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「自分だけの武器」を持たねば、フリーランスとしては生きていけない。「オリジナルの戦略」を描けなければ、コンサルタントは務まらない。私がこれまで蓄積してきた武器や戦略、ビジネスに対する考え方などを、少しずつお話ししていきます。 ・・・などとマジメなことを言いながら、フザけたこともけっこう書きます。

「働かない社員」を働かせる働き方改革

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2020年までに売上げを20%アップ――。
売上げに占めるネット比率を1割から3割へ――。
店舗数の純増ペースを年間50店に倍増――。

企業はいろんな計画を立てる。もちろん前向きな計画が殆どである。分かりやすい目標を内外に示すことは経営上のみならず、社員の意識を高めるうえでも重要だ。具体的な数字があれば「あとどれくらい頑張ればいいのか」「目標に到達するには何をすべきか」など、社員は進捗を確かめながら合理的に働けるからだ。

もっとも、うまくいけば......の話であるが。

アバウトな計画、スローな会議

「前年同月比で売上げ5%アップ」を目指す企業があった。それが絶対的な目標であることは社員の神妙な面持ちを見れば察しがついた。だが、過去の販売データを確認すると「前月-12%」「前々月―9%」「3ヶ月前-5%」――。さらに遡ってもマイナス基調は常態化しており、毎月5%アップどころか完全なジリ貧状態だった。だから、コンサルタントであるボクが呼ばれたのだろう。

そんなことから月例会議の話題はもっぱら「5%アップの未達」に集中していた。幹部社員たちは険しい表情を並べ「なぜ売れなかった?」と問い詰め、一方の現場社員たちは「我々も一生懸命やってはいるんですが......」と俯くばかりで、沈黙の多い会議だった。

マイナス続きの販売データを見る限り、毎月こんなヘビーな会議が繰り返されているのだろう。

毎月5%アップは正直シンドイと思う。年計であれば「これから挽回します」「〇〇を修正します」といった言い訳で何とかしのげるのに対し、月単位で測られてはまったく逃げ場がない。現場社員に助け舟を出すわけではないが、単純かつ根本的な疑問が浮かんだので、幹部社員に尋ねてみた。

「ところで......5%アップを達成するためにどのような施策を打っていますか?」
みなが顔を見合わせ一斉に首をひねったので、言葉を変えて質問した。
「現場に5%アップを命じるなら、本部サイドはそれを達成するだけのこと、言ってみれば5%ぶんのサポートが必要になるはずですが」

例えば、前年同月より「集客を5%増やす」ための広告を打つ。「客単価を5%上げる」商品ラインナップに変更する。もしくは「5%のついで買い」を誘発するような接客研修を追加で実施する。
人口が減り、可処分所得が増えず、ただでさえモノが売れない時代において、何の工夫もせず自動的に売上げがアップするはずはない。5%増やしたいなら5%の施策を、10%増やすなら10%の努力をということだ。

結論からいえば、何の施策も打っていなかった。最初の計画時はともかく、現状では「毎月5%アップ」は単なるキャッチコピーになっていた。

もう1つ問題があった。それは会議の進め方。

A店店長:「今月は〇〇が高額なため売れなかったのが反省点です。なので来月はそれを踏まえてお手頃な商品を重点的に提案したいと思います」

幹部社員:「分かった。次はB店店長」

B店店長:「うちは雨の日に客足が鈍ったので、雨の日のサービスを何か考えようかと思います」

幹部社員:「いい考えだ。次はC店店長」――。

誰も疑問や意見を挟むことなく会議はスムーズに進んでいく。だが、販売データを見れば高額な〇〇が売れている店は幾つかあり、雨の日でも客数が減っていない店もあった。つまり、事実を述べているだけで問題の正確な分析ができておらず、さらにはとりあえず対策を示すものの「どんな効果を狙い」「どんな手法で」という具体性がなく、また「いつから始める」という期限も切っていなかった。

狙い、手法、期限のすべてが曖昧。これではマイナス基調から脱せるはずがなく、翌月も翌々月も同じ報告、同じ反省を繰り返すに違いない。スローな会議である。ただ、全国から社員が集まる一大イベントとあって重要度は高く、毎月早朝から夜遅くまで続いた。

業務なのか、作業なのか、成果物なのか 

毎月60ページにも及ぶ「売り場指示書」を作成している企業があった。売り場指示書とは、売り場のレイアウトを引き、どこにどのような商品を配置し、その月の重点商品を決める資料。いわば毎月の販売マニュアルのようなものだった。上司に提出して承認を仰ぐという意味では成果物でもある。

