることはあっても、単体でビジネスを勧めることはない。これはコンサルティング業界に限らず、すべての業種業界で言えることだ。それほど重要なWord文書だが作成法を学んだ人は少ない。見よう見まねで作成する、過去に誰かが作成したテンプレートを流用することが常態化しており、見にくく、読みづらい文書が今も企業間でやりとりされている。
いやもうおっしゃるとおりです。「過去に誰かが作成したテンプレート」・・・・どころか、文書の中身自体も「コピペ」で出来ているケースが少なくないですし・・・・(^_^;;;;
それを「読みやすく」するにはどうしたらよいのか?
と考えたときに必要になるのが4つのSであると著者の吉澤氏は言います。それが
- Structure ストラクチャー、論理構造
- Style スタイル、文書の体裁
- Sentence センテンス、文章
- Schema スキーマ、図表
の4つ。
ストラクチャー
言われてみればその通り。文書の「命」と言うべきものはストラクチャー、論理構造で、それをしっかり押さえておかなければ通じません。この本では論理構造を組み立てるときの「目的をはっきりさせる2つのルール」や「ロジックを組み立てる6つのルール」、「論点をまとめる基本のPREP法」など、必要なところがきちんと説明されています。これらは本来は学生のうちに身につけておくべきだと思うのですが、残念ながら多くの社会人は知りません。
スタイル
次の「スタイル」は文書の体裁。見出しと本文で書体を変えるとか、インデントを揃えるとか箇条書き番号の不番規則を統一するといった規則です。実際、実用的な文書を作ろうとするとWordの使い方がわからずこのあたりで苦労することも多いんですよね。Wordにはそのための便利な機能がありますが、当然、機能というのはそれを知らないと使えません。知らずにいちいち手動で体裁を変えていると、メンテナンスの時に破綻します。ビジネス文書というのはものによっては加筆修正を繰り返すもので、場合によっては何十何百ページに成長することがあるので、Wordのスタイル機能を使うことは本来不可欠なはずなのです。
ただ、困るのはそう思って「初めてでもよくわかるWordの使い方」のような、ソフトの使い方入門的な本を読んでも、個別の機能の使い方しか書かれていないこと。報告書、仕様書、提案書といったビジネス文書を書く場面に応じて、複数の機能をどうオーガナイズしていけばよいかという話はなかなかありません。この本ではその観点で「スタイル」を組み立てるポイントを整理してくれています。
個人的に「おおっ」と思ったのが、p.104-105 にかけての、図表2-17「スタイル書式要素の相関図」 こういった形で書式要素とスタイルの構造をまとめているものは今まで見たことがありませんでした。
センテンス
「センテンス」は文章を整えること。構造を単純にする、受け身を使わない、一般的な表現、明確な表現を使う、など、文章について一般的に言われる項目です。「良い文章の書き方」というとこのあたりが触れられることが多い基本のポイントですね。「ストラクチャー」がしっかりしていることが前提ですが、その上でこの「センテンス」にも気を配れば確かに良い文書が書けます。
スキーマ
最後の「スキーマ」は、図表のこと。IT屋さんがスキーマと聞くとDBのテーブル定義のことと思ってしまいますが、schemaという英語には「図表、概念図」といった意味もあるんだそうです。知りませんでした(^_^;)。 簡単な図や表を使って複雑な情報を説明するときのポイントも示されています。
まとめ
以上まとめると、この本は
- 伝わるための土台である論理構造の基本から、
- 体裁の整った文書を楽に書くための機能まで
- Wordを使ってビジネス文書を書くための基本の技術を一通りおさらいできる
かけね無しに名著です! ぜひお手にとってレジにゴー! をお勧めします!