日大に限らず、やっぱりブランディングは必要だね
何だか「日大アメフト部問題」が騒がしい。誰が悪いのか、真相はどこにあるのか、その辺りは正直あまり興味がないためニュースを聞き流していたのだが、昨日、日大が開いた記者会見のとあるシーンが引っかかった。
「日大のブランドが落ちてしまうかもしれませんよ?」という記者の問いかけに対し、司会者でもある日大職員は「いいえ、落ちません!」と断言した。
ブランド――。おそらく記者も日大職員も無造作に使った言葉だろう。いろいろな意味が含まれる言葉だが、ここでのブランドをあえて定義するなら「世間での評判」「世間のイメージ」くらいの意味合いだと思われる。喉元過ぎればなんとやらで、大学のブランドとは就職や学力や授業内容がメインであり、問いかけた記者の方が少々アツクなりすぎているような気がする。
ところで、この記者会見では事件の不透明さもさることながら、日大広報部の〝会見のまずさ〟も世間の耳目を集めており、にわかに「広報の在り方」や「大学あるいは企業ブランド」といった側面に焦点が当てられている。
まずい記者会見の代表例として咄嗟に想起されるのが2000年、雪印乳業による集団食中毒事件だろう。記者に詰め寄られた社長の「私は寝てないんだよ!」との逆ギレ発言が世間からバッシングを集め、これが雪印乳業のみならず雪印グループ全体に悪影響を広げ、結局この一件がグループ崩壊へとつながった。
こうした不祥事が起きるたびに「企業ブランドの運営」が問題になることもあってか、近年はこうした危機をいかに乗り切るかといったメディアトレーニングが盛んに行われている。ただ、常々強く感じるのは、危機対応型のメディアトレーニングでは決してブランドは守れないということだ。
何かあってからうまく対応するのはあくまで〝事後の処理〟であり、マーケティング的な世界でいう本来の「ブランディング」とは根本的に異なる。
事故を起こさないことは言うまでもなく、消費者や世間に正しいイメージを浸透させ、他社との差別化を図る重要な施策。言うなれば、自らの明確な意志を持って〝事前につくる〟のがブランディングである。
他人事ではないタックル問題
今回の問題が何気ない日常のスポーツで起きたように、いつ企業にも〝危険なタックル〟が降ってくるかは誰にも予想できない。ところがこんな重大事件に限らず、常に企業ブランドは誤解され、棄損され、歪められている可能性は高い。なぜなら、企業が思ったようにブランドは世間に伝わらないもので、意外なところでは「求人情報の文言」「社外に配るノベルティ」といった些細なものまでブランドを構成する要素になりうる。
あるいは、良かれと思って行っている「社会貢献活動」が予想外にブランディング的にはマイナスになっている事例もある。
ブランディングは大企業のものでなく、普通の企業こそ手がけるもの――。
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(パッケージプラン『ブランドを立て直す』)
日大は出身校ではないが、ビジネス書を出版する際にたまたまとある学部の教授にお世話になった。父親ほどの年齢だがなぜかウマが合い、出版のプロモーションを終えた以降もたびたび一緒にお酒を飲む間柄になった。学問探求にとても熱心な教授で、気さくかつ誠実な人柄は学生からも慕われているらしく、キャンパスを訪れるたびに日大にアットホームなイメージを抱いた。
教授だけでなく、総務などいわゆる事務方の職員さんとも複数の面識があるが、職場を訪れるとやはり皆いたって誠実な仕事ぶりで何ら一般的な企業の風景と変わらない。
ところで、司会を務めた広報部職員の対応のまずさがやり玉に挙がっている。アレは確かにまずい。まずすぎるだろう。でも想像するに、「広報部」という名前はつくものの恐らく専門のトレーニングは受けておらず、つまり、世間一般がイメージする「華麗な広報部」ではなく、経理や総務といった「地味な部署の1つ」というのが実情なのではないだろうか。
とするなら、あの司会者も広報とはいいつつ「何も訓練を受けていない素人のオジサン」と考える方が普通であり、まずい記者会見になってしまったのも少々大目にみてあげたいな、と個人的には思う。コトの本質はそこではないのだから。
誰だって慣れない危機対応を突然命じられ、感情的なメディアに囲まれ、いきなり無数のフラッシュを浴びたら我をなくすのではないだろうか。
(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)
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