オンラインの成功は、オフラインから
ネットショッピングサイトの構築に携わっている方々には、至極当然の話なのですが、オンラインが中心だからといってオフラインを軽視してよいということにはなりません。仕入れや決済方法、顧客サポート体制など、WEBサイト以外の部分も慎重に設計する必要があります。その中で最も重要なのは、実は流通なのだという記事を読む機会がありました:
■ How Do Customers Judge Quality in an E-tailer? (MIT Sloan Management Review, Fall 2006)
消費者はオンラインショッピング業者をどのような視点から評価するか?について解説した論文です。(1) WEBサイトでのやりとり (2) 配達 (3) 問題発生時の対応、という3つの要素が重要だと説かれているのですが、中でも消費者が重視しているのは (2) の配達だったのだとか。期待するレベルが高く、その期待に応えられなかった場合の許容範囲もごく狭いという調査結果が出たそうです。
配達に対する期待の高さは、「届く」場合に限りません。それを「返す」場合、すなわち返品の際にどれだけ不愉快な体験をしないかということも重要なようです。同じく MIT Sloan Management Review 2006年秋号には、"Managing Product Returns for Competitive Advantage"という記事が掲載されているのですが、その中で「オンラインショッピング利用者のうち37%が、返品・交換プロセスが難しすぎるためオンラインでの購入をあきらめている」という調査結果が引用されています。モノを自分の目で見て確かめ、自分で持って帰るという行為をしないために、その代替となる「配達」「返品」のプロセスに大きな期待がかかっているのでしょう(それを逆手に取り、「返品は無条件・無料」と保証することで売上げを伸ばしているショッピングサイトもあります)。
オンラインショッピングの中での「配達」プロセスに対する期待を、さらに高めるような現象も起きています。最近「ネットスーパー」という業態が流行しつつあることはこのブログでも取り上げていますが、多くのネットスーパーでは、注文当日に品物が届くことを売りにしています。また2時間単位での配達時間指定(○時から×時の間に届けることを約束)など、よりきめ細かい指定も一般的になってきているようです。ネットとはいえ「スーパー」なのですから、そういった配達は当然可能でなければなりませんが、それに慣れた消費者は他のオンラインショッピングサイトでも同様のサービスを求めることでしょう。アマゾンの当日配達オプションなど、消費者のより高い期待に応えようとするサイトは既に現れ始めています。
そう考えると、実はオンラインショッピングサイトの設計は、オフラインから始めるべきなのかもしれませんね。もちろん流通やコールセンターなどはアウトソースが可能なので、自社で全てをまかなう必要はありません。むしろブランド力のあるアウトソース先を使うことによって、消費者の信頼を勝ち取るという選択肢もあるでしょう。とはいえ彼らも万能ではありませんし、アウトソース先を使うにも能力が要求されますから、自社がどこまでオフラインを磐石にできるか→その上にどこまでオンライン空間を広げられるか、という流れで設計を進めなくてはならないと思います。