ネットにシフトするCNN
「新聞社はネット時代にどこまで対応できるのか」という話が続いていましたが、変化しなければいけないメディアは新聞だけではありません。言うまでもなく、テレビにとってもネットにどう対応するかという点は重要なテーマでしょう。日本のテレビ局はなかなか苦戦しているようですが、「世界初のニュース専用ケーブルテレビ」として有名なCNNが、急速にウェブにシフトしているそうです:
■ Can CNN, the Go-to Site, Get You to Stay? (New York Times)
CNNの現状をレポートしたものですが、なかなか興味深い話が掲載されています。簡単に箇条書きにしてしまうと、こんな感じ:
- ページビューベースで考えた場合、CNN.com は昨年世界で第1位のニュースサイトだった(1ヶ月に約17億ページビュー)。テレビの視聴率では Fox News に及ばないが、テレビ局の人気=ネット上の人気ではない。
- CNNにとって、テレビ部門の収入は依然として重要。しかしウェブサイトからの収入が急速に成長しており、しかもウェブ部門はテレビ部門よりコストがかからない。将来的には、ウェブからの収入がテレビを抜くと予想している。
- しかし現在の成功が、変革を恐れることにつながってはならないと考えており、次々に新機軸を打ち出している。
- CNN.com の本部はアトランタにあり、125名のスタッフが働いている。サイト専属のレポーターが増加中であり、中には2名のピュリッツアー賞受賞者も含まれている。
- ニュースの優先順位をどう付けるかといった点は、CNNの他部門と連携しながら行われる。以前は他部門との連携が少なく、例えばテレビ部門からテレビ用に編集された素材を受け取るなどということもあった。しかし体制が一新され、異なるプラットフォーム間の信頼が形成されるようになった。
- CNNにとってテレビのゴールデンタイムは午後8時から午後11時までだが、「ウェブ上のゴールデンタイム」は午前8時から午後4時。この時間帯に6個から7個のトップストーリーが用意され、短時間に入れ替わる。
ちょっと長くなりましたが、箇条書きに含めなかった話からも、CNNがウェブサイトを本気で成功させようと努力している姿勢が感じられます。特に注目すべきは、ウェブ部門の位置付けでしょう。先日の New York Times 社内の話でも、技術者がジャーナリストと対等の関係を結んでいる姿が描かれていましたが、CNNでも他のプラットフォーム(特にテレビ)とウェブが対等に置かれているようです。当然そこまで至るにはかなり苦労があったようですが(ちなみにCNNのサイトがオープンしたのは1995年)、現在ではウェブに一番早くニュースが流れるということも増えたとのこと。
あくまで僕が知りうる限りの話ですが、外部から見ていると、まだまだ日本の新聞社やテレビ局は自社サイトを「下の存在」と見ているように感じます。盛り上がっているのは専門の部署内だけで、現場レベルではCNNのような連携が図れていなかったり、あるいはトップが重要性を本当に認識していなかったり。「本体に比べれば、微々たる収益しか上げていないのだから当然」と言われてしまうかもしれませんが、だからといっていつまでも下に位置付けていては、決してウェブ部門が浮上することはないでしょう。海外の新聞社やテレビ局は、収益の急速な悪化のためにやむやくネットにシフトしているという側面もありますが、だとするとまだ比較的ダメージの少ない日本の旧メディアは、このまま「自らが主導権を握る形でのネット化」のタイミングを逃してしまうのかもしれません。
ちなみに、記事内でも指摘されていた「変革」の例として、こんな取り組みを挙げておきましょう:
CNNが Facebook と提携して行おうとしているイベント。CNN.com Live でオバマ大統領就任式を見ながら、Facebook のステータスをアップデートして、友人達とオンライン上で意見交換しようというものです(Facebook のアカウントをお持ちの方は、こちらで詳細を確認できます)。かなり見かけは違いますが、意図するところはニコニコ動画っぽいと言ったら怒られるでしょうか?ともあれオバマ大統領の就任式、そして CNN.com の今後にも注目が必要ですね。