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産業用メタバース/デジタルツイン市場の発展のステップ

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IDC Japanは2023年2月6日、「国内デジタルツインと産業用メタバース市場の調査結果」を発表しました。

メタバース(コンピュータやインターネット上で提供される仮想世界)が大きな注目を集めており、メタバースブームに乗ってデジタルツインを「産業用メタバース(Industrial Metaverse)」と言い換えるようになっているとしています。

IDCの調査では、国内の産業用メタバース/デジタルツイン市場は図のようなステップで発展し、これによってより良い働き方、より高い生産性、CO2排出量の削減、安全安心な社会などを実現するということが明らかになったとしています。

同市場の発展の重要な鍵となるのが、3D CAD、IoT、XR)を含む現実世界と仮想世界をデータでつなぐ技術と、仮想世界でこれらをモデル化するためのデジタルツイン基盤技術としています。

近年特に重要性を増しているのが、XRによって「人」を産業用メタバース/デジタルツインに取り込むことをあげています。

その理由として主に以下の3つがあげています。

①人とロボットの協働の促進
多くの産業現場では、いまだ、主な働き手は人であり、少なくとも2020年代中に目指すべき姿は、完全無人化よりも人とロボットの協働です。人を仮想世界に取り込むことで、両者の協働の促進が可能になります。

②人同士のコラボレーションと働き方の改革
人は、仮想空間に参加することで、対象物に関する直感的な評価や判断が可能になります。まだ実際のモノがない段階で異なる工程の担当者が仮想空間でコラボレーションすることによって、品質向上や手戻りの削減による生産性向上が期待できます。また、離れた場所にいる人同士が同じ場所にいる感覚で協働することも可能になります。

③人の安全性や快適性の向上
危険が多く快適でない職場には労働者は集まりません。産業用メタバース/デジタルツインを使って、危険を回避し人が快適に働けるようにすることは、人手不足解消の重要な施策になると考えられます。産業用メタバース/デジタルツインを事故防止のトレーニングに活用する動きも増加しています。

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産業用メタバース/デジタルツイン市場の発展のステップ
出典: IDC Japan 国内デジタルツインと産業用メタバース市場の調査結果 2023.2

産業用メタバース/デジタルツイン技術の普及シナリオとしては、図のような市場の広がりが考えられるとしています。

初期の主要顧客は、社内に設計と生産の両部門を有する大手製造業や大手建設業者(ゼネコン)で、この時点では市場の広がりはまだ限定的となっています。

その後、これら初期の顧客が、産業用メタバース/デジタルツインの構築に必要なデータを、彼ら自身の顧客へと引き継ぎ、引き継いだ顧客が、自社が保有する建物やそこで使用される装置などの運用に産業用メタバース/デジタルツインを活用するようになると市場は急速に拡大していくとしています。

さらに、これらを人流、交通流、物流、サプライチェーンなど広域のデジタルツインなどと組み合わせることによって、社会全体のデジタルツイン化が可能になります。

IDCではこのようなデジタルツイン上で高度なAIやシミュレーション機能の活用によるロボットや設備の自律的な運用を実現することで、冒頭に述べたより良い働き方、より高い生産性、CO2排出量の削減、安全安心な社会が実現すると考えます。

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出典: IDC Japan 国内デジタルツインと産業用メタバース市場の調査結果 2023.2

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