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「情報は無料に、そしてごちゃ混ぜになる」

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最近、『Everything Is Miscellaneous』という本を手に入れて読んでいます(ちなみに公式サイトはこちら)。まだ途中なのですが、ネット時代(というよりWEB2.0時代、と言った方がこの本の雰囲気を分かっていただけるかも)の情報のあり方などを論じた本。その中に、こんな表現が出てきました:

As we invent new principles of organization that make sense in a world of knowledge freed from physical constraints, information doesn't just want to be free. It wants to be miscellaneous.

情報が物理的な制約から解放された世界において、新しい整理整頓のルールが生み出されようとしている状況の中では、情報は単に自由になるだけではない。それは「ごちゃ混ぜ」になろうとするのだ。

「情報が物理的な制約から解放された世界」というのは、要はインターネットの世界。現実の世界で何らかの情報(本や資料など)を整理しようと思えば、1つのルールに基づいて並べるしかありませんが、ネットであれば無数のメタ情報を付与して、自由に並び替えることができます(リアルの書店とネット書店の対比が良い例)。そんなネットの世界で「情報はごちゃ混ぜになろうとする」というのは、いったいどういうことなのでしょうか。

最も良い例は、同書の中でも取り上げられている iTunes の事例でしょう。既に多くの場面で指摘されていることですが、iTunes の革新的な点の1つは、楽曲を「アルバム」という概念でまとめて買うだけでなく、個々の楽曲をバラで買うことを可能にしたところです。ネット時代には、情報は単に自由に流通するだけでなく、可能な限りバラバラに扱われるようになるのだ(もしくは、そう扱われなければならない) -- というのが著者であるデビッド・ワインバーガー氏の主張。

この主張に従えば、例えば雑誌に掲載されている情報をネットで流通させようと思えば、単に全ての文字をデジタル化するだけでは不十分です。記事ごとにバラバラにされ、適切なタイトル・タグなどのメタ情報が付与され、ユーザーが自由にアクセスできるようにしなければなりません。またマンガの単行本なども、音楽における「アルバム」のような存在でしょう。マンガ版iTunesが誕生したとしたら、そこでは例えば「『Monster』第12巻の第3話「一番残酷なこと」と第4話「国境の街」だけが欲しい」といった買い方が可能になるはずです。

そういった「バラ売り」については賛否両論あるでしょうが(あるコンテンツの製作者が望む順番で情報にアクセスしなくて良いのか、など)、確かにネット時代には「情報は自由になるだけでなく、ごちゃ混ぜ(バラバラ)になる」という主張には一理あると思います。例えば以前、漫画家の手塚治虫氏の作品が「バラ売り」で購入可能になったというニュースがありました:

マンガ版プレイリストの時代?

こんな買い方が可能になることにより、コンテンツの新しい楽しみ方・価値というものが生まれてくるのではないでしょうか。それが例え、製作者の望むところではなかったにせよ。

個人的には、例えば「モバイルマーケティングに関する情報が欲しい!」と思えば、新聞/雑誌記事・書籍の中から最適なコンテンツが抜き出され、それを1つにまとめたPDFが手に入る(料金は抜き出したコンテンツの合計で支払う)というような世界が来て欲しいと思います。あらゆる情報が「ごちゃ混ぜ」になり、ランダム・アクセスが可能になる世界、皆さんはどう思われますか?

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