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「私たちは仕事を失うかもしれない」

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今日はようやく、午後だけですが CEATEC に足を運ぶことができました(会社のみなさんごめんなさい)。コンパニオンさんの写真を撮るのも何だったので、会場で見つけた佐世保バーガーちゃん(たぶん)を激写!

SANY0592

それはさておき、今日を選んだのには理由があって、次のパネルディスカッションを聴くためでした:

パネルディスカッション「モバイルコンピューティングが拓く新しい世界」

インテルにマイクロソフト、そしてNEC・SONY・東芝・パナソニック・富士通の関係者が集まってモバイルコンピューティングを語るというのですから、見逃せません。恐らく各社が自分をアピールしつつも、ネットブックの脅威というテーマについて考えを語ってくれる、に違いありません。

……と、思いきや。参加した各社は、示し合わせたように「高機能・高性能なノートPCを推進していること」をアピールしていました。はっきりとネットブックに対して考えを語ったのは、自社もNB100を持つ東芝のみで、しかも冒頭の各社別プレゼン中にスライド1枚で言及しただけ。通常の製品ラインナップを解説した後で、一番最後での紹介でした。また司会(日経BP社)もネットブックの話題については、意識的にメーカーに話を振るのを避けているようで、関連する質問はインテックとマイクロソフトが中心に回答するという状況。

しかし何というか、「参加しないことで、逆に存在感を増す人」っていますよね。それと同じように、話題が避けられることで余計にネットブックが意識されている、そんな風にも感じたパネルディスカッションでした。そんな中、ソニーのVAIO事業本部本部長・石田佳久氏がポロッと漏らしたのが、タイトルにも引用した次の一言:

「(クラウドコンピューティングのようなものが進むと)ここにいる私たちは、仕事を失うことになるかもしれない」

処理はサーバ側で行い、それを高速ワイヤレス通信で端末とやり取りできれば、端末はどんなものでも良くなる。そうしたら、高機能な端末を買ってもらうことで生き残っている日本のメーカーは、たちまちシェアを失ってしまうだろう……言葉を補えば、こんなところでしょうか。

さらに石田氏は、東芝が新しい dynabook でPRしていたAV・画像処理能力についても「サーバ側のCPUにやらせれば同じこと」と一刀両断。またはっきりとは言及しませんでしたが、NECがPRしていたリモートスクリーンテクノロジー(自宅のPCを外部から作動させ、処理結果を手元にある端末で表示させる技術)についても、「別に自宅のコンピュータが使えるようにならなくても、Google のような企業がウェブサービス提供してくれれば同じじゃね?」と観客に感じさせるような発言でした。ある意味で、この言葉は今回のパネルディスカッションの内容をすべて吹き飛ばしてしまうものだったでしょう。

もちろんSONYの石田氏だけがこの危険に気づいていた、のではなく、集まった各社のトップはそれに気付きながらあえて「これまでの延長線で事業が進むという将来像」を描いたのかもしれません。その意味で、石田氏だけが無邪気だったのだ……という可能性を信じたいですが、それでもCEATECという場で、各社がネットブックやクラウドコンピューティングの脅威についてどう考えているのか?を聴いてみたかったように感じます。1年後の2009年秋は、いよいよWiMAXサービスも登場し、端末だけでなくネットワークインフラもモバイルコンピューティングへの対応が本格化しているはず。そこでまったく新しい将来像を描けている企業が出てくるかどうか、注目したいと思います。

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