スタートアップ企業の成長性はモビリティやFinTech分野で期待高い。一方で倒産件数も増加
スタートアップ企業への注目度が高まっています。
帝国データバンクは2023年11月7日、自社の信用調査報告書(CCR)をベースに、スタートアップ企業における今後の成長性を分析。
その結果、分析が可能な約24万社と比較して、スタートアップ企業では高い成長性が数値として現れる結果となっています。
特に、成長性のレベルを10段階に分けたなかで最も成長発生率の高い指標である「レベル10」では、約24万社全体が6.87%であるのに対して、スタートアップ企業は62.35%と高水準になり、大きな差が表れる結果となっています。
調査結果のポイントは以下のとおりです。
1 「モビリティ」分野で高い成長性、次いで「FinTech」「HR」「AI」などテック系も高水準
2 資金調達の「実績あり」企業、「実績なし」と比較してレベル10の割合は高い
3 東京23区内で最もレベル10企業があるのは「文京区」 「渋谷区」や「港区」も僅差で高水準
出典:帝国データバンク 2023.11.7
「モビリティ」分野で高い成長性、次いで「FinTech」「HR」「AI」などテック系も高水準
スタートアップ企業を事業分野で分類したカテゴリー別でみると、「モビリティ」では75.9%が最も成長性が高いレベル10に該当する結果となっています。
空飛ぶクルマやEV、自動運転など新技術が期待されているなかで、突出した成長性の高さが表れています。
その他、送金/決済サービスや資産運用などの分野が代表的な「FinTech」分野でも72.3%と高水準。また、労務管理など人材に関する「HR」では71.1%、人工知能を指す「AI」は71.0%、入居時の契約やDXツールを用いた業務効率化が多数みられる「不動産」は70.5%、データ活用/管理サービスを提供する「プラットフォーム」は70.2%と、6分野で7割を上回っています。
出典:帝国データバンク 2023.11.7
資金調達の「実績あり」企業、「実績なし」と比較してレベル10の割合は高い
スタートアップが成長していくなかで欠かせない資金調達の実績別に見ると、調達ラウンドを問わず「実績あり」企業のレベル10割合は68.9%で、「実績なし」企業と比較して、10ポイント近くの差が開く結果となっています。
調達レンジ別でみると、業種にもよるが成熟する手前に当たるミドル期が主に該当する「30億円以上40億円未満」(76.7%)や「40億円以上50億円未満」(75.0%)で高く、次いで、創業から間もなくアーリーラウンドからプレシリーズAに多く見られる「1億円以上3億円未満」が73.2%で続いています。
出典:帝国データバンク 2023.11.7
まとめ:スタートアップ企業の多くが高い成長性予測 一方で倒産は増加傾向に
企業の成長性予測モデル「SP」を用いて分析した結果、分析対象企業の全体と比較してスタートアップ企業には成長が期待できる企業が多く存在していることがわかっています。
特に「レベル10」は全体で6.87%にとどまる一方、スタートアップ企業では62.35%と高水準だ。なかでもモビリティなど注目の業種では高くなっています。さらなるスタートアップの創出に向けて、今後は国を挙げて支援策を加速させていくとみられています。
その一方で、サービスが軌道に乗る前に人件費や開発費などのコストが資金繰りを圧迫し、法的整理による倒産に追い込まれた事例も少なくなく、実際に、2023年1-9月期のスタートアップ企業倒産は前年から倍増近い32件となり増加傾向にあるとしています。
過去にベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けた企業も含まれており、成長を期待されたものの事業が急に傾いたケースも見られています。 また、スタートアップ企業は倒産ではなく休廃業を選択するケースが多いとの声も聞かれ、実際に事業停止となった件数はさらに多い可能性があるとしています。
加えて、事業を継続しながらも大規模なサービス転換を行う「ピボット」は、設立から間もないシード期を中心に頻繁に見られ、これまでにない革新的なビジネスモデルが最大の武器であるスタートアップ企業にとってはプロダクトマーケットフィット(PMF)の検証が常に必要となるため、大規模な方針の転換には注視が必要であるとしています。
スタートアップ企業に携わる取引先などにとっては、高い成長性に期待しつつも、動向を細かくウォッチする体制が求められています。
出典:帝国データバンク 2023.11.7