指示書は毎月の決まり事で、最低でも60ページが暗黙の了解だったため、作成するだけでも1週間を要した。この作業に取り掛かるとほかの業務が疎かになってしまうらしく、担当する社員は毎月頭を悩ませていた。

さて、指示書は苦労のワリに中身は乏しいものだった。前年同月の指示書をコピペしたり、ネットで見つけたリサーチ結果を貼り付けたり、見栄えは良くボリュームはあるものの、考えた形跡はどこにも見当たらない。資料づくりが目的化しているのは明白だった。

そもそも毎月さほど売り場が変わらない業態だった。さらにいえば、実際の売り場は指示書とはかなりかけ離れたものだった。

「変わりたくない社員」増直中

「働き方改革」が盛んに叫ばれている。「生産性を高めろ」「残業を減らせ」というフレーズが踊っているが、ちっとも響いてこない。国や会社の本気度が感じられない。それはリアリティーが伴わないせいだろう。

もっと効率的に、もっと意欲的に働きましょう――。政治的な意味はともかく、職場での雰囲気や取り組みを大胆に意訳するなら「働かない社員を減らしましょう」。そんな意味だと思う。
実際のところ「ウチには働かない社員がいる」というフレーズを昔からよく耳にする。そう嘆きつつ一向に減らないし、会社が違っても年齢が異なっても、似たような意味でこのフレーズが使われるから不思議だ。

そこで「働かない社員」をあえて定義してみることに。

・最低限の仕事しかしない
・自分の意見を殆ど持っていない、もしくは持っていても言わない
・同僚の仕事ぶりに無関心、もしくはそんな素振りをする
・仕事の将来や自分の会社に興味がない、もしくは考える機会がない

要するに、まったく働かないわけではない。与えられた仕事はこなし、上司の意見に従い、同僚や部下とは適度な距離を保ちつつ組織の和も尊重する――。ちょっと控えめというだけなのだ。きちんと働く意志はあり、またそれなりの能力も持っている。ちっとも珍しい存在ではないだろう。
そもそも誰もが常にフルパワーで、積極的で、効率的に働くという方がレアケースだ。それは国や企業がこうあってほしいと願う理想の〝社員像に過ぎない。そんなリアリティーを踏まえて「働かない社員」を改めて定義すると、こんな言葉がもっとも近いのではなかろうか。

変わりたくない社員――。

業績が良くなったからといって劇的に給料が伸びるわけでない。「仕事が増えるのはイヤ」「面倒はごめん」「リスクは負いたくない」「我が身が最優先」――そんな安定志向がベースにあるため、たとえ面白そうな仕事が現れてもチャンスが到来しても「大変ならワリに合わないかな?」とそっぽを向いてしまうのだ。

変わりたくない人は何をしても変わりたくないものだ。もはや「改革」という言葉を耳にするだけでますます身を固くするだろう。変わりたくない――。それはある意味で合理的な心理ともいえる。

改革でなく「業務フローを見直す」くらいがちょうどいい

さて、前回の「スクールウォーズのような職場が生まれ変わった話」変わりたくない社員を変えたのは「改革しましょう!」といった刺激的なフレーズではない。

業務フローを少しずつ変えること――。

今ある業務そのものを変えるのは現実的でなく、抵抗も生まれやすい。ところがA業務とB業務でやっていた部分にC業務を新たに紐づけたり、D業務を統合することでE業務とF業務をなくしたり、G業務をばっさり半分に減らしたり。業務フローを変えることはさほど難しくない。

その際に何より重要なのは、純粋かつ徹底的に「変わりたくない社員」のリアリティーに寄り添うことである。

「みなさんの仕事量を減らすために業務フローを変えるんです」
「ムダな業務フローを変えれば面倒だって減らせます」
「業務フローを変えるのはあなたのリスクを減らすためです」

そう唱えつつ会議を見直し、資料を10分の1まで圧縮するなどムダな業務を捨てていくうちに、変わりたくない社員はいつの間にか変わっていた。問題の本質はアバウトな計画そのものではない。スローな会議でもない。ましてボリューミーな業務でもない。

業務フローのムダを指摘する人がおらず、社員が疲弊して事業が滞っているのに、それに気づかず前に進めてしまうことだ。

塵も積もれば山となる。小さなムダを放置していると、それはいつしか見えないところに潜んでしまい、もはや原因を探るのすら困難となり、ボディブローのごとく企業と社員を苦しめる。業務フローの見直しこそ地道だが最善の〝改革〟であると思う。

(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)

業務フローを見直すことでマーケティングを蘇らせる――。マーケティングを立て直す専門のコンサルティングです。詳しくは下記Webサイトをご覧ください。

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