スマート革命と経済、スナップチャットの特長はミッション・インポッシブルと同じ自動消去、それが何故「ストーカー経済」なのか?
<序文>
生活者が一人一台のパソコンを活用する時代が終わり、一人が七台のスマートデバイスを時と場所によって使い分けるスマート革命(総務省の情報白書2012)の時代が始まっています。
その中でスマートデバイス上では新しいソーシャルメディアが芽生え、急速に成長すると共にフェースブックなどの既存のソーシャルメディアを脅かし始めています。
2013年3月、テキサス州のオースチンにおけるSXSWのカンファレンスでは、スナップショットが話題になりました。スナップショットは、ふざけた写真や動画をLINEと同様、知り合いに送り楽しむサービスです。その特徴は1秒から10秒後に写真が消えてしまうミッション・インポッシブルと同じ「自動消滅性」にあります。
ミッション・インポッシブルは昔の有名テレビドラマですが、21世紀に入ってからトム・クルーズ主演の映画として復活しています。本部から捜査官への行動指令のテープが自動消滅します。
その特徴を持ったスナップショットをアル・ゴア元大統領が「ストーカーの経済」と呼びました。(ストーカーの経済自体を最初に提唱したのは2012年春のフォーブス紙ですが)
それは一体、どういう意味でしょうか?
★★ Al Gore credits Snapchat's success to 'stalker economy'
★★ Big Data and the Stalker Economy (フォーブス紙の記事)
<出所:CNET>
<評判の経済、注意の経済、ストーカーの経済>
21世紀に入って「無料でブログや自分で作曲した音楽を公開する動き」など、インターネットのボランティア的な活動は、「無料の経済活動」と言う視点から経済学者を悩ませました。その結果、彼らは「無料の経済行為の代わりに良い評判を得るので満足している」」と言う評判の経済や「いいね」ボタンなどに代表される「皆に受け入れられた、認められた」と言う認知欲求が満たされる経済行為と考える注意の経済などの見方が登場しています。
今回の「短期間で消える写真や動画の仲間内交換」には「ストーカーの経済」と言う呼び名が与えられました。上述のフォーブス紙の記事を参照するまでもなく、最近流行りのビッグデータなどもライフログを機械学習により自動分析するため、明らかに一種の「ストーカーの経済」です。ビッグデータに対する批判的な見方とも考えられます。
<ストーカーを嫌う10代>
フェースブックにしても、嘗てのマイスペースにしても10代の若者に対しては、親の監視が推奨され、徹底していると言う特徴があります。それを10代は小説の「1984」にちなんでビッグブラザーなどと呼んで忌み嫌っています。ゴア元大統領はソーシャルメディアに対する親の監視やクッキーなど常に上から監視するインターネットの状況をこれはまるでストーカーだと考えて「ストーカーの経済」と呼びました。スナップチャットの場合は、親やPTA、将来の就職先などの監視者=ストーカーを避けると言う経済的メリットがあると言う見方です。
これは言い得て妙です。
確かにフェースブックに酔っ払って路上で寝た写真などを投稿すると後で就職に響くなどと言われています。これは明らかに「ストーカーの経済」です。
スマートフォンのアプリを追跡すれば10代の若者は両親にGPSで監視される事にもなります。最近の米国のドラマを見れば明らかですが、10代はそういった状況から逃げたがっています。それが経済的な利点だと言う訳です。
<ストーカーを潜り抜ける10代>
その点スナップチャットは、親しい相手に写真や動画を送り、相手が見た1秒―10秒後に自動消滅させる事が出来ます。これだと親の眼や世間の監視を掻い潜って「馬鹿を楽しむ」ことが出来ます。
既に確立されたパソコンの文化に代わってミッション・インポッシブルの面白い経済文化がスマートデバイス上で復活を始めました。