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「アマゾンは弱肉強食のジャングル」にはそうだろうなぁと思うだけ

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New York Timesの日曜版には毎週、読み物的な、ながーいながーい記事が載ります(紙版をうっかりニューススタンドで買うと重くて大変です)。

昨日(8月16日)の長い読み物は、「Inside Amazon: Wrestling Big Ideas in a Bruising Workplace」というタイトルで、Amazonの従業員および元従業員にいっぱい取材した、主に職場環境に関する内幕ものでした。オンラインで読めますnyt.jpg

タイトルの下には「Amazonは果てなき野望達成のためにホワイトカラーの社員をどこまで追い込めるかという実験を行っている」(意訳)という物騒な要約があって、まあ、このながーい記事を読むとずらずらとその実験の内容が書かれているわけです。

一応最後まで読みましたが、読むだけで疲れました。ある元従業員は、同僚は全員、自分のデスクで泣いていたと語り、「ワークライフバランスというのはワーク第一、ライフは二の次でバランスについて考えるのなんかその後だ、というジョークがある」と自嘲気味に言う人も。

でも、なんだかなつかしい気がしました。そうだ、高度成長期の日本の商社ってこんな感じだったんじゃ?

世の中がどんなに変わっても、一定量の競争の大好きな人種というのはいるものだと思います。そういう人たちにとっては、Amazonは天国じゃないかと思います。あのころの自分の手柄をいまだに自慢する元商社のおじいさんがいるように(いるんですよ、実際に)。

とにかく数字第一で、同僚はみな競争相手。協力などせず、すきあらば蹴落とす。実力があって、努力することを厭わなければ、それに見合うだけのポジションに登っていける。競争心の強い人にとっては毎日がわくわくなゲームです。

ただし、少しでも努力しなかったり、努力できなかったりすれば、それでもう最後。

過去にどんな実績を上げていようが、妊娠したり親の介護があったり自分が病気になったりしたら、それは負けのサイン。

いまどきの会社だったらひどーい、ということになりますが、それってモーレツ商社や、それよりジャングルでは当然のルールです。ジャングルではいつまでも自分でエサをとれない子ワニは餓死するし、のろまなカピバラはワニに食べられちゃう。

どんなに強い個体でもそう長くは活躍できないわけですが、いくらでも代わりは登場するので、群れの長(おさ)が死んでも、ジャングル全体は支障なく営みが続くんでしょう。

興味深いのは、この方法でどこまでいけるのかなということで。

こんなことが許されるのはやはり、ジェフ・ベゾスあればこそ、だと思うし。ベゾスがいなくなったら1時間以内に商品を届けるとか、過剰なサービスの発想も衰退していき、働きやすいけどエッジのない会社になるような気がする。

[追記]さっそく愛社精神のある現役Amazonianから自主的な反論が。そして、なんと意外なことに、普段はマスコミなんぞスルーするベゾス御大が社員にむけてメッセージを。「ここに書いてあることが本当だったら、私はこんな会社にはいたくない。もし、少しでも本当だったら、遠慮なく人事課あるいは私宛に直接、メールで教えてほしい」とたぶん本気で言ってます。いやぁでも、会社にいたかったら誰も本音は言わないと思うな。
NYTに書かれていることはたぶん、嘘ではないと思うんです。ベゾスの要求に普通の人が応えようとしているうちに、ああいうことになったんだと思います。

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