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マナー違反と言う前に

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昨日、6月29日(日)付けの朝日新聞「天声人語」欄に、ちょっと引っかかる内容がありました。クラシックコンサートにおける、いわゆる「フライング拍手」の問題についてです:

演奏後の拍手はときに、クラシックコンサートの味わいを左右する。まだ音が残っているのに手を打ったり、掛け声を飛ばしたり。これをされると余韻は消し飛ぶ。以前から言われているのに、この手の「フライング拍手」は相変わらず多いようだ。

(中略)

最後の音が消えたあとの静寂は演奏の一部なのだろう。「徐々に、次第に夜が明けていくように始まる拍手は感動的」だと、オーボエ奏者の茂木大輔さんは近著の『拍手のルール』で言う。そして、静寂を壊すフライングには「傍若無人」と手きびしい。

という引用があり、最後には「マナーを心がけよう」という呼びかけで終わります。

確かにクラシック音楽のコンサートでは、(少なくとも現代において主流になっているのは)演奏中は静寂を守るのがルールになっています。ロックの野外フェスのように、アーティストと観客が一体となって盛り上がるという類のものではありません。他の観客、そして奏者のために音を立てないように気をつけること。それはマナーとして配慮されるべきだと思います。

しかしマナーについて、頭から厳しく非難するのもどうでしょうか?クラシックファンの方には申し訳ありませんが、僕のようにたまにしか会場に足を運ばない者から言わせていただくと、クラシックコンサートは非常に緊張する場所です。途中でセキをしそうになったらどうしよう、具合が悪くなったらどうしよう、足を組み替えるときに席が軋んだらどうしよう。そしてフライング拍手に関して言えば、どのタイミングで拍手をすれば、いわゆる「クラオタ(クラシックオタクの意味です――失礼)」の方々にお許しをいただけるのだろう、等々。そんなの気にしなければ、と言われてしまうかもしれませんが、終了後に「隣の席のヤツがさぁ!」ともの凄い剣幕で怒っていらっしゃる方を見かけることがあるので、なかなか怖いのです。その結果、「なんだか殺伐としてるし、チケット代もバカにならないし、わざわざコンサートに行かなくてもいっか」となります。

ご存知の通り、マンガ『のだめカンタービレ』などの影響で、近年クラシックに再び注目が集まっていると言われます。新しくファンになった(と言うより「ファンになってくれそうな」)人々がコンサートに来ているのですから、マナー違反があって当然でしょう。誰も教えてくれないのに、いきなり「ふざけんな、マナーを守れ!」というのでは可哀想すぎます。せっかく市場が大きくなって、クラシック音楽がさらに盛り上がるチャンスをみすみす潰してしまうようなものではないでしょうか。

クラシック音楽に限らず、新参者が増えれば既存のルールは曖昧になります。市場は小さくていいと言うのなら、答えは簡単、彼らを追い出せば済む話です。しかし彼らと共に盛り上げていこうとするなら、何らかの形でルールを学ぶ機会を設けるべきではないでしょうか。もしくは反対に、新参者に歩み寄ってみても良いかもしれません――「ベルリン・フィルのピクニックコンサート」や、ラ・フォル・ジュルネの「ゼロ歳からのコンサート」のように、堅苦しいことを気にせず楽しめるクラシックコンサートといった方向性も生まれることでしょう。ルールを知らない相手でも、まずは非難ではなく理解から始めるべきではないかと思います。

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