ラジオ局の(もう1つの)将来像
最近、ラジオを聴いていますか?僕は毎朝NHK教育(語学番組)とJ-WAVE(Good Morning Tokyo)を聴いているのですが、以前よりはずっとラジオを使う時間が減りました。現在はネットや携帯電話、携帯型音楽プレーヤーなど様々な「時間つぶしツール」が登場していますから、多くの方々も「以前より聴かなくなった」という答えでしょう。
そんな状況ですから、「ラジオ局は将来有望だ」と考える人は少ないと思いますが、先日こんなニュースがありました:
■ J-WAVE 企業の顧客開拓 支援 -- ネットラジオなど 独自番組を制作 (日経流通新聞 2007年10月27日 第11面)
残念ながらネット上で類似記事が見つからなかったのですが、タイトルだけでも内容が十分に想像できるかもしれません。J-WAVEが10月末から「JIDB」という新サービスを立ち上げたということなのですが、これは企業が顧客向けに配信するポッドキャスティング番組の制作やメールマガジンの製作などを請け負ってくれるサービスとのこと。ご存知の方も多いと思いますが、J-WAVEはネットを通じたコミュニティの形成に力を入れており、ラジオ局としてのノウハウ+ネットコミュニティ形成のノウハウを新たな収入源として活用する狙いがあるようです。
企業が自らの持つノウハウを、他者に提供することで利益を得ようという動きは珍しいものではありません。最近、稲盛和夫氏が書かれた『アメーバ経営』が話題を呼んでいますが、アメーバ経営は「ノウハウ提供モデル」の代表的な例と言えるでしょう。しかし「ラジオ番組を作る」という一見時代遅れのノウハウを、ポッドキャスティングの流行に乗せて提供しようというJ-WAVEの試みは、非常に着眼点が良いのではないでしょうか。
極端な話、企業ブログはどんな会社でも、いつでも始められます。URLさえ気にしなければASPサービスが使えますから、それこそ1時間もあればビジネスブログを開設できるでしょう。しかしポッドキャスティングはそう簡単にはいきません。良い音質で録音し、効果音や音楽などを入れたければ、それなりの設備が必要です。さらにそういった設備を駆使し、番組としてまとめる知識も必要でしょう。しゃべる人の側にも、日常の業務とはことなるスキルが要求されます。これは個人的な感想になってしまいますが、オルタナティブ・ブログのポッドキャスティングに参加した際、通常のプレゼンテーションとは違う技術が必要であると強く感じました。こういった設備やスキルを補えるラジオ局は、ポッドキャスティングを行う上で大きな役割を果たせるに違いありません。
さらにこういったサービスは、企業だけではなく個人にも提供できるのではないでしょうか。実際に局の施設を一般人に開放するとなると、運営上で大きな負担になるとは思いますが、個人の中にも「ポッドキャスティングが簡単に始められるような設備・サービスが欲しい」というニーズはあるはずです。例えばスポット的に使用料を払って設備を利用するだけでなく、「街頭ロケの録り方」「話し方教室」といったサービスを提供することが可能ではないかと思います。
そう考えると、将来ラジオ局は自ら番組を作って配信するだけでなく、「CGMのための公共施設」として情報発信を支援する役割を担うようになるかもしれない・・・そんな将来像を想像してみました。J-WAVEの新サービス、成功すると面白いですね。