評価と目標設定―2つの真実と2つの悪いアイデア
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クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
本日はTLNTより。思いっきり王道な人事評価ネタですが、引用されている本は、元々マネージャー向けに書かれた本です。まだ出たばかりですが、なかなか評価が高いです。
Performance Management and Goal Setting: 2 Truths -- and 2 Bad Ideas
業績評価と目標設定: 2つの真実―と2つの悪いアイデア
今回の寄稿者はAnn Bares氏、Altura Consulting Groupのマネージングパートナーの方です。20年ほどの人事コンサルティングの経験から、評価について、以下の2つの真実は確かだと言えるそうです。
- Truth #1: Performance management is with us for the long term. And the reason for this is that people need clear information about what is expected from their work and how they are doing at meeting those expectations. They need it regularly, no matter how busy and overwhelmed their bosses may be. Could we improve how we do performance management? No question. And hopefully we will.
真実その1: (なんだかんだ言われつつ)人事評価は長らく実施されてきている。その理由は、人々が彼らの仕事から何を期待されているかや、その期待に応えられているかどうかについてハッキリとした情報が必要だからだ。上司がどれだけ忙しくてバタバタしていようが関係なく定期的に行われなければならない。それでは人事評価はより改善出来るのだろうか? それには疑問の余地はない。そして我々はまさにそれをしようとしているのだ。
- Truth #2: Performance management will never be easy, comfortable or routine. Important things - raising children and governing nations are examples that come to mind - never are. Anyone who says differently has something to sell you'd ultimately be better off without.
真実その2: 人事評価は決して簡単でもなければ居心地の良いものもなく、ルーティンとして済ませることも出来ない。重要なこと―例えば子育てや国家のガバナンスなど―は常に困難を伴う。もし違ったことを言う人がいたら、それは、それが無くても良いものを売りつけようとしていると思ったほうがいい。
このような具合に、人事評価は、(人事ではなく)それを行う上司と部下に多くのものを要求するしんどいプロセスではあるのですが、一方でそのプロセスや形式、時間配分などはたいていの場合彼らがデザインするのではなく、人事が提供することになります。とはいえ、人事はそれをなんとか提供しようと頑張るのですが。
このような人事評価について、Dick Grotte氏の近著How to be Good at Performance Appraisalsは、上司やマネージャーを対象に、すでにある評価制度を活用して人事評価をより効果的に行う方法を伝えることを目指した好著のようです。人事や制度設計者を念頭にかかれてはいないのですが、その実践的な内容と直截的なアドバイスは、人事にとっても有用であり、次のマネージャー研修にとっても有益になるところが多いよう。
その本のある章に、目標設定について書かれた部分があり、人事評価がうまくいかないケースについて述べられているとのこと。その中から、いくつかの例を抜き出します。
- Bad Idea #1 - SMART Goals. the overused and hackneyed SMART test is merely a mechanism for making sure that a goal statement has been phrased correctly. But it is often fed to managers as the be-all and end-all of goal setting advice - in lieu of providing important guidance on the places they should look for goals, how to determine whether they reflect genuinely important accomplishments or how to make sure they are congruous with overall business strategy.
悪いアイデア1―SMARTな目標 多用され使い古されたSMARTによる検証は、目標の文章がきちんと書かれているかどうかを確かめるメカニズムに過ぎない。しかしよく目にするのは、これが目標設定の唯一正しいアドバイスだと伝えられていることが多いという事実だ。実際は目標を定める方向性が正しいかどうかや、ビジネス戦略にきちんと沿った、本質的に重要な達成度が反映されているかといった重要な点こそガイダンスされるべきであるのだが。
SMARTとは、目標設定時によく使われるフレーズで、
- S: Specific (具体的)
- M: Measurable (測定可能)
- A: Attainable (達成可能)
- R: Relevant (有用)
- T: Time-Bound (有期限)
を意味しますが、Bares氏はこれだけでは不十分と話します。
故ケネディ大統領が1961年に、「この10年の間に人類を月に立たせ安全に帰還させる」という有名な演説を行いましたが、これはSMARTに則ってはいるものの多額の費用がかかったプロジェクトであり、このお金があればもっと大学を建てたり、貧困層に対して住居を提供したりできたはずであり、本当に本質的に正しい選択だったのか、と疑問を呈します。
(事業仕分けを思い出しますね。。。)
また、
- Bad Idea #2 - Requiring percentage weights for goals. Letting people know that some goals are more important than others, as Dick notes, is a good idea - but assigning percentage weights to goals tends to be less so, for a number of reasons.
悪いアイデア2―パーセンテージによる重み付け Dick氏が書いているように、どの目標が他の目標より重要かを知ることは良いアイデアだが、パーセンテージによる重み付けは数多くの理由により好ましくない。
5%の幅で相対的に重み付けを行った場合に、その5%の差がどこから来て、まだその動かす分をどの目標から持ってくるのか、といった点は判断が非常に難しいと。
また、目標の達成度を評価する歳は、その所与の環境のダイナミックさや複雑性を大きく考慮する必要があり、数字上の計算だけで判断するのではなく、マネジメント上の決断が求められると説きます。
3月決算の会社では、ちょうど第二四半期に入って今半期の目標の達成度がある程度見えてきた方も多いのではないでしょうか。
一度人事評価の適切なやり方について、頭をめぐらしてみるのもいいかもしれません。もちろん人事の方も評価制度改善のために、この夏の読書として挑戦してみるのもいいのではないでしょうか。
ご一読ありがとうございました!
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