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「自分だけの武器」を持たねば、フリーランスとしては生きていけない。「オリジナルの戦略」を描けなければ、コンサルタントは務まらない。私がこれまで蓄積してきた武器や戦略、ビジネスに対する考え方などを、少しずつお話ししていきます。 ・・・などとマジメなことを言いながら、フザけたこともけっこう書きます。

新書『名刺は99枚しか残さない』 著者・荒木亨二が、ちょこっとご紹介

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 日本には多くの記念日がありますが、一般に馴染みのないものも相当数あります。例えば、4月11日は「ガッツポーズの日」だそうです。ご存知でしたか? 知らなくても当然なのですが、驚くことには、この記念日の由来は、あのガッツ石松さんだと言われています。

 ガッツ石松さんと言えば、OK牧場! というギャグを想い出す人も多いでしょう。彼はこのたったワンフレーズで、世間に大きな笑いを提供してきましたが、決してお笑い芸人ではありません。またある人は、名作ドラマ「北の国から」に出演していた彼を思い出すかもしれませんね。彼は今や個性派俳優として確たる地位にありますが、元々俳優だったわけでもありません。ご存知の方も多いでしょうが、彼は元プロボクサーなのです。

 そのガッツさんが1974年、ボクシングWBCライト級チャンピオンになったときのこと。彼は勝利の喜びを、リング上で、思わず両手を挙げて表現したそうです。その姿が、ガッツさんの名前から「ガッツポーズ」と報道され、この言葉が世に広まったと言われています。この試合が4月11日に開催されたことから、この日が「ガッツポーズの日」と名付けられたそうです。(ウィキペディアより抜粋)

 誰も知らない「ガッツポーズの日」。知らなくても何の問題もありませんが、このような変わった記念日は、ほかにもたくさんあります。そして、それらの多くが語呂合わせから生まれています。たとえば2月9日は「2=に」と「9=く」で、肉の日、6月4日は「6=む」と「4=し」で、虫の日。8月2日は「8=パン」と「2=ツー」で、パンツの日。8をパンと読ませるのはやや無理がありますが、言われてみれば、納得できないこともありません。

 それでは5月4日は何の日でしょうか。同じく語呂合わせから制定された記念日です。普通に考えれば「5=ご」と「4=し」でごしの日となりますが、これではまったく意味を成しませんね。そこで少し考えると、ごんし、ごっしー、ごよん・・・といった言葉が浮かびますが、やはり意味ある単語にはなりません。

 正解は「名刺の日」です。このことを知ったとき、私にはピンときませんでした。5月を英語で「メイ」と読み、4はそのまま日本語で「し」と読んでめいし、すなわち名刺の日。パンツの日以上に無理がある記念日です。ちなみに名刺の日を制定したのは日本名刺研究会、プライベート名刺の普及を目的としている団体だそうです。日本にはいろんな団体があるものですね。

 ところで、私がなぜ、名刺の日に関心を持ったのか。それは「4月27日」を名刺の日にしたいと、個人的に考えていたのです。もちろん記念日として制定したいといった大それた考えはなく、このブログだけで〝個人的に宣言〟したいと思いついた程度。そうは言っても、もし本当に名刺の日が存在するなら、私が思いつきで宣言をすることで、どこかに迷惑をかける恐れもある。そこで念のため「名刺の日」に関して調べたところ、実在したという次第なのです。

 それでは、私が4月27日を、名刺の日と「宣言」したかった個人的な理由とは・・・。

新書『名刺は99枚しか残さない』発売日なのです

 『名刺は99枚しか残さない』は、私が初めて著したビジネス書です。私がちょうど昨年の4月に書いたブログ、「ワタクシの仕事術5 99枚の名刺でビジネスを回す方法」を元にした本です。

 このブログは「誠Biz.ID」に記事として転載され、その後、Yahoo!ニュースなど各種ニュースサイトにも転載され、大きな反響を集めました。そして、たまたまこの記事を目にしたメディアファクトリーのとある男性編集者から、「この記事を本として出版しませんか」というオファーをいただいたのが、昨年の5月。ブログを書いてから1ヶ月後のことでした。

 それから1年、私が編集者とじっくり作り上げたのが本書です。この1年間、私は編集者から実に多くのダメ出しをもらいました。私も負けじと持論を展開し、編集者をムッとさせることも度々。ときには、ひとつのコトバ・ひとつの表現を巡り、1時間論争するなんてことも。

