2015年大混戦セリーグをヤクルトが優勝できた理由とは?(得失点分析編)
2015年のセリーグ・プロ野球は、開幕前に誰も予想していなかった2年連続最下位のヤクルトが優勝するという結末を迎えました。
当研究所としては広島の優勝を予想していまし、その予想を掲げる野球解説者も多くいましたが、残念ながら4位という結果で終えています。
1位から4位までゲーム差6.5という稀に見る大混戦を抜け出したヤクルトの何が凄かったのか?について、3回にわたって詳細に分析したいと思います。
各回毎の得失点から浮かび上がる各チームの特徴
大接戦だったセリーグを、セイバーメトリクス的観点で分析していきます。
具体的には、セリーグ各チーム143試合全ての得失点をcsvに記録し、加工してみました。(体力的な限界により下位2チームは分析対象から省きました。DeNAさん、メッセージくれたらやりますよ!)
まず、セリーグ上位4球団が各回に得点した点数の合計を折れ線グラフで表現してみます。
ヤクルトと広島は初回得点が多いことがわかります。一方で、巨人が圧倒的に少なく、その差は32点もあります。満塁ホームラン8本分です。
この図で特徴的なのはヤクルトの2回得点も多いことです。初回に多かった広島も2回はかなり少ないですが、ヤクルトは大きく下げていません。
通常、1回の得点は3番・4番打者によるものが多く、2回の得点は(初回が三者凡退〜2名ほど塁に出たと考えたとして)6〜8番打者によるものが多いと言えます。どこからでも得点をあげられるヤクルト打線の強さを伺えます。
一方で低調なのが阪神打線です。1回〜5回まではエンジンがかかっていないようです。3回終了段階でビハインドしているときの勝率は0.209、6球団全体で見て逆転勝ちが最も少ないという結果からも、この低調な打線が3位という結果に繋がったとも言えます。
続いて、各回に失点した点数の合計を折れ線グラフで表現してみます。
阪神とヤクルトは中盤(4〜6回)の失点が多いことがわかります。一方で、巨人は6回を除いて終始、失点が少ないことがわかります。先発防御率2.81、途中登板防御率2.71の数字は12球団で最高です。
この中盤で数字が跳ねる瞬間は、先発投手が崩れ始めて失点を重ねた回ではないかと推察されます。
そう考えると広島は突出した回はありませんから、投手交代は比較的計算して行われたのではないかと考えています。
(私は畝投手コーチの実績だと考えています。今は全国的に注目されていませんが、投手交代の手際良さを考えると、もっと注目を浴びて良いコーチだと思います)
怖いのは阪神先発陣の中盤に起こる失点です。
先発投手陣は藤浪が21歳、岩田が32歳、メッセンジャーが34歳、能見が36歳。藤浪を除いて先発投手陣高齢化現象が襲っています。第5、第6の先発として24歳の岩崎、23歳の岩本、24歳の岩定、24歳の秋山が挑戦していましたが、全く結果を残せていません。
さらに怖いなのは、中継ぎ陣の福原が39歳、安藤が38歳、高宮が34歳という点です。
阪神の途中登板防御率4.11という結果は、この折れ線グラフを見てもうなずけます。つまり勝ち試合に登板する投手の顔ぶれは決まっていても、微妙な展開で投げられる投手がいないのです。今の所、松田、歳内がそれを担っているのでしょうが、荷が重いようです。それが得失点差を開く結果につながったのではないでしょうか。
最後に、この得失点を序盤、中盤、終盤ごとの3タームに区切って、差分を表してみます。
ここでも阪神投手陣(特に中継ぎ)の弱さが顕著に表れています。さらに、ヤクルトの序盤得点の多さも顕著に表れています。
広島は中盤のみ突出しています。6回終了段階でビハインドしているときの勝率は0.093ですから、粘りの無さが4位で終わった理由なのかもしれません。
阪神と広島が優勝戦線に残れなかった理由が浮かんできたところで、さらに詳細に分析を進めます。次回(二項分布編)に続きます。