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組織を活性化させていく上で外せないポイントを、企業や組織が抱える問題や課題と照らし合わせて分かりやすく解説します。日々現場でコンサルティングワークに奔走するコンサルタントが、それぞれの得意領域に沿って交代でご紹介します。

戦略人事を実現するためのタレントマネジメントシステム導入の要諦

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 昨今の人事領域において、従業員の生産性の向上や業務効率化が叫ばれて久しい。それを下支えするテクノロジー活用である「HR Tech」というサービス領域は日本のみならず、世界的に見ても市場の広がりを見せている。

日本における市場拡大の背景には、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」に伴う課題解決に向けた働き方改革関連法案の施行※1や、低成長経済の固定化に伴う業績向上のための人件費の削減、人材の流動性の高まりに伴うスキル管理の必要性、他事業領域のIT化の推進や技術の転用によるHR Tech自体の発展等が挙げられる。そういった背景に加え、HR Techが価格や操作性において汎用化され導入しやすくなったこと、政府や地方公共団体によるIT導入補助金や業務改善助成金等の各種助成金が利用できることもHR Techの盛況を後押ししている。人事業務の仕組み化・従来の属人的な作業からの脱却という抜本的な改革は、喫緊の経営課題として表出してきている。

そのような現状を踏まえると、システム導入で人事業務を効率化しようという試みは当然の帰結だと考えられる。しかしながら、これまでの業務の代替や現在抱えている課題解決をシステムが全て実現できるわけではない。タレントマネジメントシステムの領域とその特徴、その問題点を述べ、システム導入による戦略人事へのシフト実現するポイントについて以下に記述する。


※1 厚生労働省,「『働き方改革』の実現に向けて」,
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html(2019/6/11)

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タレントマネジメントシステムの領域は、大きく以下の二つに区分される。

 ①業務効率化
 ②タレントマネジメント

①に含まれるのは、人事管理や採用管理、給与計算システム、勤怠管理、労務管理、工数管理、RPA等である。これらは、システムをツールとして利用することで人員や工数を割いて行われている作業を細分化や分散、代替することが可能になる。

②に含まれるのは人材配置や育成、分析評価、AIを活用したシミュレーション等である。人事領域における企画業務や、システム間の連携による多軸分析等で、タレントの活用によって経営に寄与することができる。

特徴として、①の業務効率化は、課題(導入理由)及びそれに対するシステム導入効果が会社にとって比較的分かり易い。例えば、従業員側からも理解を得やすい有給休暇の取得や残業時間の把握等が挙げられる。また、管理側から見ても単純な集計・データの整理整頓という集約作業において効力を発揮するからである。

②のタレントマネジメントは、課題(導入理由)に対するニーズは高いながらも、課題に対する導入効果が測りづらいためにわかり難い。さらに、従来の定型業務に工数を取られていると、タレントマネジメントそれ自体に割く人員や工数をかけられない、または機能が多すぎて使いこなせないこともあり、システムの形骸化が起こり易いのが現状である。

以上の状況をふまえた場合、業務効率化を行わずに、タレントマネジメントに絞ったシステムを導入した場合、本来タレントマネジメントを行うべき人事担当者がデータ更新という作業に追われ、タレントマネジメントができない本末転倒な結果に陥るケースがある。従って、業務効率化並びにタレントマネジメントを睨んでシステム導入を検討することが戦略人事の実現には重要である。

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人材の量から質へと価値転換を遂げている昨今において、順序で言えば、①から②へと業務をシフトしていくことが戦略人事の実現に最も合理的な過程だと言える。しかしながら、システム導入に当たっては現在の要件を定義し、数あるベンダーの中からシステムを精査していく過程において、担当者間の合意が取れない事態や本来の優先度が前後してしまうこともしばしば発生する。導入までの多くのハードルのせいで、システム導入の本来の目的を見失うことも少なくはない。

企業にとっての付加価値を与えられるかが、システム導入の肝となる。近視眼的なITベンダーの比較検討をするよりも、当初の導入目的と中長期的なシステム活用の方向性を見失わずにシステム検討を行うことが重要だと言えるのではないか。

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