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「伝わる書き方」は今後のIT技術者にとって重要なスキル

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技術屋のためのドキュメント相談所・所長の開米です。

去年から執筆をしておりました技術者向けの書籍が無事今月末に発売されることになりました。

<文章嫌いではすまされない! > エンジニアのための伝わる書き方講座
http://www.amazon.co.jp/dp/477416576X/

技術評論社-伝わる書き方講座-枠つき.PNG

技術評論社から刊行されます。技術評論社様にはこの書籍の元になった特集から大変お世話になりました。ありがとうございます。

↓ 以下、本書の1章から一部引用 ↓

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 何にしても、「書く力」は今後のIT技術者にとって非常に重要なスキルになってきます。その上で少々気になるのは、IT企業のマネジャー職から現場のエンジニアまで、このことを理解していない傾向がちらほら見られることです。たとえば私は本書を書くためにSIerのインフラ技術者を取材した際、「うちの部長は "要するに紙書くだけだろ?" とか言って、ドキュメント作成を馬鹿にする傾向があるんですよ」という嘆きを聞いたことがありました。「紙を書く」という表現は他にも系列の違う複数社で聞いたことがあり、IT業界では慣用句としてよく使われているようです。だいたいの場合良い意味では無く、エンジニアにとっては雑務であるとか、誰でも出来るハンパ仕事、のようなニュアンスで聞くことが多いですね。

 (中略)
 そうは言っても自分はコードを扱う技術者であって、「紙を書く」ことに力を入れるのは気が乗らない、という方も少なからずいることと思います。そんな方は以下の2つの質問を自問自答してみてください。

質問1:あなたがあらかじめ予想して警告していたにも関わらず、それを会社が聞いてくれなかったために予想通り「困った事態」が起きてしまい、残念な思いをしたことはありませんか?

質問2:自分が過去にあれこれ調べて理解した技術に関して、同僚がさんざん悩んで失敗していたことを後で知り、「相談してくればよかったのに」と思ったことはありませんか?

 この2例はどちらも、「せっかくの技術力が活かされていない」というケースになります。「技術力」は人の役に立ってナンボです。1つ目の例ではもし自分が危険性を「わかりやすく説明する」ことが出来ていたら、困った事態は避けられたかもしれません。2つ目の例ではもし自分が調べたことを簡単なレポートにして社内ポータルにでも載せていれば、相談してくれていたかもしれません。ちなみにこれは実際に私の知人が実践していた方法です。30年以上前に高卒で大手電機メーカーに就職した彼は、業務から得られた知見を技術レポートにまとめて報告し続けた結果、その能力が認められて高卒ながら新分野の重要な新製品開発に抜擢されたそうです。

 「技術力」を活かすためには、あなたの技術的知見からどんなことが言えるのかを周囲に理解してもらわなければなりません。また、あなたが技術を持っていることを他の人に知らせることが必要です。それができないと、せっかくの技術力が活かされずに埋もれてしまいます。そのために役に立つのが「わかりやすく書く力」なのです。そしてその力は毎日数分ずつでかまわないので、意識してトレーニングすることで意外に短期間で向上します。食わず嫌いにならずに、ぜひチャレンジしてみてください。そのためのやさしい手引き書になるように、ということを意図して私はこの本を書きました。

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