「厚生労働省」と偽サイト騒動
昨日は「厚生労働省」を Google で検索する人、続出したのではないでしょうか(僕もその一人です)。実はこんな騒動が起きていました:
■ 「厚労省」をGoogle検索すると別のサイトがトップに 注意呼び掛け (ITmedia News)
現在は(残念ながら?)再現しないのですが、昨日「厚生労働省」「厚労省」というキーワードで Google 検索すると、本当の厚生労働省サイト(http://www.mhlw.go.jp/)ではなく台湾の翻訳サービスとみられるサイトがトップ表示される、という事態が起きていました。それ以外にも、おなじみ Wikipedia や「イザ!」のイザ語ページが上位表示されていたようです。
Google 側は「ミスだった」と認めているようですが、なぜ台湾のサイトがトップに出れたのか?といった原因分析は置いといて。僕が面白いと思ったのは、トップ表示された台湾のサイトを「偽サイト」と表現する記事が見られたことです:
■ グーグルで厚労省「偽サイト」が最上位に、丸1日続く (読売新聞)
■ “偽サイト”が最上位に・グーグル、「厚労省」検索で (日経ネット)
特に日経の記事では
専門家は「検索サイトの信頼性を揺るがす問題」と指摘している。
などと厳しい口調で糾弾されているのですが、個人的にはこれを「偽サイト」と表現することには違和感があります(本当に翻訳サービスだったのであれば)。また同じく本物の厚生労働省サイトよりも上に表示された Wikipedia や、イザ!も偽サイトになるのでしょうか。今年流行りの「偽」を使いたくて仕方のないマスメディアの勇み足、といった面もあるかと思いますが、人々が検索エンジンというサービスに対して抱くイメージがうかがえて面白いと感じます。
ネットに詳しい人であれば、検索エンジンはあくまでも私企業が提供しているツールでしかありません。「厚生労働省」というキーワードを入れたら様々な(政府のものではない)サイトが表示されるだろう、ぐらいの想定は当然持っているでしょう。しかし今回、翻訳サービスが上位表示された「だけ」で大騒ぎになったのは、「厚生労働省というキーワードで検索したら、本当の厚生労働省サイトが一番上に表示されるはず」という前提が人々の心にあることを示しています。いってみれば、「検索エンジン=道路標識のような社会インフラ」といったイメージでしょうか。
もちろん、検索エンジンの安全性は高められなければならないでしょう。悪意を持った「本物の偽サイト(?)」に知らず知らず誘導される、ということがあってはなりません。しかし「厚生労働省というキーワードでトップ表示されるのは厚生労働省のサイトでなければならない」というのは、個人的には行き過ぎのように思います。いや違う、これは信頼性を揺るがす大問題なのだという意見が出てくることは、逆説的に「検索エンジンがいかに信頼されるサービスとして一般に定着しているか」を示しているのではないでしょうか。
< 追記 >
続報です。Google 側でアルゴリズムの修正を行ったとのこと:
■ 「厚労省」Google検索結果修正 「アルゴリズムを見直した」 (ITmedia News)
ただし、
ちなみに「厚労省」で検索した場合、検索結果1ページ目には厚労省の公式サイトは表示されない。
とのこと。確かに「厚労省」でググると「イザ!」や「はてなダイアリー キーワード」が表示されますね……これも「検索エンジンの信頼性をゆるがす偽サイト」と糾弾されてしまう、なんてことにならないといいけど。