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レジ袋という生け贄

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スーパーなどでレジ袋を有料化する動きが広がっています。買い物袋を持参してもらい、レジ袋がゴミとなってしまうことを防ぐ狙いがあることはご存知の通り。最近はそれ以上に、買い物袋が「エコバッグ」という名前で呼ばれることがあるように、環境保護活動のシンボルのような活動になっていますよね。

今朝の朝日新聞「私の視点」コーナーは、この「レジ袋有料化」がテーマだったのですが、神戸山手大学の中野加都子教授が面白い視点を論じられています。以下、引用です:

関西の2市計約420世帯を対象にアンケートをしたことがある。持ち帰ったレジ袋をどうしているのかを尋ねた(複数回答可)。「台所の生ごみを入れる袋に」が83%、「ごみ箱の内袋に」が80%、「便利な袋として使用」が43%、「利用しないで捨てている」は0.8%、大半がリユース(再利用)しているのだ。

確かに自分のことを考えても、レジ袋をそのまま捨ててしまうことはありません。上記のような使用法に加え、犬を飼っていた時は散歩の際にフンを回収する袋として、娘がオムツをつけていた時は使用済みオムツを入れる袋としてなど、さまざまな再利用をしていました。

レジ袋の利用法の「1つ」である「買った物を持ち帰る」という点は、エコバッグで代替が可能でしょう。しかしそれ以外の利用法はどうなるのでしょうか。記事はこう続きます:

家庭からレジ袋がなくなったらどうするのか尋ねると、「小さなゴミ袋を購入する」が60%、「新聞やチラシを利用」「ごみ箱の内袋をやめる」などの回答はほとんどなかった。

(中略)

国や自治体は、レジ袋が減ればその分ごみが減り、地球温暖化の原因である二酸化炭素も減ると宣伝する。そうだろうか。レジ袋の代わりに新しいゴミ袋を使えば、ごみも二酸化炭素も排出量は変わらないかもしれない。現に有料化した店では、ごみ袋より安いレジ袋を大量に購入する現象があったと聞く。

仮に「買った物を持ち帰る」という以外の面で「エコバッグ」のような代替が進まなければ、ゴミ減量は進まない。逆に「レジ袋さえ無くせばゴミ問題は解決」というような風潮が広まるのは、現実から目をそらすことになるのではないか――もしかしたらレジ袋は、「生け贄」として使われようとしているのかもしれません。

もちろん「だからレジ袋を有料化すべきではない」と言いたいのではありません。少しでもゴミ減量につながるのであれば、エコバッグへの転換を進めるべきでしょう。ただしレジ袋を有料化して終わり、ではなく、その影響を把握して対策を打たなければ、何の解決にもならないばかりか逆効果を招きかねないということを理解すべきだと思います。

こういった「目立つ現象にのみ目を捕らわれて、それを無くすことが問題のすべてであるように勘違いしてしまう」ということは、何もレジ袋の問題に限った話ではないと思います。生け贄を捧げることに間違った労力を費やしていないか、普段から気をつける必要があるのでしょうね。

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