「未開の地」としての日本農業
雑誌『週刊ダイヤモンド』の2009年2/28号に、「35ジャンル別人気ブログリスト」なるものが掲載されているのですが、このシロクマ日報も「ビジネス」ならびに「インターネット・コンピュータ」ジャンルのブログの1つとして選んでいただきました(さらに嬉しいことに、個人ブログの方も入れていただいています)。超個人的意見垂れ流しのブログで恐縮なのですが、ご期待に添えるように(?)改めて頑張りたいと思います。
で、その『週刊ダイヤモンド』最新号の特集は「農業」。今月は雑誌『BRUTUS』でも農業特集が組まれたばかりでしたが、ご存知の通り、このところ食の安全や雇用問題などといった様々な側面から農業に注目が集まっています。もちろん日本の農業は様々な問題を抱えているわけですが、ダイヤモンドの特集では「農業がニッポンを救う」として、新時代の農業が期待とともに紹介されています。
いやいや、そうは言っても農業は難しい。部外者が入ってきて成功を収めるなどと期待しない方が良いのではないか――確かに勝手なことは言えないのですが、以下のような話を聞いてどう思われるでしょうか。イトーヨーカ堂が農業に乗り出して誕生した「セブンファーム」での事例です:
一方で、ヨーカ堂は消費者ニーズをつかむのはお手のものだ。
セブンファームで生産に取り組んだところ、見た目のよくないダイコンができてしまった。多雨という天候不順に加え、農薬を抑え気味にしたことで、ダイコンに穴が開いてしまったのだ。通常、市場には出ない規格外の野菜は生産量の10%というが、このときは20%に上った。
そのダイコンを、「売れないと思い家の外に置いておいたら、戸井さんが見つけて店で売るって言い出した」(津田氏)。
ヨーカ堂は昨年8月に、東京・西新井にディスカウント業態の「ザ・プライス」を開業。まずはそこで、「規格外野菜として格安で販売したら、30分で150本売れた」(戸井氏)。
そこで、今度はヨーカ堂の松戸店で、普通のダイコン(1本148円)の隣に、説明付きでこのダイコンを1本59円で置いて並行販売したところ、「両方とも売れた」(同)という。
「どんな商品がどれくらいなら売れるか」を掴んで、適切な形で売る。そしてそのために消費者と接点を持ったり、市場からのフィードバックを追い求める。考えてみれば当然の話ですし、普通の企業なら当然行っているか、そうしようと努力していることでしょう。逆に上記のような話が新しい事例として取り上げられてしまうこと事態、農業の世界でいかに改革が遅れているかを示しているのではないでしょうか。
実際、誤解を恐れずに言えば、今回の特集で取り上げられている事例の多くは「どこか他の業界で既にやっているような話」です。「農協の方針に従わずに正しいと思うことをした」「規制緩和によってこれまで不可能だったことができるようになった」などといったケースばかりで、「Google がオンラインで使える、無料の○○をリリースした」的な驚きはさほどありません。逆にそれこそが、日本の農業が将来性を有していることの現れではないかとダイヤモンドは主張しています:
前述のとおり、農業がこれまで儲からない産業だったのは、じつは部外者の参入がない“未開の地”であったからだ。その意味で、まだまだ多大が可能性を秘めた農業。この活性化がそのまま日本の成長につながる。
農業は日本を救う。
もちろん農業には既得権益を持つ人々が大勢存在し、彼らの抵抗を乗り越えなければいけません。従って上の引用は若干楽観的に過ぎるかもしれませんが、こんな言葉を信じて農業に関わってみるのも面白いのではないでしょうか。僕らが当たり前と思っているやり方でも、農業に応用することで大きな価値を生み出すかもしれません。