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Chrome が仕掛ける「軍拡競争」

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Chrome ネタでもう1つ。華々しく登場した Google 製ウェブブラウザ"Chrome"ですが、「セキュリティ/プライバシー上の問題がある」「Firefox のようにアドオンの充実が必要」などの理由から、シェアをどこまで伸ばせるかについては懐疑的な見方が少なくありません。では Chrome は無意味なのか――そうとは限らず、「ブラウザの高速化競争を招くことが Google の狙いではないか?」という意見が出てきています:

グーグルが「Chrome」を作った理由--高速ブラウジングがもたらす利益 (CNET Japan)

Googleの共同設立者であるSergey Brin氏は、「人々がインターネットをたくさん利用し、さらに素早く簡単に利用できるようになれば、Googleの事業はうまくいく」と述べた。

 少数の新しもの好き以外の人たちやウェブ開発者を説得してChromeを導入させること、競合ブラウザの開発ペースに合わせること、Googleを怖がる人たちにGoogleがまたひとつコンピュータの重要なアプリケーションに関わったが問題ないと安心させることなど、GoogleはChromeに関して多くの課題に直面している。しかし、Googleの影響は強力であり、パフォーマンスについて語り、クロムめっきのサーベルについて話しまくるだけで、Googleのウェブアプリケーションの基本方針を進展させるのには十分だろう。

(中略)

さらに、Brin氏は、たとえChromeが競合ブラウザの開発者の競争心をあおる以外の影響を及ぼさなかったとしても、Googleにはメリットがあると言い添えた。「Chromeの発表により、Internet Explorer 9がずっと高速化されれば、Googleにとっては成功と見なされる」(Brin氏)

たとえ Chrome がシェアを伸ばせなかったとしても、「あの Google がブラウザを開発した」と注目を集めることで、「ウェブの閲覧はもっと速くできる」「ウェブアプリケーションでもストレスを感じないぐらい速くなる」という風に人々の意識を煽ることができる――それに応じる形で他のブラウザが速くなれば、人々はよりネット上で行動するようになり、Google にとっては万々歳というわけですね。以前紹介した Nick Carr 氏の意見に近いですが、そのプロセスがちょっと異なる、という感じでしょうか。

一言でウェブブラウザと言っても、そこに人々が求めるものは千差万別でしょう。ある人はウィルスやフィッシングの被害を食い止めてくれるようなセキュリティを望み、別の人は Firefox のように様々な追加機能が揃っていることを、さらに別の人は操作性が良いことを求める――これらの意見に全て対応していては、「高速化」という面に大きな開発リソースが割かれる可能性は低くなります。さらに多くの人々にとっては、まだまだウェブは「表示に時間がかかるもの」でしょうから、多少スピードが遅くてもブラウザを責めることは少ないはず。そんな状況を変えるために、Google は「速さ」という要素が全面に打ち出されたブラウザ・Chrome を発表したのだ、という推測は確かに納得できるものです。

まぁ推測は推測に過ぎないので、どこまで Google がこんなシナリオを考えているかは分かりませんが。とにかく「高速化」という方向でブラウザの軍拡競争が起きれば、どう転んでも Google にはおいしい状況のはず。その意味で、Chrome の評価はそれ単独ではなく、今後ブラウザというものに人々がどう接するようになるか――さらに言えば、ウェブアプリケーションがどう使われるようになるか、という面まで含めて考えなければいけないのかもしれませんね。

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