 本が乱造される現代において、これほど真摯に〝本づくり〟に取り組み、著者と真剣に向き合う編集者は、そうそういないのではないでしょうか。大変ありがたいことです。

本書はちょっと変わっています

 さて、始めにお断りをしておきますと、本書『名刺は99枚しか残さない』は、名刺の<整理術>を紹介するものではありません。これまでの「名刺本」といえば、「どのように名刺を整理したら手間いらずか?」、「後で名刺を索引しやすい方法は?」など、簡単・便利に名刺を整理することに主眼が置かれていると思います。これに対して本書は、ズバリ名刺の<活用術>を提案しています。

 おそらく、これまでみなさんが聞いたことのない名刺の活用術であり、考え方です。これから私が本書を執筆することになった経緯などを簡単にお話しますので、参考にしてみてください。

 『名刺は99枚しか残さない』というタイトルから想像できるかと思いますが、「名刺を99枚まで絞り込みましょう!」というのが、本書のベースとなる発想です。たとえばあなたが名刺を500枚持っているとしたら、およそ400枚が不要となりますので、それを捨てましょうと唱えています。

 30歳を過ぎればビジネスの幅も広がり、1000枚、2000枚という膨大な名刺を所有するビジネスマンも多いでしょう。そのなかには取引先の部長の名刺、有名企業の取締役の名刺など、あなたにとって貴重な名刺が入っているに違いありません。このような場合でも、思い切って900枚、あるいは1900枚もの名刺を捨てましょうと、私は提案しています。

 なぜ名刺を絞り込まなければならないのか。なぜ99枚なのか。詳しくは本書を読めばご理解いただけると思いますが、これが私のビジネス経験から導き出した「明確な回答」です。

 私は20代後半でフリーランスとして独立し、以来十数年、ビジネスコンサルタントをやってきました。独立したての頃は当然、苦労は多く失敗も多く、その反対に、ビジネスに必要な人脈は少ないものでした。成功するにはどうすればいいのだろう。「ビジネスは人脈なり」とばかりに、より多くの人脈=名刺を集めることこそ「ビジネスの本質」と考え、名刺集めに奔走したわけです。

 ところが、いくら名刺を集めても、一向に自分でビジネスを回せるようにはなりません。山のような名刺を前に、途方に暮れるのみ。なぜこんなに名刺を集めたのに、うまくいかないのだ。

 ちなみに「ビジネスを回す」とは、<自分がビジネスの主役になる>という意味合いです。ビジネスの主役というと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、主役は経営者や部長など、権限のあるビジネスマンに限りません。誰でも、主役になれるチャンスはあります。

 たとえば、プロジェクトチームでの社内会議。かつてない難題に直面し、参加メンバーみんなが解決策に頭を悩ませていたとしましょう。こんなとき、頼りになるのがプロジェクトリーダーのはず。それなのに、彼は自分の意見をいっさい言わず、参加メンバーばかりに発言を求める。では、いつも威勢のいい先輩はどうだろう。彼もまた、人が変わったように無口になり、会議室の外を眺めたまま。よく見かける光景でしょう。

 このような状況で、もしあなたが先を見通した意見を堂々と述べることができたならどうでしょう。プロジェクトリーダーや先輩は間違いなく、あなたに注目します。仮にあなたが若くても、役職が低くても、今後のプロジェクトにおいて、あなたはキーパーソンのひとりになるでしょう。そうなれば、上司に自分の意見を通しやすくなりますし、取引先にも一目置かれる存在となりますし、何よりも、ビジネスを主体的に楽しむことができます。

 私は主体的にビジネスを楽しむために、ビジネスの主役になろうと努めました。そのために名刺を1000枚も集めたのに、ちっともビジネスを回すことができない。むしろ、回されてばかり。どこかが間違っているようでした。

 よくよく考えたら、1000枚の名刺(=ビジネスマン)のことを、実はよく知らなかったのです。名刺交換をしたっきりの人が相当数に上り、数年連絡を取っていない人もいました。もっともひどい場合は、相手の顔すら思い出せない始末。

 私はここで、相手の立場になって考えてみました。「私が忘れているような相手なら、きっと相手も、私のことなんて忘れているだろう」。

 このような想いに至ったとき、私は寒気がしました。なぜなら、自分が相手から忘れられるなんて、ビジネスマンとして失格ですから。組織に属さない私のようなフリーランスなら、なおさらに致命的な状況。1000枚もの名刺がありながらビジネスを回せないなら、名刺5000枚あっても、結果は目に見えている。

名刺の絞り込みから見えた「ビジネスの本質」

 そこから私は戦略を方向転換、名刺を増やすのではなく、「名刺を絞り込む」という決断をしました。しかも、なぜか99枚。(冒頭でも触れました通り、なぜ99枚かということはここでは省略します)。

