「タダを有料化」の効能
今週水曜日の日経流通新聞になりますが、面白いニュースがありました。北海道のニセコ町で、従来は無料配布していた観光案内誌を有料化するとのこと:
■ 観光案内誌、有料に -- ニセコの観光協会、1部200円 特集やイラスト充実(日経流通新聞 2006年7月5日 第4面)
これまでの町委託から自主制作に切り替え、無料から1部200円変更して販売するそうです。また掲載したホテルや飲食店から広告料も徴収するのだとか。記事によれば、「自治体の観光情報誌を有料で販売するのは珍しい」とのことです。
ブランド品ならいざしらず、無料で配っていたパンフレットに値段をつけて売ろうなどという試みは理解しがたいかもしれません。しかしこのニュースを 目にして、以前何かの本(もしかしたらどなたかのブログかも)で「無料のものを有料化できないか考えてみよう」という提言が出てきたことを思い出しまし た。ちょうど良い機会なので、「タダを有料化」からどんな効能が得られるか考えてみましょう。
【効能1】 儲かる
当然ですが、無料のものを有料にすれば絶対に儲かります。事実、ニセコの観光協会は「欲しい人が買う仕組みにし、教会の収入増につなげたい」と考え ているそうです。慣例的に無料で提供しているけれど、時代の変化など様々な理由によって、実は「欲しい人はお金を出してでも手に入れる」状態になっている モノ・サービスを探して儲けることができるかもしれません。
(例) 電源が取れる喫茶店。無料で許可するのを止め、コンセントが設備されている席にはプラス100円をチャージする。モバイル環境で仕事する人が増えたいま、出先で電源を気にせず仕事したい(あるいは緊急で電源を取りたい)というニーズは大きくなっているはず。
【効能2】 話題になる
「このご時勢にタダを有料化するなんて」という思いが、記事の背景にはあるはずです。従って有料化により、(少なくともしばらくの間は)「世の中の 話題になる」という効果が得られるでしょう。特にこの場合は「普通こんなもんタダで出すだろ」っていうモノの方がインパクトがあってベターですよね。
(例) 会社でお客様にお出しする飲み物を有料化。無料のお茶のチョイスも可能だが、100円を出すと、ものすごく美味しい(または珍しい・貴重な)コーヒーやジュースが飲める。「あの会社は飲み物に金を取ったけど、面白いものを出してきた」とお客様の間で話題に。
【効能3】 価値の保証になる
値段はモノ・サービスの価値を示す指標になります。つまり100円という値段が付くことにより、そのモノ・サービスには100円分の価値があること になるわけです(もちろん値段と内容がつりあっていない場合はいくらでもありますが)。極端な話、人は無料で配っているパンフレットに載っている情報より も、お金を出して買ったガイドに載っている情報の方が価値があるものとして捉えるかもしれません(この辺は「なぜコンサルタントはお金を取るのか」に通じるところがあるかも)。またお客様がそういった期待を抱くことにより、作り手の側にも 「良いものを作らねば」という緊張感が生まれるでしょう。さらに得た収益をコンテンツ作成に回すことにより、より内容を充実させることができます。
(例) 今回の観光案内誌のように、従来は無料配布していたパンフレット類。価格をつけることにより、限定感や新鮮さなど、質が高い情報であることをアピール。
などなど、この他にも考えられる効能がありそうです。また無料パンフレット以外にも、その価値(対価を得れるという意味)や重要性が無視されて「タ ダで適当なものを配っておけ」という扱いをされているモノがあるかもしれませんね。無料が主流になりつつある消費者向けWEBアプリケーションの分野で も、有料サービスとして提供できる分野・機能が見つかるかもしれません。