オルタナティブ・ブログ > シロクマ日報 >

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

コミュニティでジャーナリストを雇う、という発想

»

New York Times の11月度の広告収入が激減、オンライン広告収入も減少に転じたとかで、Techmeme 上で話題になっていますが、日本でも従来型メディアが低迷しているのはご存知の通り。その原因の1つに「情報は無料」という態度がネットを中心に定着しつつあることが挙げられるわけですが、それと真っ向から対立するような「寄付型ジャーナリズム」とでも呼ぶべきモデルが試されていることが報じられています:

Online Journalism: Donations Accepted (BusinessWeek)

「情報は無料」と考える読者に対して、従来有効だったのは広告モデルでした。しかし景気後退により広告モデルの不安定さが露呈し、代わって登場したモデルの1つが「寄付」。文字通り自分たちの活動の意義を理解してもらい、それに対して金銭的な支援をしてもらうわけですね。例えば Spot.Us というサイト(以前 Polar Bear Blog でも取り上げたことがありました)では、様々なトピック(環境問題や政治的課題など)を提示してそれに対する寄付を募り、一定額以上の資金が集まったところで調査をスタート・記事にして読者に配信するというモデルを採用しています。テーマというプロジェクト単位で記事が作成されるわけですから、これは「プロジェクト型ジャーナリズム」とでも呼べるでしょうか。

そして上記の記事でもう1つ紹介されているのが、記事単位ではなく「記者単位で寄付しよう」というアイデア。実際にミネソタ州のある町では、1人の女性記者を雇ってローカルニュースをカバーするブログ(Locally Grown)を開始し、彼女の給与を住民からの寄付で補うことが計画されているそうです。またこういった方式を"Representative Journalism(代表制ジャーナリズム、とでも訳しましょうか)"と名付け、世間に広めようと活動している団体も存在しているとか。個人的には、テーマ別だとどうしても自分の関心のない・自分が気づいていない問題が無視されてしまいますから、信頼できる記者に寄付をするという発想の方が有効ではないかと感じます。

この「個人単位で寄付をする」という発想、ネット上のコミュニティとも相性が良いのではないでしょうか。以前から「投げ銭」といった形でコンテンツ作成者に対する少額寄付を可能にする仕組みが試されてきましたし、佐々木俊尚さんのようにブログとは別に有料メーリングリストを立ち上げる動きもあります。例えばMixi上のコミュニティ参加者、あるいはオルタナティブ・ブロガー数名が共通して興味のある分野を深掘りするため、岡田有花記者に出資して数日間拘束する、あるいはオフ時間を割いてもらうなどといった依頼が簡単にできるようになったら面白いのではないでしょうか。

これまでは「タダでコピーが取れる!」「タダで写真が現像できる!」など、無料(+広告)化モデルの斬新さに注目が集まっていました。しかし2009年は、「無料で当然」と思われていたものからいかにお金を集めるのか、有料化モデルの斬新さが競われる一年になるかもしれません。

Comment(0)