真の敵は誰か?
またまた非IT系の話題を1つ。
皆さんは「新宿」というと、どのようなイメージを抱かれるでしょうか。子供の頃、僕にとって新宿は「憧れの町」でした。変に思われるかもしれませんが、多摩地区に住んでいると、「休日に映画を観に行く」「買物に行く」というと新宿がちょうど良い場所だったのです(立川は今のように開発されておらず、小さな映画館とデパートが数軒あるだけでした)。「新宿副都心」という懐かしいキャッチフレーズ(?)の通り、高層ビルが立ち並ぶ大都会というイメージでした。
ところが今ではそんなイメージも無くなりました。新宿というとゴミゴミしていて、「オシャレ」「落ち着いている」「雰囲気が良い」というキーワードからはかけ離れた場所という印象があります。特に子供連れでは非常に歩きにくい町で、娘を連れて行こうと考えたことすらありません。このイメージの変化は、僕が成長したからという理由もあるでしょうが、町全体として魅力を高める努力を怠ってきたからでしょう。いや、努力を怠ったというより、「他の町の魅力が増した」と表現した方が適切かもしれません。
例えば、いま東京で一番「オシャレ」な町といえば、表参道ヒルズがオープンした表参道・青山周辺でしょう(自分の勝手なイメージなので、「それズレてる」といったツッコミはご容赦を)。また最近は「コンパクトシティー(住民が歩いて暮らせる街)」という概念が盛り上がっているようですが、僕が住む吉祥寺・三鷹はまさにそんな場所で、子供と一緒に出かけても楽しめます。若者向けなら渋谷・お台場、渋い街歩きを楽しむなら日本橋・丸の内界隈と、各地域の特色や魅力というものがこれまで以上に明確になってきているように感じます。
一方、新宿は活力を失いつつあります。例えば先週、こんな記事を続けて目にしました:
■ なるほどビジネスTime -- 新宿百貨店競争、第2幕へ(日本経済新聞 2006年4月18日朝刊 第3面)
■ 新宿三越、ロフトが撤退 -- 来年2月めど 専門店ビル再生策白紙(日本経済新聞 2006年4月19日朝刊 第13面)
前者は高島屋新宿店「タイムズスクエア」の停滞を、後者は新宿ロフトが異例の速さで三越の専門店ビルから撤退することを伝える記事。新宿は確かに伊勢丹の成功などもありますが、業績改善に苦労している店舗が多いようです。これは新宿に出店していた企業がたまたま能力不足だったというよりも、新宿という町全体が集客力を失っている現れではないでしょうか。
恐らく高島屋新宿店や新宿三越、そして伊勢丹新宿店は、お互いに競い合うのではなく、表参道や六本木、渋谷やお台場などに対抗するために協力すべきなのでしょう。適切な例ではないかもしれませんが、近郊に大型店が出店することを恐れていた地元商店街が、いざ大型店が完成するとそこの客が商店街にも流れてきて、以前よりも売上が伸びることを発見したというケースもあります。誰と・どこで・何をめぐって競争するかという問題は、表面的な事象からだけでは容易に判断できないものなのだと思います。
翻って、IT業界は適切な競争相手をターゲットとしているでしょうか?もしかしたら、昔ながらの紙媒体・フェイストゥーフェイスのコミュニケーションといったものが争うべき「真の敵」なのかもしれません。目の前の競争に目を奪われるのではなく、広い視点から自社の提供するソフト/サービス、そしてそれが依拠する技術のポジショニングを確認する必要があると思います。