「ネット政治活動」への期待と不安
「携帯向けフィルタリングの義務化」「ダウンロード違法化」に続き、気になる動きが民主党から起きています。インターネット上の違法・有害サイトの削除をプロバイダーなどに義務付ける法案を、国会提出しようと考えているとのこと:
■ 有害サイト削除、民主が独自法案・プロバイダーに義務化 (NIKKEI NET)
まだ民主党の党内調整の段階なので、形になるまでは何とも言えませんが。ただ報道によれば、
検討中の法案では、サイト開設者やプロバイダーは違法情報を発見し次第、削除しなくてはならないと規定。違法かどうか明確でなくとも、有害な恐れがある場合は児童が閲覧できなくなるような措置を講じるよう義務付ける。罰則を設けることも視野に入れる。
とのことで、非常に問題点が多い内容となっています。既にネット上でも、多くの方々が「海外サーバーの場合はどうするのか」「既に違法サイトの多くが海外サーバーなので、実効性がない」「どうやって『児童』が閲覧していると判別するのか」などの懸念を表明されていますね。
個人的には、内容の問題と共に「なぜこんな法案を民主党が提出するのか」という点が気になります。政治家だってバカではないのですし、専門家の意見を聞けばこれがどこまで実効性のある法案か分かるでしょう。それでも「今月召集の通常国会での成立」を目指してしまっている理由は何なのでしょうか。
うがった見方かもしれませんが、最近インターネットを使った凶悪犯罪が目立っていることに対して、何らかの解決策(いけにえ?)を求める世間の風潮に民主党が乗ろうとしている、という構図があると考えています。実効性があるかどうかは二の次で、専門知識のない普通の人々、もっと詳しく言えば選挙で必ず一票を投じる中高年層の一般人が「何もないよりは良いんでしょ」「民主党は働いてるな」と感じてくれれば良い。ネットに詳しい若い連中が騒いだって、どうせ選挙には影響がない――そんな考えがあるのではないでしょうか。
確かに現時点では、「ネット規制強化」を叫ぶことはリスクではなく、得票数を上げる可能性があるでしょう。しかし一連の規制強化の動きによって、今度は規制反対派がネットを通じて組織化し、投票行動を左右する動きに出るのではないかと思います。既にMIAUなどの団体が結成されていますが、例えば規制に対する各議員の態度を一覧した「まとめサイト」を作ったり、反対派議員の支持母体をチェックできるようなサイトを作ったりというような団体も表れるでしょう。規制強化の流れが強まれば強まるほど、選挙という場でそれに対抗しようという動きが必ず出てくると思います。
ただしそれは、新たな圧力団体を生み出すことでしかありません。「ネット政治活動」が力を持てば、ネットに接していない人々・接することができない人々が今度は不利益を被ることになるでしょう。善意に期待するのは甘いですが、ネット政治活動は単にネット住民たちの自由や利益を守るためのものではなく、広く社会問題に取り組む動きとなっていって欲しいと思います。