 まずは99枚の名刺を収納するために、『99枚名刺手帳』という専用バインダーを作成。次に、自分なりの名刺の絞り込み方(=捨て方)を決め、そのルールに従うことにより、常に名刺を99枚でキープする手法を開発しました。さて、このように名刺を絞り込んでいく過程で、私は非常に重大なことに気付いたのです。 

「名刺を絞り込むと、反対に、人脈が広がる」

 ちょっと不思議ですが、これが事実です。この『99枚名刺手帳』活用術を発案し、自ら実践してきた、私の経験です。

 きっと多くのビジネスマンは、名刺を99枚まで絞り込むことに3つの不安を覚えるでしょう。ひとつは、名刺を絞り込む=人脈を狭めているような錯覚に陥ること。ビジネスにおいて人脈=名刺は宝、それをあえて絞り込むなんて、発想が非常識であると。特に人脈=名刺を多く抱える人ほど、不安になるはずです。

 もうひとつの不安は、「名刺を捨てる」という行為自体に、罪悪感を覚える。この点に関しては、誤解のないよう、先に説明をしておきます。本書は、実際に名刺を捨てることを推奨するものではありません。捨てた名刺は、『99枚名刺手帳』に残さないという意味に過ぎず、きちんと大切に保管しておきます。もちろん、名刺を捨てたからといって、あなたのビジネス上の人間関係を壊すものでもありません。

 そして最後の不安が、「名刺99枚で足りるのか?」というもの。やはり名刺を多く持っている人ほどこのような不安に駆られるでしょうが、ご安心ください。私の経験から言えば99枚で十分ですし、むしろ、99枚も必要ないときもあります。

「名刺サーフィン」、「名刺マインドマップ」など造語いろいろ

 ここでおおまかに『名刺は99枚しか残さない』の構成をお伝えしておきますと、

 1)「99枚名刺手帳」の作り方

 2)「99枚名刺手帳」の活用の仕方

 という2段階になっています。まずは本書の前半部において、名刺を99枚に「絞り込む手法」、それを納める手帳の「作り方」、それらを収納する「3つのファイリング法」を、図版を交えて分かりやすく解説しています。

 そしてここからがポイントなのですが、冒頭でも述べました通り、本書は単なる名刺の<整理術>にとどまりません。あなたの名刺=人脈を、実際のビジネスに生かすために、さまざまな名刺にまつわるスキルを紹介しています。

 1)「名刺サーフィン」:『99枚名刺手帳』をパラパラとめくり、ビジネスアイデアを発想する、遊び感覚でできる<連想力トレーニング>

 2)「名刺マインドマップ」:名刺を白紙の上で自由に動かし、名刺と名刺の間にキーワードを記入したり線を引いて、かのマインドマップのように思考を深める<発想力トレーニング>

 3)「ハヴズ・ファイリング」:名刺を人脈ごとに収納し、ビジネス上の人間関係を把握・効果的に活用しやすくする<効果的ファイリング>

  「名刺サーフィン」、「名刺マインドマップ」など、みなさんにとって聞き覚えのない言葉が並びますが、それもそのはず、すべてが私の造語です。なぜなら、それらの名刺活用スキルは、私の十数年にわたるコンサルタントの〝個人的な体験〟から編み出されたものだからです。

 だからと言って、私だけの個人的なスキルを紹介しても意味がありません。あくまでも、みなさんが自分のビジネスに生かせるように工夫して書いた、実践的なビジネス書。そういった意味では、本書の終章でも書いていますが、「おそらく、世界でも類を見ない名刺活用法」に仕上がっていると、自負しています。

 また本書は名刺をテーマに綴られていますが、実のところ、私のコンサルタントとしての「ビジネス発想法」、「人脈術」、「仕事の作り方」などなど、『コンサル脳』を紹介したビジネス書という側面もあります。

 本書の発売日、4月27日は、「名刺の日」とは何の関係もありません。しかし、偶然にも、その翌日からゴールデンウィークがスタートし、すぐに5月4日の「名刺の日」がやってきます。これを機会に、あなたの名刺を見直してはどうでしょう。

 「この人はどうしているのだろう」とか、「そう言えば、今度飲もうって約束したまんまだったなあ」など、あなたが忘れていた記憶が蘇ってくるかもしれません。それはそれで、とても楽しく、同時に自分のビジネスを見つめ直す機会にもなります。

 あなたの名刺、99枚に絞り込んではみませんか?

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『名刺は99枚しか残さない』

*誠Biz.IDにて、『名刺は99枚しか残さない』の序盤の一部が転載されています。23日、25日、27日の計3回の連載を予定しています。ご興味ある方はコチラをどうぞ。

ゴールデンウィーク明けに私のインタビュー記事も掲載される予定ですので、こちらもよろしくお願いします。

(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)

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