2015年大混戦セリーグをヤクルトが優勝できた理由とは?(二項分布編)
セイバーメトリクスを用いてオークランド・アスレチックスを大躍進させたビリー・ジーンは、野球を「27個のアウトを取られるまでは終わらない競技」と定義しました。
私は少し違和感を覚えていて、このように言い換えたいと思います。すなわち「3個のアウトを9回取るまでは終わらない競技」と。
重要なのはアウトにならない(を取る)というルールだけでなく、3個のアウトを取られる前に1点を取ること(取られないこと)だと思うのです。
そこでn=9を143回(試合)試行する二項分布的発想を用いて分析したいと思います。ちなみに、この分析では延長戦(すなわち10回以上続く場合)を考慮に入れていません。
野球とは3個のアウトを9回取るゲームである―二項分布的発想
まず、得点の分布を確認します。1試合あたり、何回得点できたかは以下の通りです。
回数0は9回終了段階での完封を意味しています。ヤクルトの回数の低さが目をひきますね。
そもそも巨人、阪神、広島が2回を中心とする近しい傾向を示している中で、ヤクルトだけが違う分布を示しています。
1回あたり得点する確率はヤクルトが0.242、巨人が0.221、阪神が0.214、広島が0.228という結果になりました。ヤクルトは、11試合(99回)すれば他球団と比べて約2回、チャンスをものにしている回数が多いという結果です。
前述しましたが、ヤクルトは「どの打順から始めても得点できる」というのが大きな強みであることが、この結果から導けます。
続いて、失点の分布を確認します。1試合あたり、何回失点を防げなかったかは以下の通りです。
今度は巨人だけが傾向が違います。得点分布と同じようにヤクルト、阪神、広島が2回を中心としていますが、巨人だけが1回に集中しています。巨人投手陣の強さを伺い知れます。
さきほどの失点合計棒グラフからもわかるように、「魔の6回」とも言うべき先発投手陣の替え時に見える迷いさえなければ、優勝も夢ではなかったのではないか?と思えてなりません。
もう1つ特徴的なのは、広島は1試合あたりの失点回数が0回〜3回まではヤクルト、阪神と傾向が一緒ですが、4回以降となると巨人と傾向が一緒なのです。つまり広島投手陣は殆ど大崩れしなかったと推察されます。畝投手コーチは中国地方での評価は低いようですが、この実績の理由を説明して欲しいものです。
マエケンMLB挑戦が話題になる広島ですが、投手陣の整備はかなり進んでいて、投手王国復権の予感がしますね。
打撃陣で見ればヤクルト、投手陣で見れば巨人の壁の厚さが分かったところで、最後の分析に映ります。次回に続きます。