オルタナティブ・ブログ > シロクマ日報 >

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

地球に優しいアルゴリズム

»

巡回セールスマン問題(Traveling Salesman Problem)というと、プログラミングやアルゴリズムの教科書で登場するお馴染みのテーマですが、これに対する新しいアプローチ法が発表されたとのこと:

Computer Program Reduces Wasted Time For Deliveries (ScienceDaily)

IIT Madras の研究員らによる、新しいコンピュータ・モデルについて。このモデルでは、突発的なルート変更(予想していなかった注文など)の必要が生じた際、経験則(heuristics)から総走行距離が最短となるルートを導き出すようになっているとのこと。詳細については、次号の International Journal of Logistics Systems and Management に論文が掲載されるそうです。

こういった配送計画の最適化については、物流に関連する企業であれば当然取り組まれていると思いますが、興味を引かれたのは以下の記述:

The team points out that their system will not only help courier companies but could be used equally well by dial-a-ride services, which fill the gap between public transport and taxi cabs, fast food and groceries home deliveries, emergency service responses, including fire, police, and ambulance, repair services, and perhaps even parcel and mail delivery services.

このシステムが使えるのは運輸業だけでなく、ダイヤル・ア・ライド(公共交通機関とタクシーの中間に位置するサービス)や、ファーストフードやスーパーの宅配サービス、消防署や警察の緊急出動、宅急便などの分野にも応用できるだろう、と研究チームは指摘している。

なるほど、いわゆる物流システムの最適化だけでなく、様々な「運ぶ」というシーンに応用が可能なのですね。そこでふと思ったのですが、こうしたアルゴリズムが様々な場面で活用されれば、クルマやバイクから排出される温室効果ガスを大きく削減できるのではないでしょうか。ご存知の通り、温室効果ガスの削減はなかなか成果が出ていません。更なる対策の1つとして、新しい経路決定アルゴリズムの開発を含めても面白いのでは、と感じました。

物流会社に「あなたの会社の経路決定アルゴリズムを公開し、共有しなさい」と言っても無理な相談ですから、教育機関や政府などによる研究は特に重要ですよね。さらに公的機関が開発者になれば、「経路が最短になる」というだけでなく「(経路は長くなるかもしれないけど)温室効果ガスの排出が最小になる」という視点を含めることも可能になるでしょう。日本政府も Google に対抗するための検索エンジンなんかより、こういったアルゴリズムの発展にお金を費やした方が有意義かもしれないのに……と不謹慎なことを考えてしまいました(既に取り組まれているのでしたら、僕の無知ということでご容赦下さい)。

Comment(0)