Googleも注目するブラジルのスタートアップは何がスゴいのか?地図から探せる不動産サイト
「Google Maps APIを使ってどんな事が出来るのか?」などを学べるGoogleの特設サイト「More Than A Map」をご存知でしょうか?
この特設サイト内の「DEVELOPER STORIES」と題されたコーナーで、Googleが注目する世界の開発者が6組紹介されており、その1組はブラジルのスタートアップ「epungo(エプンゴ)」です。
なぜ"世界のGoogle"がブラジルのスタートアップ「エプンゴ」に注目したのか?一体何がスゴいのか?
実は、このエプンゴの創業者であるアンドレとロドリゴの2人とは、今年の5月にサンパウロのとあるスタートアップ系イベントで出会って以来、個人的に付き合いもあるもので、この機会に改めて日本の皆様にも紹介させて頂けたらと思います。
■「epungo(エプンゴ)」ってどんなサイト?
まずは、こちらの動画を見て頂ければ、どんな企業か?どんなサイトか?の概要は分かるかと思います。(Googleが作成した動画です)
もう少し機能を詳しく知るには、こちらの動画が良いのですが...ポルトガル語です。でも言葉は分からなくてもおおよそ理解出来るかと。(彼ら自身が作成した動画です)
エプンゴを一言で言うならば「地図から探せる不動産サイト」で、その「地図から探す」技術をGoogleも評価しているようです。
ちなみに創業者はアンドレ(32歳)と日系ブラジル人4世のロドリゴ(29歳)の2人で、会社設立は昨年2011年3月です。「Global Headquarters」と本人たちは冗談半分に呼んでいましたが、動画の中にも出てくるアンドレの自宅マンションをオフィス代わりに使って、今も2人で運営しています。
■「地図から探す」ってどういうこと?
具体的シーンをイメージして頂くのが早いと思います。
例えば、僕は学生時代に、こんな希望を持って不動産屋巡りをしたことがあります。(早稲田の学生には多い希望条件ではないでしょうかね?)
・中央線と西武新宿線の間(どちらにも出られるように)
・山手線から環八まで
・家賃XXXXX円以内
・コンビニが近くにあると嬉しい
▼事例:早稲田の学生の希望エリア
しかし、この条件で不動産屋を訪問しても「最寄り駅」を聞かれ、「高円寺から徒歩35分」と書かれた「いやいや、それ、最寄りは高円寺じゃなく野方でしょ?しかも野方より北だから、中央線と西武新宿線の間じゃないし...」というような物件ばかりを紹介されたり...
かといって、不動産サイトでで検索しても、同様に「最寄り駅」から絞り込むか、もしくは更に厄介なことに「市区群」から検索させられた際には、中野区・杉並区・新宿区のどれも中途半端に満たしているので、3区分の全物件を見ないといけなかったり...
そんなこんなで当時の僕は、この部屋探しの手間に耐えきれず、諦めて6年間の学生生活を自宅から通学しました。
これはあくまで僕の学生時代の一例ですが、みなさんも、「地図上の"ココ"のエリアの物件だけ見れればいいんだけど...」そんな不満を持たれた経験ありませんか?
そんな不満を解決すべく「地図から探す」をコンセプトに開発されたのが、このエプンゴです。
※あくまでもブラジルのサイトなので日本の不動産物件は現時点では表示されませんよ、念のため...
▼エプンゴ(http://www.epungo.com.br/)
サイトのトップには「最寄り駅」も「市区群」も入力する欄はありません。画面の大半を地図が占め、思いの形にエリアを指定するだけです。特定の1点(例えば大学や職場)を指定して、そこから半径何kmというサークル状の指定も出来ますし、複数点を選択して入り組んだ形の複数点指定も可能です(上手は四角形ですが、五角形も六角形も七角形も八角形も...)
また、地図の左脇には絞り込み用の「賃貸/売買」・「家賃」・「部屋数」などのいくつかの軸と、「スーパー」・「薬局」・「銀行」などの生活スポットを表示するチェックボックスがあり、選択するとリアルタイムに地図上の物件を示すアイコンが表出します。
いずれも、都度「検索ボタン」を押すわけでもなく、リアルタイムに表出することもあり、直感的で分かりやすいものになっています。
例えば、僕がブラジルに来る前に日本で住んでいた部屋は、
・多摩川沿い
・ベランダが南向きで川が見える
・小田急から東横までの間
という条件で部屋を探して見つけた部屋でした。
その部屋探しはとても苦労したのですが、もしその時にエプンゴがあったらきっと、こんな感じでエリア指定していたんだと思います。
▼事例:ニッチなニーズにも対応(多摩川沿いの東京側)
■Googleは何を評価しているのか?
