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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

アスマート革命とアップ経済、HTML5の幻想が吹き飛びアプリ優位の時代が来た!!(米国フラリー調査)

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<序文>

 米国の調査会社フラリーが衝撃的なレポートを出しています。

それによればスマートデバイス上で米国生活者は時間の80%をアプリに費やし、20%がブラウザー上で費やしていると言う調査結果です。

 

米国の生活者は毎日、平均158分をスマートフォンとタブレット上で費やします。そして2時間と7分をアプリで費やし、わずか31分をWeb(browser, surfing the old-school web)上で費やしていると言う結果です。

 

これを受けてベンチャービートなど一部のテックブログは「モバイル戦争はアプリの勝利で終焉した」と述べています。一方フラリーはmobile first and web secondの時代が来たと述べています。流石にワイアード誌のように「Webは死んだ!!」とまでは言っていませんが。

 

一時米国ではHTML5がネイティブアプリを凌駕し、滅ぼすと言う見方が支配的でしたが、この勢いは既に去っています。

 

いよいよアップ経済の時代が本格的に到来したようです。

 

★★The mobile war is over and the app has won: 80% of mobile time spent in apps

 

★★ Flurry Five-Year Report: It’s an App World. The Web Just Lives in It

 

★★How HTML5 will kill the native app

  アプリ時間が8割、ブラウザー時間が2割

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 アプリの活用本数が年ごとに増加!!

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 どんどん新しいアプリが活用されている!!

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  <出所:フラリー>

<生活者が活用するアプリの数が伸びる>

 フラリーの調査では、一人あたりの生活者が活用するアプリの数が年々成長しています。またアプリの中心はゲームであり、その次にフェースブックが使われています。スマートデバイスにおけるフェースブックの活用ニーズは相当強そうです。(但し、フェースブック自身も認めているように10代が離れていると言う調査結果もあります)フェースブックのアプリからWebにアクセスするのがブラウザー時間を増やしているようです。

 

<HTML5はアプリのツールとしての活用>

 一方調査結果ではHTML5はクロスプラットフォームのアプリを安く、速く作る為のネイティブアプリの中での一つのツールとしての使い方がされていると書いています。所謂、ハイブリッドアプリの中で活用されるトレンドです。

こうなれば遅くてカメラ操作など機器特有の動きに対処できないHTML5の欠点は隠れます。これはネイティブアプリを主、HTML5を従とする経済学で言う「補完財効果」を狙った動きです。

 

 日本ではHTML5とネイティブアプリの関係は「代替材=競合財」と言う視点が相変わらず強いですが、流石にプラグマティックな米国では、「補完財効果」のコンセプトが開発者の間でも主流になり始めているようです。

 

<企業主体の標準化とは性格が異なるアプリ開発>

HTML5対ネイティブアプリと言う標準化論争はLTEや「ベータ対VHS」の標準化とは性格が全く異なります。一般に標準化が成功する為には、W3Cのような企業連合の合意があればそれで十分でした。しかし、わずかな使い勝手に100円―500円を支払うマイクロ取引が絡んでくるアプリの世界は、市場で経済学で言う「消費者選好」が働きます。その結果、80%の時間がアプリに割り振られ、20%がブラウザーに割り当てられました。

 

 日本の賢い技術屋さんほど企業視点の標準化や効率化を優先した見方をしますが、アプリの開発者の多くは素人の「マニア」であり、「効率を優先するプロ」とは発想が違います。開発が大赤字でも二本売れれば大喜びする連中です。彼らが作るわずかな使い勝手の差にマイクロ取引が成立しています。このようなカルチャーやトレンドがアップ経済の背景にあり、それを生活者がマイクロ取引において好んでお金を出していると言う点を賢い技術屋さんは、多くの場合、見逃がしています。

 

この点はメーカーズの一品生産と同じですね。

 

<ゼロ戦を爆装させる愚の時代は終わった>

 韓国のサムスン電子や日本のNTTドコモなどは、「タイゼンOS」を打ち出しています。またファイアーフォックスOSにはKDDIが一枚噛んでいます。これらのHTML5が作りやすい新しいOSプラットフォームは、アンドロイドOSに対する保険と考えられます。現状では各社のビジネスの中心は依然としてアンドロイドOS即ち、アプリの活用です。

 

 一方市場の8割を占めるとされるAT&Tやベライゾンの米国のトップ通信キャリアは、「タイゼンOS」にもファイアーフォックスOSにも共に興味を示していません。(3位のスプリントは両方に興味を示していますが)

 

 筆者の眼にはHTML5でアプリを作るのは、本来のブラウザーの役割をアプリに応用する強引なやり方に思えます。

 

 昔、日本海軍は終戦前、ゼロ戦63型零戦63型(A6M7))を開発しました。これは本来戦闘機のゼロ戦を爆装させて艦上爆撃機に応用したものです。HTML5でアプリを作るのは、こう言った無理があると思えてなりません。(無論、出来ない事ではありませんが)

 

フラリーの調査結果を見れば、ゼロ戦主、ゼロ戦が警護する艦上爆撃機=HTML5が従、艦上爆撃機を包みこんでゼロ戦が対応する、編隊飛行の本来の戦い方が戻ってきたような気がします。



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