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ウォール・ストリート・ジャーナルがウィキリークス型サイト「セーフハウス」を立ち上げ

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既に速報が出回っていますが、ウォール・ストリート・ジャーナル誌(WSJ)がウィキリークスのように匿名での情報提供を可能にするサイト「セーフハウス(SafeHouse)」を立ち上げたとのこと:

The Wall Street Journal Launches a WikiLeaks Competitor, SafeHouse (The Atlantic)

As WikiLeaks grew more popular -- and began its extended series of document dumps and collaborations around files presumably received from Bradley Manning -- journalists began to wonder aloud, "Why didn't we build this thing?" Indeed, in its purest form, WikiLeaks was simply another way of gathering leaks and tips, long a major part of any reporter's job. And several news outlets have been rumored to be building WikiLeaks-like portals. Al Jazeera's is even already up and running, having launched in January.

Now, about five months after WikiLeaks began releasing thousands of State Department documents, theWall Street Journal has unveiled SafeHouse, a secure uploading system for sending "newsworthy contracts, correspondence, emails, financial records or databases" to the WSJ.

ウィキリークスの人気が高まり、ブラッドリー・マニング(※ウィキリークスに機密情報を提供した元米軍兵士)から得られた情報の公開と分析が始まると、ジャーナリストたちは「なぜこんなサイトを自分たちで作ってこなかったのだろう?」と考えるようになった。実際にウィキリークスはリークや機密情報を集めるサイトなわけだが、それは長らく記者の主要な仕事とされてきたものだ。これまでにいくつかの報道機関がウィキリークス型のポータルサイト設置を計画しているとの噂が流れており、実際にアルジャジーラが同様のサイトを今年1月に開設している。

そして国務省から流出した公文書をウィキリークスが公開し始めてから5ヶ月が過ぎたいま、ウォール・ストリート・ジャーナルが新たなサイト「セーフハウス」を公開した。これは安全が確保されたアップロードシステムで、「ニュース性の高い契約書や通信文、電子メール、財務記録、データベースなど」をWSJに送ることができる。

こちらが実際の「セーフハウス」のスクリーンショット。当然ながら名前やメールアドレス、電話など全て記入しなくても、ファイルを添付して送信することができるようになっています:

safehouse

ただ無記名だから情報提供者の匿名性が保たれるわけではなく、データの暗号化など技術的な面でも配慮がなされなければ、すぐに情報提供者の安全が脅かされることになります。この点について、ウィキリークスにボランティアとして参加しているセキュリティ・リサーチャーのJacob Appelbaum氏(@ioerror)が、Twitter上でセーフハウスには問題があることを指摘しています。まあウィキリークス関係者の意見なので鵜呑みにするわけにはいきませんが、彼らには先行者としてリークサイトを運営してきた知見がありますから、WSJの気づいていない問題点が残されている可能性は否定できないでしょう。

そして情報提供者にとっては、機密情報をアップロードして全てが終わるのではなく、その情報がどのような形でリークされるのかが重要になります。実はリークサイトが裏側で政府とつながっていて、秘密裏に口封じされてしまう……などという陰謀論めいた不安はさておくとしても、情報の分析が不十分で、社会に対してさしたる影響のないまま終わってしまうという恐れは十分にあるでしょう。実際に以前ご紹介した本『ウィキリークス アサンジの戦争』では、ウィキリークスがマニング氏から入手した情報をそのまま公開するのではなく、ニューヨークタイムズ紙など実力のある報道機関と協力・情報を分析して公開することで、リークを最大限に活かす努力が行われていた様子が明らかにされています。

仮にWSJがこのような分析・公開ステップで何らかのミスを犯すようであれば、機密情報を手に持つ人々はやはりウィキリークスを頼るようになるでしょう。セーフハウス、あるいはその他のウィキリークス競合サイトが成功するか否かは、今後彼らが入手した情報をどれだけ適切に扱えるかどうかで決まってくるはずです。

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