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アイデアを連続体として捉えるということ

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先日ご紹介した、スティーブン・ジョンソンの新作"Where Good Ideas Come From: The Natural History of Innovation"。昨夜本書について改めて考える機会があり、そのときに感じたことをもう少しだけ。

先日のエントリでも述べたように、本書のテーマは「良いアイデアはいかにして生まれるのか」。これは古くから議論が繰り返されてきた問題であり、それこそ山のように類書が出版されているわけですが、本書がユニークなのは「アイデア」という存在そのものの捉え方なのではないかと感じています。

私たちは普段、アイデアを芸術作品のようなものとして扱っているのではないでしょうか。固体で、はっきりとした姿があって、制作者が簡単に特定できるもの。だからこそ著作権といった概念が存在し、「そのアイデアは誰に帰属するのか」が重要な要素として度々議論になるわけですね。

しかし実際には芸術作品ですら、それが誕生した理由をたった一人の芸術家の存在で説明することはできません。例えばゴッホが日本の浮世絵から影響を受けていたのは有名な話ですし、ビートルズがインド音楽の要素を取り入れた楽曲を作っていたり、旧約聖書をベースにしたビデオゲームが作られたりと、無数の事例を挙げることができます。そしてそうした作品たちが、後世の作品にも受け継がれ、影響を与えて行く。そう考えると、アイデアは明確な境界線で分けることのできる個体というよりも、あいまいな輪郭しか持たず、必ず別のアイデアとつながっている連続体として捉えることができると思います。

"Where Good Ideas Come From"で紹介されるイノベーション事例からは、そんな「連続体」という要素を強く感じることができます。あるアイデアは次のアイデアのベースとなり、あるいは素材として使われ、時には思いもよらない使い方をされながら受け継がれてゆく。だからこそ、オープンなネットワークの存在がイノベーションの誕生にとって大きなプラスとなる--本書が導き出す結論のいくつかは、著作権の概念がピッタリとはまるような、旧来型のアイデアの捉え方からは決して導き出せないものと言えるでしょう。

以前MITの石井裕教授(@ishii_mit)が、情報のフローを途絶えさせないことが重要であるとして、メジャーなウェブサービス同士の情報のつながり(ソーシャルブックマークのデータをTwitterに飛ばすことができるなど)を図式化し、情報の出先がないサービスを批判されていました。本書を読んでその光景をふと思い出したのですが、この発想も「連続体としてのアイデア」という捉え方から見れば至極当然なものと言えるのではないでしょうか。またこの見立てが正しいとすれば、情報が自由につながり、流れてゆく現代のウェブ環境は、まさしく"Where Good Ideas Come From"(良いアイデアが生まれる場所)の1つと評価することができるかもしれません。

Where Good Ideas Come From: The Natural History of Innovation Where Good Ideas Come From: The Natural History of Innovation
Steven Johnson

Riverhead Hardcover 2010-10-05
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