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プレゼンロジックに説得力を持たせる4要素とは?

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技術屋のためのドキュメント相談所・所長の開米です。

今日は「プレゼンテーションのロジックに説得力を持たせる4要素」に関して書きます。

「プレゼンテーション」というのは要するに「言いたいことを人に伝える行動」です。
プレゼンをうまくやるためには、立ち居振る舞いや声のコントロール、ゼスチャーといった技術も必要ですが、そちらの話は私は書きません(プレゼン名人におまかせします(^_^)/)。

ここで書くのは、話す中身のロジックについてです。

プレゼンというのは「言いたいことを人に伝える行動」ですが、では「言いたいこと」だけでプレゼンが成り立つか、というとたいていの場合ダメですね。

A君:これからは1人用家電が有望です。1人用家電の開発を進めましょう。
社長:有望だという根拠は?
A君:私のカンです!

この場合、「言いたいこと」は「1人用家電の開発を進めましょう」ですが、その提案を聞いた社長氏は「根拠」を聞いています。まあ当然ですね。それに対して答えが「私のカンです!」では普通認められないので、もっとまともな根拠を出さなければ「言いたいこと」は通りません。

そこで、「プレゼンテーション」を構成するロジックには以下の図に示す「ファクト」「ビジュアライゼーション」「インプリケーション」「メッセージ」の4つの要素があることを知っておいてください。

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ファクトというのは生データそのもので、CSVファイルに並んでる数字の山とか1万人のユーザーの声とかそういうものです。それを生のまま見てもたいてい「意味」は見えてこないので、分析をします。

分析というのもいろいろな方法がありますが、一番簡単なのは単に「グラフを作る」という方法です。グラフにするだけで特徴が見えてくる、ということもよくありますので。

というわけで、「ファクト」の後に「ビジュアライゼーション」というステップというか工程が入ります。 グラフを書いたりロジックツリーを書いたりフローチャートを書いたりを総称してビジュアライゼーションと呼んでいます。

なお、「分析」というのはビジュアライズとは別な概念ですが、ここでは省略してあります。ビジュアライゼーションのために必要な分析作業が背後に隠れていると思ってください。

で、ビジュアライズをすると(分析をすると)そこから何らかの「意味」が見えてくることがあります。それをインプリケーションと呼びます。

たとえば、仮定の話ですが「消費税増税の前後で消費支出の統計を見ると、1割程度支出が下がっている」とすると、ここまでは「ビジュアライゼーション」ではっきりする情報。それを元に「増税は経済的に悪影響がある」・・・と解釈するのが「インプリケーション」です。

(別な例)たとえば国勢調査のデータを元に世帯人数別の世帯数をグラフ化したところ、「1人世帯が増加し続けている」ということが読み取れたとしましょう(仮定の話)。そこでそれを「1人世帯向けの家電製品市場が成長するだろう」と解釈したものが「インプリケーション」になります。

さらにそのインプリケーションを元に、「メッセージ」を作ります。「増税は経済的に悪影響がある」 → 「したがって今は増税をすべきではない」 と主張するとしたらそれが「メッセージ」です。

あるいは、「1人世帯向けの家電製品市場が成長するだろう」→「だから1人用家電の開発を進めましょう」というのが「メッセージ」ですね。

大まかに言って、「行動を提案しているもの」が「メッセージ」であると思ってください。

「増税は経済的に悪影響がある」とか「1人世帯向けの家電製品市場が成長するだろう」というのは「だからどうしろ」という行動は提案してませんね。
それに対して、「今は増税をすべきではない」とか「1人用家電を開発しましょう」というのは行動を提案しているので、メッセージと言えます。

「プレゼンテーション」というのはメッセージを伴う場合が多いですが、どんなときもそうだというわけではありません。状況によってはそもそもメッセージを求められていない場合もあり、そういうときはメッセージなし、インプリケーションまででプレゼンを行うこともあります。

ただ、ビジネスシーンにおいて「提案を出せ」と言われる場合はたいてい「メッセージ」が必要です。ですので、「ファクト」から「メッセージ」まで用意してそれをひとつにまとめて「プレゼンテーション」を行わなければなりません。

メッセージがないと「何を言いたいのかわからない」と言われます。
ファクトがないと「根拠薄弱」と言われます。
インプリケーションが弱いと「論理に飛躍がある」と言われます。
ビジュアライゼーションが弱いと「見る気がしない」と言われます。

以上、プレゼンロジックに説得力を持たせる4要素の紹介でした。
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