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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

スマート革命と広告売り上げ、2012年米国のモバイル広告は予想外の伸び、eMarketerがモバイル広告売り上げ予測を大幅上方修正、各社のビジネスモデルに影響するのか!!?

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<序文>

 フェースブックとグーグルの2012年第三四半期のスマートデバイス広告が予想以上に良い数字の為、これまでスマートデバイス広告に悲観的だったeMarketerがモバイル広告売り上げ予想を大幅上方修正しました。2012年は当初の予測である2012年のモバイル広告の予測を $2.61 billion(26.1億ドル)から$4 billion(40億ドル)に上方修正しました。前年比で180%増加と大幅な成長予測です。2012年の全広告売り上げの予測は米国全体で$165.9 billionです。ですから2012年の段階では未だ全体の数%ですが、一時見られた全くの悲観論は後退しました。フェースブックの株式も一時は20ドルを切っていましたが、現在は若干持ち直し26ドル前後です。2016年には米国でスマートデバイス広告は、ラジオ全体の広告売り上げを上回ると言う予測です。

 

一方経営紙のフォーブス紙などは冷静であり、「スマートデバイス広告のトレンドは過去、アナログ広告がインターネットシフトした際、パソコンで見られたのと全く同じ現象だ」と述べています。

 

スマート機器に関わる広告売り上げの帰趨は、インターネットのエコシステム(生態系)そして各社のビジネスモデルに大きく影響します。パソコン時代に比べて広告売り上げがスマートデバイスに雪崩れ込まない状況に多くの企業は「広告モデル」を諦め「マイクロ取引」や「ネット通販」で稼ぐ姿勢を示すと共に独自のスマート機器で顧客の囲い込みを図っています。(アップル、アマゾン、楽天、グーグル、マイクロソフト、ヤマダ電機、各通信キャリアなど)

 

EMarketerの新しい予測はそれに影響を与えるのでしょうか?その中でも特にグーグル、フェースブックと言う本来、オープンを志向する広告モデル中心の企業の今後の動向が鍵を握ります。

 

★★ The Bull Case on Google Explained: Mobile Isn't the Problem -- It's the Opportunity

 

★★ eMarketer: Unexpected Growth from Facebook, Google Lead to Significant Uptick in US Mobile Advertising

 

★★ Facebook and Google Benefit From Mobile Ad Surge

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<出所:eMarketer>

<アナログ広告のパソコン・インターネットシフトと類似>

 確かにフォーブス紙の冷静な分析は非常に参考になります。

嘗てテレビの雄である米国NBC放送の元CEOジェフ・ザッカー氏は「アナログのドル、デジタルのペニー」と呼び、一声30秒が2000万円―3000万円と呼ばれるテレビCMに対して単価が2ケタ安いインターネット広告を「話にならない」とこき下ろしました。一方それをこまめにかつ一手に集めて成功したのがグーグルです。これはパソコンとブラウザーが中心だった時代の話です。

 

 ところがスマート革命(ポストPCコンピューティング)の時代を迎えてそのグーグルが四半期単位の株主総会で毎回、「スマートデバイスの広告売り上げをどうするんだ!!」と詰められています。今回のeMarketerの予測変更で2016年にはモバイル広告=スマートデバイス広告全体は、ラジオの広告売り上げを超えるボリュームが見えてきました。インターネットの広告売り上げの3分の一程度にはなりそうです。

 

しかし問題はザッカー氏が指摘したCPMのクリック単価です。グーグルは2012年には四半期決算の都度、スマートデバイスからの広告クリック数が増加し、その都度クリック利益率が下がり、株主が怒っています。(以下の図参照)

 (グーグルの売上高利益率=粗利(クリック利益率)の低下傾向)

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<出所:ビジネスインサイダー>
 

この広告単価の低さ=クリック単価の低さがトリガーとなってスマート革命下ではスマート機器の販売(ネクサス7やネクサス10、ネクサス4の販売)とグーグルプレイでのマイクロ取引重視にグーグルが進出し、注力する背景圧力となっていました。脱広告圧力が働いたわけです。フォーブス紙は「アナログのドルとデジタルのダイム」といった風に「パソコン中心時代にもインターネット広告単価が次第に値上がりした」と言う経験則がスマートデバイス=モバイル広告にも働くと考えています。

 

そしてパソコン広告時代の半分ほどの値段=広告単価に返れば大成功だと述べています。有る意味、非常な楽観論です。

 

<アップル型の閉鎖モデル、囲い込みへの誘導圧力は続くだろう>

 確かに一時期ほどスマート革命下のモバイル広告はひどい状況ではなく、グーグルもフェースブックも一息ついていますが、広告単価が明確に大きく値上がりしない限り、それで十分と言う訳ではありません。従がって今後もグーグルプレイのようなマイクロ取引重視、ネット通販重視、スマードデバイス販売重視の圧力はグーグルとフェースブックにかかり続けると考えられます。この両社が戦略を大きく変更すれば別ですが、そうでない限りマイクロソフトも含めて全体のビジネスモデルの閉鎖性重視、スマートデバイスからの囲い込み重視、モノ支配論理からサービス支配論理重視の流れは続くと考えられます。

 

グーグルは現在のスマートデバイスの広告状況を21世紀前のパソコン+ブラウザー時代のインターネット広告に近いと再三述べています。フェースブックもスマートデバイス広告が好調な一方で脱広告のソーシャルギフトや有料メッセージサービスに熱心です。これは囲い込みモデルに繋がります。

 

台風の風速が70メートルから40メートル位に軽くなったと言うところでしょうか。スマートデバイス対象の広告単価は少しずつ上がるでしょうが、フォーブスの楽観論が現実になるまでには、かなりの時間がかかりそうです。

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 ゼロから学ぶスマート革命

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