ありそうでなかったこの検索手法。日本でもあまり見かけないかと思いますが、世界的に見ても今までなかったようです。(その後、中国などでもエプンゴのコピーサイトが早速いくつか登場しているようですが...)
そしてシンプルなデザインと操作性。エリア指定から物件表示までの反応速度なども早く、複雑な指定をしてもサクサク表示されるのも、高い技術力の現れのようですね。(細かい技術的な観点は、素人の僕には分からないのですが...)
Googleもこの「地図から探す」という切り口を非常に高く評価しているとのことです。
なお、冒頭で紹介したMore Than A Mapに続いて、先週公式blogでも取り上げられていますので併せてご紹介しておきますね。
Map of the Week: Epungo(Google Geo Developers Blog)
▼事例:こんな指定もラクラク出来ます(山手線と環七の間)
■今後どこに向かうのか?
こうしてGoogleに取り上げられたことで、ブラジル国外からも注目を受け始めたエプンゴの、気になる今後の戦略は、「地図から探すサイト」として、大きく3つあるようです。
①不動産領域の深堀り
②他領域への拡大
③世界展開
①の不動産領域については2つの方向性があり、「不動産ポータル」として掲載物件数の拡大&ユーザー数の拡大。もう一方は、各不動産会社の「自社サイト」および「店頭での接客システム」に対してCRMツールとしてのシステム提供。この2つの方向性で現在は営業を強化中で、当面のマネタイズはここで行っていくようです。
個人的には、これらを通じて、ブラジルには未だに存在していない「不動産会社を横断する良質な物件データーベース」が出来たら、かなり面白い事になるんじゃないかと思っています。
②の領域拡大は、「地図から探す」のは何も不動産に限った話ではないので、例えば「レストラン」などの他領域への展開も検討中とのこと。例えば、車移動している人に通り道周辺のレストランを検索しやすくする、などは可能でしょうね。
実際にいくつか適用事例も生まれており、例えばサンパウロでは、市内のあちこちに仮設ステージが設けられ夜通しライブが繰り広げられる「Virada Cultural」というイベントがあるのですが、このイベントで「どこのステージで、いつ、誰がライブをしているか」が分かるサイトとして、この仕組みを活用したところ、多くのサンパウロ市民が利用したとのことです。
参考:Virada Culturalのサイト
③の世界展開は、今のご時世ではスタートアップにとって必須の観点でしょうか。エプンゴでは言語依存度を最大限に引き下げ、かつ初期から英語版も搭載して展開しています。
なお、創業者の1人ロドリゴは日系4世の日系ブラジル人でもあり、世界展開の1つに当然「日本」も視野に入っているそうですよ。
※もし日本で「この技術をうちにも取り入れたい!」という方がいらっしゃれば、砂塚宛にご連絡頂ければ接続させて頂きます。
■個人的に何がスゴいと感じているか?
最後に僕の個人的な意見ですが、僕が初めて彼らと出会った時に「いいね!」と思ったのは、「生活者のニーズをとらえている着眼点」や「サイトの技術」や「ユーザビリティ」もさることながら、
①ブラジル発の「独自サービス」であること(新興国に多いタイムマシン的な「モノマネスタートアップ」ではなく)
②最初から「世界展開」が視野にあること(言語依存度を下げ、かつ初期から英語版も搭載)
③地に足をつけ着実に事業拡大を行っている(ブラジルのイメージに多い「ラテンのノリ」というより冷静着実)
という3点です。
人によっては「そんなの当たり前じゃない?」とおっしゃる方もいるかもしれませんが、その「当たり前なことが当たり前に」ブラジルでも行われているという点は、ぜひ日本のみなさまにもお伝えしたいところです。
つい、ネット後進国と思われてしまいそうなブラジルですが、こういった「ブラジル発」で世界に戦いを挑むスタートアップも多々出てきています。
なおこのエプンゴ、上述の戦略をスピード感もって進めるために、現在ファイナンスも視野にあるようですので、もしご興味ある方がいらっしゃれば、こちらも砂塚までご連絡頂ければ接続させて頂きます。
では。
Até mais!
砂塚裕之
▼エプンゴの2人と"Global Headquarters"にて
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▼砂塚裕之