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AIファクトリーの拡張を牽引する光インターコネクトの構造変化と市場予測

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調査会社のTrendForceは2026年6月15日、シリコンフォトニクス(SiPh)技術および光インターコネクト市場に関する分析結果を公表しました。

Optical Interconnects Become Critical to AI Factory Expansion; CPO/NPO Market Expected to Exceed US$39 Billion by 2030, Says TrendForce

AIの学習および推論処理の爆発的な増加に伴い、データセンターにおける消費電力の抑制とラック密度の向上、システムの巨大化が世界的な課題となっています。高速なデータ伝送そのものが膨大なエネルギーを消費する要因となる中、クラウド・サービス・プロバイダー(CSP)は、通信技術を計算処理ハードウェアと同等に重要な戦略要素として位置づけ始めています。インターコネクトの設計思想は、AIファクトリーの拡張性やエネルギー効率、ひいてはサプライチェーンの安定性を左右する要素として議論されています。トレンドフォースの予測によると、共同パッケージ光技術(CPO:Co-Packaged Optics)および近接パッケージ光技術(NPO:Near-Packaged Optics)の市場規模は、2025年の約1億ドルから、2030年には390億ドルを超える水準へと急拡大する見通しです。

今回は、伝送速度の高速化に伴う技術的制約、主要企業によるエコシステム形成の動向やサプライチェーンにおける資源確保の動き、および、今後の展望について取り上げたいと思います。

ChatGPT Image 2026年6月15日 18_56_13.jpg

高速伝送の物理的限界と「銅から光へ」の不可欠な転換

AIクラスターの規模拡大に伴い、システム内部でのデータ伝送速度は、1レーンあたり100Gbpsから200Gbps、さらには400Gbpsへと高速化が進んでいます。この技術的進化の裏側で、従来の銅線を用いたインターコネクトは物理的な限界に直面している状況です。信号の伝送損失が顕著になり、それを補償するためのコストやシステム全体の消費電力が増大することが、インフラ拡張の障壁となっています。

次世代のAIデータセンター設計において、光学的な接続機能をASIC(特定用途向け集積回路)などのスイッチ基板の近くに配置し、電気信号が走る経路を短縮することは、電力効率向上のための重要なアプローチとなっています。このような背景から、リニアプラグイン光技術(LPO)、NPO、CPOという3つの主要な技術経路が、産業界で高い関心を集めるようになりました。

理想的な設計とされるCPOは、電気配線を極限まで短縮できるものの、製造工程における歩留まりの改善や、熱管理、故障時の保守性において課題を残しています。一方、従来の着脱可能なトランシーバーの利便性を維持しつつ損失を抑えるLPOや、中間の移行期を支えるNPOなど、技術的な成熟度と運用の柔軟性のバランスを巡り、現場での試行錯誤が続いています。

技術の実装を急ぐ市場では、最高効率を求める理想論と、運用の継続性を担保する現実論との間にズレが生じています。この物理的な制約をクリアする通信アーキテクチャの選択が、今後のデータセンターの競争力を決定づける要因として議論されており、各社のインフラ投資方針に直接的な影響を及ぼしています。

オープンエコシステムを志向する主要CSPのNPO戦略

市場を牽引する大手のクラウド・サービス・プロバイダー(CSP)の多くは、短中期的な現実解としてNPOの導入とエコシステムの構築を急いでいます。NPOは、電気伝送距離を短縮して消費電力を低減しつつ、モジュール性や保守性、複数ベンダーからの部品調達の柔軟性を維持できる点が評価されています。

中国の主要IT企業であるアリババやテンセントは、NPOを中期的な中核戦略として位置づけ、オープンデータセンター委員会(ODCC)を通じて関連するオープン標準の策定を推進しています。米国市場でも、メタやマイクロソフトが「Open Compute Interconnect Multi-Source Agreement(OCI-MSA)」を活用し、特定のベンダーに依存しないオープンな光インターコネクトのエコシステム形成を優先する方針を示しています。

これに対してアマゾンは、複数ベンダーから調達を行うマルチベンダー戦略を維持しながら、STマイクロエレクトロニクスと共同でNPO関連の取り組みを進めるなど、独自のアプローチを展開しています。これらの動きは、インフラのブラックボックス化を避け、調達コストの最適化とサプライチェーンのコントロール権を確保したいという共通の意図に基づいています。

しかし、オープンな標準化プロセスは、各社の利害調整や技術仕様の策定に時間を要するため、急速に進化するAIハードウェアの更新サイクルとの間に時間的な乖離が生じるリスクもあります。ベンダー囲い込みを嫌うCSPの戦略と、独自の垂直統合モデルで先行したい半導体企業の思惑が交錯する中、市場の標準化を巡る主導権争いが活発化しています。

垂直統合モデルがもたらすCPOの実装と製造面の障壁

NVIDIAを中心とする独自の垂直統合型エコシステムにおいては、中堅・中小規模のCSPを中心に、同社が提供する完全に統合されたCPOベースのAIシステムを採用する傾向が見られます。システムの統合度、導入の迅速さ、そしてプラットフォーム全体の一貫性を重視する顧客にとって、構築済みのパッケージは魅力的な選択肢となっているためです。

