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組織を活性化させていく上で外せないポイントを、企業や組織が抱える問題や課題と照らし合わせて分かりやすく解説します。日々現場でコンサルティングワークに奔走するコンサルタントが、それぞれの得意領域に沿って交代でご紹介します。

年俸制は得か?!損か?!

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ご存知の通り、過去日本国内においては、年功序列型の給与制度が主流でした。
しかし、バブル崩壊後からは能力・成果主義の流れもあり、年功序列型の給与制度から業績・成果連動型に移行する企業が多くみられ、年俸制を導入する企業が増えました。
年俸制の導入は、大手企業に多くみられたようですが、大手グループや関連会社でも同様の制度を導入している企業が多く、近年では、全社員に対して年俸制を適用するのではなく、管理職にのみ適用する動きも主流になってきているようです。
実際に、私のお取引先企業でも、3分の1程度は年俸制を導入しています。

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有料職業紹介事業(人材紹介事業)をおこなう私の部署では、登録求職者の方から応募企業の給与制度に関する質問を受けることがあります。

「年俸制だと1年間給与が変わらないのでモチベーション維持できるか不安です」
「月給制と年俸制、どちらが得ですか?」
「年俸制って賞与ありますか?」
「年俸制だと残業代は支給されないですよね・・・」などなど
まだまだ日本では馴染みのない制度でもあり、違いをきちんと理解できていない方も多いようで、聞き慣れない「年俸制」という言葉に過剰に反応してしまう方も少なくないようです。

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では、ここでみなさんも少し考えてみてください。

1)年俸制だと1年間給与が変わらないのでモチベーション維持できるか不安ですか?
2)月給制と年俸制、どちらが得だと思いますか?
3)年俸制だと賞与はありませんか?
4)年俸制だと残業代は支給されないですか?

もし、貴方の会社で年俸制を導入しているようであれば、答えは簡単なのかもしれませんが、もし月給制の貴方が、年俸制になるとしたら、いかがでしょうか。

私は以下のように考えました。

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1)年俸制だと1年間給与が変わらないのでモチベーション維持できるか不安ですか?

一般的に年俸制とは、年に一度評価を実施して報酬改定する制度(完全年俸制度)です。
これまでの評価・報酬改定期間が3ヶ月、6ヶ月だった方であれば長く感じてしまうでしょうが、年に一度の評価・報酬改定を実施していた企業にお勤めの方であれば、モチベーション維持の観点での不安は解消されているのではないでしょうか。
また、報酬改定イコール昇給ではないと思いますので、年間で給与が下がる可能性はなくなります。
また、1年に一度しか報酬改定できるタイミングがなかったとしても、年俸制ならば1年間の収入は確定しているわけですから、計画的・安定的に生活することが可能なのではないかと思います。

2)月給制と年俸制、どちらが得だと思いますか?

そもそも損得の考え方が正しいのか、という話ははありますが、考え方次第だと思います。
従業員視点でも2つの考え方があると思います。(*以下は月給制で賞与ありを想定しています)
年間収入額は不確定。でも確実とは言えない報酬改定への期待と、いくら貰えるかわからない賞与への期待と希望をもって日々業務に励むことを好むのであれば、月給制のほうが良いと考えることができます。
いくら貰えるかわからない賞与への期待や希望もないけれど、年間収入額が確定しているのでこの先一年間は安心して生活することができる、と考えるのであれば年俸制の方が良いと考えることもできます。

3)年俸制だと賞与はありませんか?

個人的なことかもしれませんが、"賞与とは「誉めて与えるもの」"と、むかし先輩に教わった記憶があります。
本来、年俸制だと年間支給額が確定しているわけですから、そこに賞与は存在しないというのが一般的な考え方です。
但し、年俸制導入企業でも均等払い(12分割支給)ではなく、ボーナス払い(14、16、18分割支給など)にして、年俸額から12ヵ月分を差し引いた額を賞与該当分として支給する企業も存在します。
本来の意味での「賞与」ではないですが、このように賞与的に支給される場合も導入企業によっては存在します。
ちなみに、上記の「ボーナス払い」の場合には、ボーナス金額によっては社会保険料(健康保険・厚生年金)の観点で納付額を抑えることもできます(但し、将来受給する年金の額にも影響します)。

4)年俸制だと残業代は支給されないですか?

年俸制であっても月給制と同様に、管理職者であれば普通残業分の時間外手当は支給対象外となり、休日・深夜勤務分のみが支給該当となりますが、管理職ではない社員の場合には、普通残業分も支給は必須となります。
但し、もともと年俸額に固定時間外手当分を含んでいるのであれば、固定時間を超過した分のみが別途支給対象となります。

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みなさんのお考えはいかがでしたでしょうか。

個人的には、月給制は短期的視点(短期就業観点)で社員に報いる制度、年俸制は長期的視点(長期就業観点)で社員に報いる制度なのではないかと考えるようにしています。

いずれも一長一短というところかとは思いますが、現在年俸制を導入している企業様も、これから年俸制を導入しようとご検討中の企業様も、年俸制を導入している(する)意図や意義、どのように社員に報いたいと思って導入している(する)制度なのか、また社員にその意図・意義がきちんと伝わっているのかが重要なのではないかと思います。

売り手市場の昨今では、貴重な資産である"人材"を採用できただけで満足してしまいがちですが、採用できたことで満足するのはまだ早いです。強固な組織創りを実現するためには、受け入れた人材を活かすことが重要です。

制度は社員と会社をつなぐ役割を担っています。

流行や時代の流れに沿った"単なる制度"を導入・運用しているか否かではなく、自社で導入している諸制度・取組みの意図や意義を改めて見直し、それらの意図や意義を社員に伝え、浸透させることができているのかを今一度考えてみることが大切なのではないでしょうか。



ヒューマンリソース事業部
高宗史恵

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