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朝日新聞が newsing と提携する日

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ジャーナリズムはこれまで、新聞やテレビなどの大手メディアによって担われてきました。ならば「市民ジャーナリズム」時代のニュース配信にも、大手メディアは一日の長がある……と考えるのは、やはり難しいようです。米国の3大ネットワークの1つ、CBS もこんなミスを犯していました:

CBS Gets a Rude Lesson in Citizen Journalism (AdAge)

CNN を始めとして、最近既存メディアが CGM 的要素を取り入れる動きが出てきています。CBS も今年4月、CBSEyeMobile というサイトをオープンさせ、一般視聴者から写真やビデオの投稿を受け付けるようになりました。さらにブログ等に貼り付けられるウィジェット(上に貼ってあるものです)、iPhone からの投稿を可能にする無料アプリケーションも発表し、これからますます多くのニュース投稿を促そうとした矢先でした。

CBSEyemobile※クリックで拡大しますが、アダルト画像なのでご注意を

こんなアダルト系の内容が次々に投稿され、慌てて削除するという騒ぎが起きてしまったとのこと。スパム(つまりアダルトサイトへ誘導するためのフック)だったのか、はたまた愉快犯だったのかは分かりませんが、CGM系サイトを運営されている方なら予測して当然の事態でしょう。しかし CBS はモデレーターを置いていたにも関わらず、事前に防ぐことができなかったようです。

"We've been posting user-generated content since April, and this is the first known incident along these lines," a CBS spokesman said. "It was removed promptly and we will redouble our efforts in this regard."

CBSのスポークスマンは次のようにコメントしている。「私たちは4月からUGC(User Generated Contents)を実施しているが、このような事態は初めてだ。(投稿された不適切なコンテンツ)は速やかに削除されており、防止のための努力を倍増する予定である。」

ただ倍増すると言っても、量的だけでなく質的な改善も必要でしょう。今回のようなアダルトコンテンツであれば、ある程度客観的なガイドラインを設定して削除することが可能です。しかし微妙な内容――例えば、以前話題となった「ケータイでポップコーン」動画のように、広告であることを隠して投稿されるものや、政治的な論争を招くものなど、掲載すべきか否かを即座に判断できないものもあります。こうしたコンテンツに適切に対応できるようになるためには、いくら過去にジャーナリズムを担ってきた経験があるメディアといえど、ある程度時間をかけて経験を積むしかないのではないでしょうか。彼らにとっても、「ユーザーと直接対話する」というのは未知の体験のはずです。

もしくは、CGMサイトの運営経験のあるベンチャー企業と提携して、彼らのノウハウを活用するという手もあるでしょう。日本でソーシャルニュース的なサイトを運営されている方々とお話しすると、彼らが試行錯誤を繰り返しながらノウハウを蓄積されていることがよく分かります。もちろん彼らも完璧ではありませんが、少なくともその知見を頼ることで、1つの失敗でサイト閉鎖の危機を招くというリスクを減らせるのではないでしょうか。

そこでこの記事のタイトルとなるわけですが……仮に日本の新聞系サイトが危機感を高め、市民ジャーナリズム的な要素を取り入れるようになった場合、「朝日新聞が newsing と提携」みたいな話になったら面白いかなと思います。しかし某新聞社が「ブロガーのアドバイスに耳を傾ける」的な発言をしていたのに、いまではネットから大きな攻撃をくらっていることを考えると、実現の可能性は低いのかなぁと悲観したりして。

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