アップルが目指すのはトヨタか、アルファロメオか
知り合いにアルファロメオのオーナーがいます。ご想像の通り、と言うと怒られてしまいますが、様々な不具合があっても気にならない様子。むしろ「どこが故障した」「どんな修理をした」などなど、嬉しそうに話してくれます。出来が悪い子供ほど可愛い……という心境でしょうか。
そんな姿を、次の記事を読んで思い出してしまいました:
■ 米アップル、評判に陰り (NBonline)
アップルの直面する「顧客サービス低下」という問題について。正直なところ、アップル製品の品質や保証について悪いうわさを聞くのは初めてではないので、「低下」という表現が適切かどうかは分かりませんが……ただ記事では、次のような新しい現象が指摘されています:
- iPod や iPhone の大ヒットにより、これまでアップル製品に触れたことのない人々までユーザーになっている。
- また iPod 等からユーザーになった人々が、アップルのPC製品も使い始めている。
- その結果、過去のような「ハイテクに精通した熱狂的ファン」だったら気にしなかったような点も、新しいユーザーたちによって糾弾されるようになった。
つまりサービス低下というよりは、新しいユーザーの流入によって、サービスに対する期待値が高まったということですね。実際、記事ではこんな声が紹介されています:
「アップルの製品は本当に大きな喜びをもたらしてくれるので、たとえ大失敗しても、つい許してしまう」。ジョージア州ローレンスビル在住の写真家で、アップルを長年ひいきにしてきたナイジェル・アシュトン氏はこう語る。
この姿は、まさしく冒頭でご紹介したアルファロメオ・オーナー像と重なります。俗な表現を許していただければ、これまでのアップルは「IT界のアルファロメオ」だったのでしょう。
さて、この現実に直面してアップルが目指すのは、アルファロメオとトヨタのどちらでしょうか?アルファロメオの魅力を持ちながら、トヨタのクオリティとカスタマーサービスが実現できれば一番なのですが、それは難しい話でしょう。無理に「トヨタ化」を進めてしまえば、デザインよりも不具合が出ないことが優先されてしまうかもしれません。「すごく故障が少なくなったけど、トヨタ車みたいなデザインになったアルファロメオ」が登場したら、これまでのファンがついてきてくれるでしょうか。また品質やサービスにもっとも重きを置く人々が、トヨタではなくトヨタ型アルファロメオを選んでくれるでしょうか。
まあアップルの側も、顧客が急速に増えることのリスクについては承知しているはずなので、何らかの形で対処してくれるだろうと期待しているのですが。個人的には、トヨタ化したアップルは見たくないので、多少の問題には目をつぶってこのまま進んで欲しいところです。けどウチの iPod や Mac には問題を起こさないでね。