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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

「よき食べ手」

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まずは私信なのですが、おかげさまで昨日、妻が無事に退院しました。まだ本調子ではありませんが、ひとまず自宅に戻り、日常生活再開です。お言葉をかけていただいた方々、本当にありがとうございました。僕が言えた台詞ではないのですが、声を大にして言いたいと思います。「みなさん、どんなに忙しくても身体への気配りを!」

さてさて、病院で付き添いをしている間も育児ノウハウが急速に陳腐化している件とか、テレビ(地上波)は最近の患者の暇つぶしには力不足だとか、ウチのウサギを預けた兎専用ペットホテルの対応が素晴らしかったとか、いろいろなネタというか発見があったのですが、それはまた別の機会にするとして。今日はたまたま駅の売店で買った、雑誌『BRUTUS』最新号からの話を。

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BRUTUS 2009年2月15日号の特集は「農業」。佐藤可士和さんやナガオカケンメイさんなど、著名なクリエーター達の間でも農業への関心が高まっているという話や、様々な職業から農業へ転身した人々の話、デザイン性の高い農作業具の紹介などが掲載されています。最近若い人々に農業に関心を持ってもらおうという動きが盛んになっていますが、今回の特集はスマートかつオシャレで、「面白そうだな」と感じる方も多いのではないでしょうか(もちろん「面白そう」だけで上手くいってしまうほど農業は楽ではありませんが、何の興味も持たない状態から抜け出すだけでも意味があると思います)。

で、その中にこんな印象的な言葉が登場します:

よき作物の作り手は、よき食べ手によってのみ支えられるもの

これは山形・庄内で絶滅の危機に瀕している野菜を救おうとしている、江頭宏昌山形大学教授と奥田政行シェフを紹介する記事の中で登場する言葉。同地域は在来野菜の多い場所なのだそうですが、作りにくい・収穫が安定しないなどの理由から絶滅寸前となっており、その復活のために様々な取り組みが行われているのだとか。で、重要なのは供給サイドでの活動だけでなく、需要サイドの取り組みにも焦点が当てられている点。注目されなくなった在来野菜に再び目を向けてもらうため、今のニーズに合う食べ方を奥田シェフが考え、ご自身のお店で出したり料理教室を開いて人々にアピールするといったことが行われているのだそうです。

良いものを食べたいと思う人が増えれば、それを作る人も増える。考えてみれば当然の話ですが、僕らはあまりにも「悪い食べ手」になってしまっているのではないでしょうか。食べ物を栄養や安全性よりも、安さや味の濃さで選んだり、日持ちのよさや加工のしやすさ・見栄えのよさに目が向いたり、等々。あまり説教臭いことを言うつもりはありませんが、インスタント製品や加工品、冷凍食品ばかりを食べている生活というのは、間接的に日本の農業の破壊に貢献してしまっているのかもしれません。

しかし逆に考えれば、「よき食べ手」になろうと心がけることによって、自分の健康だけでなく農業も守っていくことにつながるはずです。「若者よ、農業を目指せ!」と訴えても実際の行動に移す人はごく少数だと思いますが(だからといってそう訴えることが無意味だと言うつもりはありませんよ)、「毎日の食事、ちょっと考えてみない?」と訴えることでも、日本の食糧事情をバランスさせることに貢献できるのではないでしょうか。

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