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【書評】『データ・アナリティクス3.0』

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トーマス・H・ダベンポート教授といえば、企業内においてアナリティクス(データ分析)をいかに定着させるか、を長年研究してきた人物としてご存知の方も多いでしょう。2008年に発表された代表作『分析力を武器とする企業』はベストセラーとなり、データ分析のビジネス活用に関する解説書の先駆けとなりました。そのダベンポート教授の新刊が『データ・アナリティクス3.0 ビッグデータ超先進企業の挑戦』です。ビッグデータ時代におけるアナリティクスのあり方を論じた本で、原著"Big Data at Work"も今年2月に発売されたばかりという、真新しい一冊となります。

データ・アナリティクス3.0 ビッグデータ超先進企業の挑戦 データ・アナリティクス3.0 ビッグデータ超先進企業の挑戦
トーマス・H・ダベンポート 有限責任監査法人トーマツ デロイトアナリティクス

日経BP社 2014-05-01
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何を隠そう、翻訳は私が担当させて頂きました。一人の読者として『分析力を武器とする企業』、および姉妹編『分析力を駆使する企業』を幾度となく参照してきたので、両書の続編に当たる一冊を手がけられたというのは、何より嬉しい経験でした。

あとがきにも書かせて頂いたのですが、「ビッグデータでこんなことができる!」「ビジネスが一変する!」といった本はすでに何冊も登場しています。またデータ・サイエンティストのように、個人としてデータ分析とどう付き合っていくかという本も最近のブームとなっています(ダベンポート教授の著作でも『真実を見抜く分析力 ビジネスエリートは知っているデータ活用の基礎知識』という本が4月に出版されたばかり)。しかし本書がテーマにしているのは、あくまで「ビッグデータ時代に、組織としてアナリティクスにどう取り組むか」という点。従って、これまでのアナリティクスの歴史を押さえた上で、「ビッグデータ活用はこれまでのデータ活用と何が違うのか」という問いかけにも真正面から答えています。「ビッグデータなんてただのバズワード」「ウチの会社はブームになる前からデータ活用を手がけてきた」という方々にこそ、本書を読んで頂きたいと感じています。

ダベンポート教授は近年、ビッグデータ活用に成功している企業に対してヒヤリング調査を実施してきました。そしてこれまで既存企業の中で行われてきた、小規模な構造化データの分析を「アナリティクス1.0」、最近のネット企業やテクノロジー系スタートアップが取り組む、大規模な非構造化データ(すなわちビッグデータ)の分析を「アナリティクス2.0」と名付け、さらに両者が融合した新たなアプローチを「アナリティクス3.0」として整理。それはこれまでと明らかに異なる現象であり、分析を支える様々な要素(組織や人材、リーダーシップなど)にも変化が生じていると訴えています。

また当然のことながら、伝統ある大企業と、設立されて1年にも満たないようなスタートアップでは、ビッグデータ活用をどう導入するかという点で違いが生じるという点も指摘されています。スタートアップであれば、新しい時代に最適なシステムや組織のあり方をゼロベースで考えることができます。しかし大企業の場合、従来の日常業務を支えるレガシーシステムがあり、その存在を無視して導入を進めるわけにはいきません。その結果、「我が社はビッグデータ活用を推進している」とアピールしている企業でも、実際には実験的・限定的な取り組みや、ワンタイムのプロジェクトで終わってしまっている場合が見られます。それを乗り越え、ビッグデータとスモールデータの双方を使いこなし、日常の業務システムにアナリティクスが組み込まれているような企業こそ「アナリティクス3.0」を具現化した企業というわけです。

そんな企業あるの?と思われるかもしれませんが、本書にはGEやUPS、リンクトインといった様々なアナリティクス3.0企業が紹介されています。彼らのビッグデータ活用法は、普段から「ビッグデータでこんな驚くべき分析が!」というニュースに慣れている方々には目新しいものではないかもしれません。しかしそれを例外的な取り組みとしてではなく、日常業務として回しているという点こそ、アナリティクス3.0企業の大きな優位性となります。彼らのようになるには、何に注意する必要があるのか――それはぜひ、本書を参考にしてみて下さい。

私自身、今年2月のStrata Conference 2014、そして3月のCeBITへの参加を通じて、「ビッグデータ活用を日常化する」という意識や取り組みが高まってきているように感じています。アナリティクス3.0という呼び名で言及されるかどうかは別にして、ダベンポート教授が整理したような先進的企業のアプローチは、今後標準的な方向性として追及されるようになるでしょう。ビッグデータはブームか否か?ではなく、「ビッグデータ」という呼び名が無くなるほど普通の取り組みにするにはどうすべきか?を考える一冊として、本書が広く参照されることを願っています。

ちなみにキンドル版『データ・アナリティクス3.0』も同じく明日ダウンロード可能になりますので、キンドルで読みたい!という方もご注目下さいませ。

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