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【書評】『朝日新聞記者のネット情報活用術』

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朝日新聞出版さまより、平和博さんの『朝日新聞記者のネット情報活用術』をいただきました。ありがとうございます。というわけで、いつものように簡単にご紹介と感想を。

本書のもととなったのは、雑誌『ジャーナリズム』に掲載された連載「新人記者のためのネット取材講座」。文字通り記者として仕事をするにあたり、ネットとどのように付き合い、活用してゆくかを解説する内容でした。本書はその内容に加筆し、新聞記者だけでなく一般の社会人にとっても参考になる形で、仕事でネットを活用する上でのアドバイスがまとめられています。

あくまでも一般の人々に向けた解説という視点で書かれていますので、Googleでの検索の仕方やクラウドの概念などなど、ITmedia読者の方々にとっては初歩的過ぎると感じる部分も多いかもしれません。しかし「新人記者のための」あるいは「社会人のための」という方向性が加わることで、本書は単なる入門書に留まらない内容となっています。

例えば初歩の初歩であるGoogle検索。普通なら複数キーワードを使う、「-(マイナス)」を使うなどといった程度の解説で終わりでしょう。しかし本書で「複数キーワードで絞り込む」の次に解説されるのは、「site:」を使ったサイト内検索。例えば「go.jp」を指定することで、あるテーマについて政府がどう動いているのかを調べるといったアイデアが紹介されています。このように、Googleの使い方にいきなり「site:」で情報源を絞り込むという発想が登場するという点が、本書の性質をよく表しているのではないでしょうか。

また本書は実用書であると同時に、ネット時代の情報とは何か、自ら情報を収集・発信する意味とは何かを考える内容となっています。最近のメディアをめぐる重要な出来事、例えば昨年の「アラブの春」におけるソーシャルメディア活用や、ビン・ラディン急襲がライブツイートされた事件、そして東日本大震災をめぐる状況などにも言及されており、改めて私たちとメディアとの関係が変わりつつあることを実感できるでしょう。その中で、平さんが記者という立場で何を考え、情報の収集・確認(裏取り)・発信といった一連の作業で何を重視しているのかを知ることができる本書は、無味乾燥な解説書よりもずっと参考になることでしょう。

平さんは朝日新聞のサイト「アスパラクラブ」で「ネットはいま++」というブログを書かれています。本書の内容とも深く関わる記事が掲載されていますので、本書に興味のある方、読み終えた方は是非こちらもどうぞ。個人的には『最近新聞紙学』を非常に読みたくなってしまったのですが、どこかで再版されないかなぁ……。

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平 和博

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