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記者としての取材や編集者としての仕事の中から浮かんだふとした疑問やトピックをご紹介。裁判や企業法務、雑誌・書籍を中心としたこれからのメディアを主なテーマに、一歩引いた視点から考えてみたいのですが、まあ、精密でない頭の中をそのままお見せします。

「生き残るための」文章の書き方 ②「うまく書く」よりも「何が求められているか」を考える

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まず、「うまく書かなければならない」という思い込みから自由になろう。
文章のプロでなければ、それで7割は完成したも同じだ。

■昇進試験のふたつの問題
インテリアメーカーの営業職である男性から、相談を受けたことがある。
会社の係長昇進試験に作文がある。テーマはふたつあり、どちらかを選べというもの。ひとつは「部下のマネジメントをどうすべきか、経営上の問題をふまえて書け」というもので、もうひとつは「当社で働くにあたっての心構え」だった。

相談者は、文章への苦手意識が強く、前者については「思いつかない」という。だから、後者で書こうとしていた。
そこで、その昇進試験と相談者との関わりを聞いてみた。すると、彼の社内で置かれた状況が浮かび上がってくる。

・彼は平社員だが、ある県の営業所を任されている。
・しかし、営業所長になる資格は係長以上と決められている。
・部下がひとりいる。

会社は彼を係長に昇進させ、営業所長に任命しようという考え方であることが推測できた。

「作文コンクールじゃないんだから、文章はうまくなくていい。2番目の問題は救済問題にすぎない。会社はあくまでも前の問題について書いてもらいたいと思っている」


昇進試験にあたっての「彼の作文」は、そのための試金石と会社が考えていることがわかる。
会社が彼に必要としているのは、「マネジメントに関する考え方」であり、文章力ではない。
絶対に1問目に答えるべきである。

では、本当に彼は「書くことがない」のか。そこで、質問してみることにした。

■「その文章に何が求められているか」の問いを
「部下について、悩んでいることはないか? その悩みを解決するためにどんなことをしているか?」
「数字はどうなのか。自分にとって満足いくものか。会社にとって満足いくものか。どうすべきだと考えているか?」
「部下の働かせ方とあなたの働き方を数字に結びつけると、何が解決しなければならないテーマになるか?」

この3つの質問に、その男性はすらすらと答えた。「思いつかない」というのは「文章をうまく書かなければならない」という、間違った思い込みからの苦手意識だった。

彼はすぐ係長に昇進し、営業所長に就任した。

文章を読む相手が、何を求めているのか。それを読み取ることが必要だ。
最初に書いたように、文章を職業とするのでなければ、「うまく書く」必要はない。しかし、「相手の必要としていることを読み取り、それにきちんと答える文章を書く」ことが大切だ。
文章にせよプレゼンにせよ、社内コミュニケーションにせよ、言語コミュニケーションで成功する鍵がここにある。

絶えず自問自答すること。
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