「エコ偽装」の隠れた悪影響
ちょっとコミカルな響きのある「エコ偽装」という言葉が登場しています。言うまでもなく、日本製紙など大手の製紙会社が、年賀状の古紙配合率を偽装していた問題がその発信地。年賀状以外での紙製品での偽装も発覚しています:
■ 日本製紙、古紙100%コピー紙も偽り (News i)
日本製紙が「古紙100%」としていたコピー紙でも偽装が明らかになったとのこと。そもそも表示を偽ることは断じてあってはならないことであり、それだけで大きな問題と言えます。日本製紙を始め、今回の偽装事件で名前が挙げられた製紙会社はすぐに態度を改めなければならないでしょう。しかし News i の記事を読んでいると、この一件には別の問題点が見えてきます:
日本製紙は去年4月、古紙100%の再生紙の製造を取りやめると、突然発表。その理由について「古紙100%再生紙が実際には環境に付加をかける面もあるから」などと説明していました。この動きに多くの製紙会社が同調し、国に対しグリーン購入法で定められた100%という古紙配合率の引き下げを求めていました。
(中略)
これについては古紙利用を訴える市民団体が抗議していましたが、環境省は今回の事態を受けて古紙配合率の引き下げを延期する方針です。取材に対し日本製紙は「調査中でコメントできない」と話しています。
実は、日本製紙は「古紙100%再生紙は逆に環境に悪影響」と主張していたのですね(関連記事がありましたので、興味のある方はご覧下さい)。しかしグリーン購入法という法律では、「国の機関が使用するコピー紙には古紙100%再生紙を使用すること」と定められているため、その変更を求めていたと(読売新聞の記事によれば、配合率引き下げはほぼ決まりかけていたようです)。ところが今回の一件で……という状況ですが、果たしてそれで良いのでしょうか。
なぜ製紙業界が「偽装」という犯罪行為に手を染めてまで、古紙配合率を守ろうとしたのか。それには「古紙が含まれていれば安心だ」というイメージが世間一般にはびこっているから、という原因もあるのではないでしょうか。本当は古紙が多すぎても環境にはマイナス、あるいは消費者が納得するような「白さ」を実現するには古紙配合率を下げなければならないのに、世間はとにかく古紙を使うことを求める。逆に古紙が使われてれば無批判に安心する、ならば……という意識があったのではと思います。もちろん製紙会社の主張は誤っているかもしれませんが、少なくとも「本当に古紙100%再生紙で良いのか?」と改めて議論を行う必要があるでしょう。
とはいえ、今回の一件ですっかり「製紙会社=悪」というイメージがついてしまうでしょうから、彼らの訴えに耳を貸そうという人は減ってしまうでしょうね。「古紙をいっぱい使ってますよ」と叫ぶことが一種の免罪符になってしまう状況こそ危惧するべきだと思うのですが……。