高齢者の引越し、というニーズ
ご存知の通り、日本はこれから超高齢化社会に突入します。類を見ないほど急速な高齢化ということで、「想定外」な問題が次々に出てくるだろうと言われていますが、それに対応する商品やサービスが登場してくることでしょう。次の記事で紹介されているような「高齢者向け引越サービス」もその1つかもしれません:
■ Helping seniors relocate (Springwise)
残念ながら米国での話ですが、Smooth Mooove というサービス。創業者の Adrienne Simpson さんは、両親の引越しを手伝ったときにこのサービスを考えたとのこと。単に荷物を運ぶだけでなく、退去する家を掃除する/新しい家にカーテンをかける/新生活で必要になる、身の回りの物を買いそろえる――などの作業をしてくれるそうです。確かに高齢者だけの場合、通常の引越しなら「それは自分たちでやるから安くしてくれ」となることでも「料金を払うからついでにこれも」というようになるのでしょうね。
日本なら「新居周辺のご近所さんへご挨拶するのに同行してくれる(ぶっそうな住人がいるかもしれないので)/ご挨拶の際に贈る品物を揃えてくれる」などといったサービスがあると好評を得るかもしれません。またちょっと検索してみましたが、日本ではクロネコヤマトさんが「高齢者ホーム入居サービス」というものを用意されています。こちらはホーム入居、とより限定したシチュエーションを想定しているため、「不用品処理」というメニューも用意されているとのこと。ただ高齢者の方々の引越しでは「子供たちが大きくなったから、少し小さめの物件に移動する」というケースが多いでしょう。相談の上で不用品を処理する、というサービスに対するニーズは、意外と大きいかもしれません(最近は粗大ゴミ処理に様々な規制が課せられていますしね)。
また高齢者の引越しでは、精神的ケアという面も必要になってくるのではないでしょうか。東京大学のジェロントロジーセミナーの資料「高齢期の転居要因と適応」によれば(こちらでPDFファイルを確認できます)、「転居の健康影響の研究は未だ少なく、研究の蓄積が重要だが、在住者と比較して社会的孤立傾向にある可能性がある」とのこと。特に自らが望んだものではない「非自発的転居」については、精神的健康への影響が懸念されるそうです。であれば、モノを運ぶだけでなく「周囲の社会にとけ込む手助けをする」といったサービスも必要になってくるのではないでしょうか。それを引越業者が行うべきなのかどうか、担えるのかどうかは別の議論になりますが。
いずれにしても、引越しというありふれたサービス1つ挙げても、新しい角度からの検証が必要になるのが「超高齢化社会」だと思います。そこにビジネスチャンスが……というとコムスン事件を連想してしまいますが、良い意味でそうしたニーズをビジネスとしてサポートする企業が現れてくることを期待します。