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愚痴メディア

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ウチでは朝日新聞を購読しているのですが、最近どうしても気になることが一つ。それは、自民党の福田康夫新総裁に関する報道。ご存知の通り、ここ1週間ほど福田さん・麻生太郎さんの間で総裁選が戦われていたわけですが、「福田氏は口下手・演説下手」という点がさかんに指摘されていました。例えばこんな記事が:

「顔」競う、街頭演説がスタート 自民党総裁選 (asahi.com)

確かに報道を見る限りでは、麻生さんが非常に人を惹きつける演説を行う一方で、福田さんの演説は「たどたどしい」「緊張している」といった形容詞が似合う感じです。これで一国の首相という職を担えるのか……という批判がなされても仕方ないと思うのですが、ちょっと待った。「前首相」(まだ安倍首相ではありませんよ)に対しては、確かこんな批判があったはずです:

党首討論深まり欠く 首相争点そらし、野党も突き崩せず (asahi.com)

「ワンフレーズ・ポリティクス」。小泉元首相は非常にパフォーマンスに長けていて、一言で有権者を惹きつける政治手法がこう評されていました。そしてワンフレーズ・ポリティクスの行き過ぎは「論争を否定するもの」として批判されることに……そう、これまでは口達者なのは悪いことだったはずです。であれば福田さんの性格はポジティブに捉えられるべきなのですが、朝日の紙面からはそんな態度は感じられません。

誤解を避けるために書いておきますが、政治家は口達者であるべきか否かを論じるつもりはありません。もし新聞が「政治家はパフォーマンスをしてはならない」と信じているのであればそう主張すれば良いし、逆ならば逆の主張をすれば良いと思います。ところがそうするのではなく、「口達者」が攻撃できる点ならば攻撃し、「口下手」が非難できる点ならば非難するという、「批判のための批判」が行われているとしたらどうでしょうか。いつもグチグチ、愚痴ばかりでは、読者は「やっぱり政治家はおかしなヤツばかりだ」「誰が首相になっても問題点ばかり出てくる」という思考パターンに陥ってしまわないでしょうか?

いや、まさか大手新聞社が「批判のための批判」を展開するとは思えませんし、実際には建設的な批判も数多くあります。しかし仕事のあと飲み屋に行って、「ったく部長はよー、現場を分かってねーくせに勝手なこと言いやがってー!」と愚痴るのが大きなストレス発散になるように、実は「愚痴メディア」に接するのは非常に楽しいことだったりしますよね。私たちの脳は、無意識のうちに批判を求めてしまうという面があるのではないでしょうか。そして愚痴メディアを判別できずにいるうちに、何に対しても否定ばかりになってしまっている……としたら、非常に恐いことです。

誰か・何かの長所を見つけて誉めるって、実はとても難しいことです。自分がよく知らないものが批判されている文章に接した場合、まずは逆に批判対象を肯定してみる、ぐらいがいいのかもしれません。非難や愚痴は、あとからいくらでも言えるのですから。

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