CPOは、高い電力密度と強固な集積化が求められる長期的なアプリケーションにおいて、優れたシステムパフォーマンスを発揮すると考えられます。光学エンジンをスイッチASICと同一の基板上に密に配置することで、伝送効率を極限まで高めることが可能となりますが、この高度な集積化が製造現場における新たな摩擦を生む要因にもなっています。

大規模な商用化に向けては、複数の技術的課題をクリアする必要です。多数の光学エンジンを単一のシステムに統合するCPOスイッチは、コンポーネントが一つでも欠陥を持てばシステム全体の不具合につながるため、製造歩留まりに対して非常に強いプレッシャーがかかります。また、故障時の交換が容易ではない着脱不可能な構造は、データセンターの稼働率を維持したい運用保守の現場において敬遠される要因となっています。

こうした課題を解決するため、コーニングの「GlassBridge」やテラマウント、センコ同盟、インテルの光学計算インターコネクト(OCI)など、着脱可能な光接続方式の技術開発が並行して進められています。技術仕様が乱立する現在の状況は、どの方式が最終的な業界標準となるかを見極めることを難しくしており、企業の投資判断において慎重な見極めが求められる背景となっています。

演算器から光インフラへシフトする資源確保の競争

CPOの本格的な普及には技術的な複雑さから一定の時間を要するという見方が一般的であるものの、光通信インフラの確保そのものは、すでにAIインフラ開発における主要な主導権争いの舞台となっています。ユーザー企業は、将来的なAIファクトリーの拡張能力を担保するため、主要なコンポーネントであるレーザー光源、光検出器、インジウムリン(InP)基板、光ファイバーなどの確保に動き出しています。

特に2024年以降、光通信デバイスの基盤となるインジウムリン(InP)基板の需給は逼迫した状態が続いており、レーザーや光検出器は業界全体で激しい獲得競争が展開される戦略的部品となっています。例えばAMDは、外部レーザーソリューションの調達プロセスを加速させており、高出力の連続波(CW)レーザーチップの大型購入契約に向けた交渉を進めているとされています。

AMDのこうした動きの背景には、将来の生産能力を確実に確保すると同時に、NVIDIAのエコシステムや他の先行するCSPに依存しない、独自のサプライチェーンを確立したいという意図が想定されます。特定の半導体大手に先端部品を抑えられることによる、開発および製造の遅延を回避するための防衛策としての側面も持っています。

データセンター内部だけでなく、それらを結ぶ光ファイバーの領域でも囲い込みは始まっています。光ファイバー最大手のコーニングは、メタ、NVIDIA、アマゾンなどの主要テック企業から、資本投資や生産能力拡張のための支援、そして長期的な調達コミットメントを受けている状況です。これは、主要企業が光ファイバーを単なる汎用品ではなく、AIインフラの競争力を左右する戦略的資産として捉えていることを示しています。

2030年に向けた市場規模の予測と複数アーキテクチャの共存

トレンドフォースの予測によると、CPOおよびNPOの市場規模は、AIインフラのスケールアップ構造に光インターコネクト技術が本格的に組み込まれ始める2028年から2029年にかけて、成長が急加速する見通しです。そして2030年には、市場規模が390億ドルを突破すると予想されています。

その一方で、従来型の着脱可能(プラガブル)な光トランシーバーの市場も急速に縮小するわけではなく、2030年時点でも260億ドル近い市場価値を維持すると考えられます。このデータは、将来の光インターコネクトの市場が、単一の革新的な技術によって完全に塗り替えられるわけではないことを示唆しています。

今後は、データセンター内の接続距離や、求められる電力効率、コスト対効果、技術の成熟度、さらには各企業のサプライチェーンに対する統制力に応じて、複数のアーキテクチャが適材適所で共存する時代が続くと想定されます。短距離の高密度接続にはCPO、柔軟性が求められる中距離にはNPOやLPO、既存インフラとの互換性を重視する領域には従来のプラガブルモジュールといった棲み分けが進むでしょう。

この共存構造は、投資側にとっては選択肢の多様化を意味する一方、技術標準の標準化プロセスが長期化し、最適解の選択が複雑化するリスクも内包しています。どの技術にどのタイミングで経営資源を投入するべきかというロードマップの策定が、今後の事業戦略において重要となります。

今後の展望

光インターコネクト市場の進展は、単なる通信部品の置き換えにとどまらず、AIデータセンターの構造、そして半導体産業のサプライチェーン全体の再編を促す契機となると考えられます。

今後は、シリコンフォトニクス技術の進歩に伴い、光学素子と電子回路の統合がさらに進むことで、半導体パッケージングの概念そのものが進化していくでしょう。国際競争の観点からは、インジウムリンなどの化合物半導体材料や、高出力レーザーなどの重要コンポーネントの製造拠点が地理的に偏在していることから、経済安全保障上のリスクマネジメントがより必要となるでしょう。

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