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人事・組織領域を専門とする、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティング担当です。人事・組織・マネジメント関連情報をお伝えします。人事やマネジメントの方々にとって、未来の組織を作り出す一助になれば大変うれしいです。

はじめて若手をマネジメントをする人への実践的アドバイス集

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クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
当社サイトで「はじめてマネジメントをする人への経験論的アドバイス」という、この記事に似たタイトルの記事を先ほど上げたのですが、そこで出てきた5つのアドバイスは以下のようなものでした。

  1. 常にフェアに、ゼロベースで
  2. 指示するだけが仕事ではない
  3. チームメンバーの責任もあなたの責任
  4. あなたはあなた、人は人
  5. 名選手、必ずしも名監督たりえず

そして、一番目の項目で、引用した著者のコメントとして、

マネジメントにルールブックなどない

と書いてしまいました。
が、実際にはマネジメント、結構大変ですし、何か水先案内人的な虎の巻が欲しいところ。

そこで、ちょうど誠 BizIDで『田中淳子の人間関係に効く"サプリ"』を連載されている田中さんの新著が手に入るという話を聞き、急ぎ拝借して、ここに書評を書く次第です。

書評は初めてなので全くもって自信ありませんが、少しでも皆さんの琴線に引っ掛って手に取ってもらえたらな、と思います。




おそらく最も重要なのは相対化する力


若手を育てるための47のテクニックが書かれている本書ですが、もっとも重要なのはp.307の《8-3 先入観を捨てる》だと感じました。

人材開発関係の方でこれを知らないとモグリと言われる(?)東大中原先生の名著『企業内人材育成入門』でも、

教育や学習に関しては、誰もが一家言持っている。それは、各人の経験に基づいた、いわば「私の教育論」である。
しかし、企業全体の教育システムを考えるとき、「私の教育論」はともすれば弊害をもたらしかねない。
私にとってうまくいった方法が、必ずしも他のケースでうまくいくとは限らないからである。

とあるように、子育てや家庭教育同様、企業内教育も自らが受け手になった経験があるが故に、どうしても自身の経験を元に語りがちです。

しかし、鈴木さんも中原先生と同様に、

人の話を聴くときも問題解決するときも常に、これまで蓄積された知識や経験を考えの根底にすえている。それはそれで非常に意味のあることだが、知識や経験が邪魔になる場合もある。狭量になったり、経験の枠組みを超えて物事を見ることができなかったりするデメリットもあるのだ。(p.307)

と述べます。

本書を読んで「そういうことは知っているよ」と思う場面が多かったかもしれない。一方で、「大切であるのはよくわかるけれど、自分を変えるのはなかなか難しい」と感じる人も多いのではないだろうか。
これもまたゼロベースで考えてみてはどうだろう。これまでの部下との接し方、後輩の指導の仕方などさまざまな関わり方をいったん脇に置いてみて、この本に出てくるさまざまなコツやスキルを現場で試してみるのである。(中略)
相手を変えるのは難しい。それと比べれば、自分を変えるほうがまだ簡単だ。意識さえすればよいからである。
「性格」を変えるのではない。あくまでも「行動」を変えてみればよい。そうすれば、今までと異なる結果が待っている (p.310)

テクニック集としてではなく、心構えを学びたい、という方にとっては、この部分が一番重要だと思われます。いったんゼロベースでここに書かれていることを活用してみて、自らのものとしていく、という姿勢で臨むことが、読み始める前の心得として重要でしょう。

また、中原先生の本と同様、裏付けされた理論が部分的ではありますが紹介されているので、理詰めで攻めたいITマネジャーのニーズにも合っていると思われます。


コーチングは万能ではない


コーチングの研修を受けたり、コーチングを実践している方も多いと思います。が、人事系のコンサルティング会社に勤める私の立場から見ると、昨今はコーチング過多になっているように思われます。
私もコーチ養成機関の割と高い研修を自費で受けた者として、その有用性は十分に理解していますが、あまりに部下の自主性を重んじるあまり、組織としての人材マネジメントが不在になるケースも多々見受けられます。

鈴木さんも同じような考えをお持ちなように感じました。Chapter 3は《知らないことはしっかり教える》、Chapter 5は《褒めて叱ってやる気にさせる》と題されているとおり、硬軟おりまぜていくバランス感覚が現在のマネジメントには求められています。

コーチングが流行しているが、若手の知らないことに関しては、上司や先輩がきちんと教えなければならない。そのためにはさまざまな工夫が必要になる。(p.89)

昨今ではメンタルヘルス上の不安やパワーハラスメントになりはしないかという懸念から、厳しくものを言えないという人が増えている。確かに厳しく言ったことで若手がそっぽを向いたり、反論してきたりしたら、上司や先輩は嫌な気持ちを引きずることになる。厳しく言うべきだとは思ってはいるが、何と言えばよいかがわからず、ついオブラートに包んでしまうこともある。(中略)
しかしこうした態度は結局、誰のためにもなっていない。(中略)若手のため、組織のために、必要なことは言わなければならない。(中略)
上司や先輩には、若手の成長を支援する責任がある。伝えるべきことは勇気を持って言葉にしたい。(《5-2 上手な叱り方》pp.199-203)

この節は、特に怒り方・叱り方のわからない人にとっては実践的な福音になると思います。
なんだかんだ、しっかりマネジメントをしなければならない組織が、今の日本の大半です。自由奔放な上司無し組織にあこがれる気持ちはわからなくもないのですが。


目次よりも各節の冒頭をパラパラ見ながら気になったものをチョイス


この本の使い方ですが、最初からじっくり読んでいくと、やらねばならないことに押しつぶされます。まず覚えきれません。
また、目次を眺めても、それが何の意味があるのか、ということがイメージしづらいので、あまりおススメできません。

私にとって最適な方法は、始めのほうからパラパラめくりながら、各節の最初にあるQ(質問)を見ていって、「あぁ、あきらかに自分もこのような課題を抱えてるな」と思ったものを読み進めるやり方でした。
そうして、今の自分に必要と思われる項目を3~5つほど引っ張り出して、1日1つずつ、何週間かにわたってチャレンジしていく、といった使い方が良いように思います。

そして折にふれ、カベにぶち当たった時に、改めて目次を見たり、パラパラQを見ていくことで、今その時に必要な最初のアクションを思い出す、という「常時手元に置いておくべき1冊」として活用いただくのが良いのではないかと思います。

ひとまず私は使いやすいように、販促用のオビは取って、早速自分の机に設置しました。さぁ、しっかりマネジメントしていくぞ!


お読みいただきありがとうございます。
たぶんこの後2~3人がこの本の書評を書かれるかと思います。詳しい本書の内容はそちらにて(勝手)。



当社もほぼ同じタイミングで新著を出しております。是非こちらも御贔屓に!


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