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CEOが顧客に教えを請う時代

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IBM が世界各国の CEO 1,130名に直接インタビューを行い、彼らが抱える戦略的課題を調査した報告書"IBM Global CEO Study 2008"が発表されたとのことで、昨夜そのブロガー向け発表会に出席してきました。残念ながら日本版は制作中で、内容のサマリーをご報告いただいただけなのですが、なかなか興味深い内容となっています。以下のリンク先に簡単にまとめられていますので、興味のある方はご確認下さい:

抜本的なイノベーションが必要と考えるCEO、日本は96% −世界の主要企業のCEO 1130名に戦略的課題を調査− (IBM プレスリリース)

会社経営のトップに立つ人物が、いま何を課題だと考えているのか――普段私たちがニュース等で目にするのは、「客観的に見て世界はこう動いている(はず)」という主張なわけですが、この報告書では「CEO の目には世界はどう写っているのか」が検証されています。そのため環境問題や格差の問題など、私たちにとっては重要な問題だと思われるものが大きく取り上げていられなかったりして、あれっと感じる面があるかもしれません。その意味で、この報告書を読む前に(読んだ後でも良いのですが)、グローバル経済や政治・社会の動きを解説する書籍・雑誌を読み、企業がどんな環境に置かれているのかを把握しておく必要があると思います。

一方で、思ったより関心を寄せているのだなと感じる点もありました。個人的に最も意外だったのは、「ネットワーク顧客層」に対する反応。ネットワーク顧客層とは、「豊富な知識を持ち、ネットワークでつながった顧客層」という定義が与えられているのですが、ブログや SNS などソーシャル技術を活用して連携・知識を持つに至った消費者たちのことでしょう(私たちにとってはお馴染みの概念ですね)。で、彼らの出現をどう捉えるか?という問いに対し、76%の CEO が「機会である」と答えたとのこと。逆に「脅威である」と答えたのは10%に過ぎなかったそうです。

この「ネットワーク顧客層」という言葉を聞いて、最近読んだ"Groundswell: Winning in a World Transformed by Social Technologies"という本を連想しました。Polar Bear Blog でも書評を書いたのですが、これは米国の Forrester Research のアナリスト達が出版した本で、ブログや SNS 等のソーシャル技術が可能にした"groundswell"(集団としての消費者の力、またその力が高まりつつある状況)にどう対応すれば良いか?がテーマとなっています。まさしく Global CEO Study で経営者たちが好機と捉えていた状況ですが、groundswell と付き合うには従来の姿勢を一変させる必要があり、一筋縄では新しい時代を生き残ることはできないと主張されています。76%もの CEO が「機会である」と捉えたのは果たして良いことなのか。実は彼らは、従来と同じ手法で顧客をコントロールできると高を括っているだけではないのか。逆に「脅威である」と捉えた10%の方が、自社の戦略や組織を大改革して groundswell 時代に臨むことができるのではないか――詳しいアンケート結果を見なければ何とも言えませんが、思わず考え込んでしまいました。

CEO といえども、一従業員として顧客に教えを請わなければならない時代。極端な話をすれば、"Global CEO Study"よりも"Global People Study"の方が価値のある時代が到来するぐらい、状況は変化するのかもしれません。その際に環境変化を正しく捉え、適切な対応ができるように、またコンサルタントとしてお客様に正しい道を指し示すことができるようになっていなければならないと感じた次第です。

Comment(4)

コメント

小林様、昨日はご挨拶もそこそこに勝手なことを申し上げて失礼しました。本稿を私のところから勝手ながらリンクをさせていただきました。もし何かございましたらご一報くださいませ。

IBM 広報 栗原

先日は、遅い時間にもかかわらず、ご参加いただきありがとうございました。会の終わりも遅くなり申し訳ありませんでした。皆様、議論が白熱されたので、途中で止めるタイミングがつくれず・・・。
小林様のようなコンサルタントの方には、どのようにご興味を持っていただけるか不安でしたが、何かの時のお考えの一助となっていただければ幸いです。
またの機会にもぜひご参加いただけますよう、お待ちしております。

正木 澄夫

CEOといえども全能の神ではない。顧客に教えを請う―と言っても経営の責任者・リーダーたる面目から競馬の勝負占とは異なる。ときに別途の決断を迫られることもあろう。上手に顧客の思惑を吸収しCEO自身の栄養にしているかどうかであろう。教える?側の顧客も必要十分な綜合分析ができているならば最早予言者だ。今様に言えば時の空気をいかに読めているかであり、しかも適正適切に加えて大胆細心が求められる衆人環視の檻にいる哀しい動物に過ぎない。

アキヒト

みなさま、コメントありがとうございます。

> NewTama さま

こちらこそ簡単なご挨拶になってしまい、失礼いたしました。今後ともよろしくお願い致します。

> IBM 広報 栗原さま

今回はお招きいただき、誠にありがとうございました。この"CEO Study 2008"は様々な面から語れるレポートですので、ブロガーに論じてもらうというのは有効なPR法ではないか、と思います。今後も同じような取り組みが行われることを、勝手ながら期待しております。

> 正木 澄夫さま

「CEOとはいえ神ではない」という点に同意します。いずれにしても、謙虚な姿勢で臨むことが大切なのでしょうね。最近は謙虚ではなく、検挙されてしまう経営者が後を絶たないわけですが・・・。

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