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記者としての取材や編集者としての仕事の中から浮かんだふとした疑問やトピックをご紹介。裁判や企業法務、雑誌・書籍を中心としたこれからのメディアを主なテーマに、一歩引いた視点から考えてみたいのですが、まあ、精密でない頭の中をそのままお見せします。

トヨタが直面する「フラウド」の烙印(らくいん)

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ご縁がありまして、ここでブログを書くことになりました。
よろしくお願いいたします。


1回目は、「トヨタ問題」を取り上げてみようと思います。


1000万台に迫ろうかという、膨大なリコールに発展したトヨタ問題。日本国内では一段落したかのような雰囲気が漂っているが、震源地アメリカでは全く収束の気配はない。
そして、そのステージは司法の場に移りつつある。

アメリカの裁判制度は日本のそれとかなり異なるため、日本人にはなかなかピンと来ない。それは企業でも同じ。対応を誤った日本企業が敗訴し、多額の損害賠償を支払う羽目になる例は多い。

■フラウド(fraud)、今のアメリカ社会を映すキーワード
最近のアメリカ社会や裁判の動きから浮かび上がってくる言葉がある。

それが、「フラウド」(fraud)。「詐欺」という意味だ。

fraudの発音は「フロード」に近いが、日本では「クラウド(cloud)」に引っかけて、なりすましのセキュリティ破りを「フラウド・コンピューティング」と冗談交じりに呼ぶ人もいるからか、「フラウド」という読み方が定着しそうな感じであるので、とりあえずはこれに準ずることにする。

4月16日、アメリカ証券取引委員会(SEC)は、投資銀行のゴールドマン・サックスを、サブプライムローンの証券化商品のひとつであるCDSを組成(商品として作り出す)・販売したとして「証券詐欺罪」で訴追した。文字通り「フラウド」である。突然のニュースに、ニューヨーク株式市場は大幅に値を下げ、世界の株式市場が金融引き締め策を警戒して連鎖して下げる「ゴールドマン・ショック」となった。

本来ならば仕組みと格付けというシステムによってリスクの分散が図られ、安全であったはずの証券化商品の中には、実は設計されたようにリスクの吸収ができない劣化した資産も入っていた。それがもたなくなったとき、市場が大混乱になる恐れがある、という話は、実は金融危機の1年前ぐらいから日本の証券化関係者の間でも囁かれてきた。

しかし、今回の訴追の対象になったCDSが、金融危機の原因になったのか、といえば、それを証明するのは難しいだろう。そもそも証券化というもの自体がリスクを分散する仕組みなので、「犯人」の特定はほぼ不可能だ。仮に特定できたとしてもそれはトリガーにしか過ぎない。

しかしSECは、誰もが驚くような、積極的な訴追に踏み切った。
もともと「フェア」であることを重んじるアメリカ人は、フェアでない、あるいはルールに反すると思われる行為に対しては厳しい。それが金融危機でさらに世論の厳しさになって表れ、その支持をバックボーンに捜査機関が積極的に動いたと見られる。

日本でも資本市場主義、新自由主義への反省一色とも言えるが、アメリカでそれに当たるのが、「フラウド」を叫ぶメンタリティのようだ。「フェアでない」を振りかざし、犯人捜しをしてやり玉に挙げなければ収まらないかのようだ。

「フラウド」は、いまのアメリカの空気である、といえよう。

その観点からトヨタ問題を見ると、構造が似ているようなのだ。

■トヨタは「フラウド」であるという非難
この原稿を書いている4月19日夕方、大きく扱われているニュースだ。

アメリカ運輸省高速道路交通安全局が、トヨタが欠陥を把握しながら報告を怠ったと1637万5000ドル(約15億4000万円)の制裁金を課す方針を打ち出し、2週間以内の返答を求めていた問題で、19日、トヨタは「情報隠し」を否定しながら制裁金の支払いを受け入れると発表した。

とがめられているのは、トヨタが「欠陥を把握しながら報告を怠った」という「フラウド」である。
そこでは、本来の「ことの本質」であるはずの「本当にトヨタの電子制御システムの不具合で急加速が起こるのか」という議論は吹き飛ばされており、「だました......フラウドだ」ということのみが問われている。

トヨタの初期対応は、ここを読み違えたように思える。2月2日、トヨタが最初に名古屋で行った品質問題担当副社長による記者会見では、自社の見方を主張するにとどまり、「どう見られているか」という観点がなかった。
後にさんざん批判されることになる「フィーリングの問題」という言葉が、そのことを象徴しているのだ。

フラウドの「火」は炎上することになった。

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