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【シーズン1 第12話】インサイドセールスとマーケティングオートメーションの副作用?

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 マーケティングオートメーションツールを導入したい、と考えたら皆さんはどうされますか? セミナーに参加したり、詳しい知人や友人に訪ねる方法もあるでしょうし、各MAベンダーに問い合わせる方法もあるでしょう。今回は外資系ITベンダーで問い合わせをされていた側の経験から、インサイドセールスとマーケティングオートメーションの副作用について考察してみましょう。

 40代で10年ほど携わった外資系ITベンダーのカントリーマネジャーのとき、評価には関係ありませんでしたが、私の方針でEBITDAを重視して経営していました。ご存知のように、日本の銀行は海外から見ると閉鎖的でドメステックな特徴があります。例えば、日本にある銀行預金を海外の本社から遠隔資金移動させたりすることが難しい仕組みになっているのです(日本にあるキャッシュを海外へ移動するには日本の方で送金手続きを行う必要がある)。ちなみに、韓国はキャッシュを海外に送金するのに国の許可が必要だと聞いたことがありますから、さらに難しいようです。

 EBITDAを重視して経営するということは、キャッシュを日本に持つことにつながりますから、銀行管理の企業のようにリストラ(Cost Reduce)しないとお金をWireしない(貸さない)、という態度を本社は取り難くなる訳です。これにより、ローカルでのマーケティング投資などが行いやすくなり(もちろん信頼が必要)、逆に社員数や地代家賃などの固定的な支出は組織(人)のプロテクトのため極力抑えることになります。

 そこで、ユーザーから問い合わせが入ったとすると、できるだけ効率的に営業することを考えます。例えば、比較するソフトや目的が自社製品の領域と違ったり、納期が極端に短かったり、要求があまりに抽象的だったりすると、当面の見込み客にはならないと判断し、小規模な無料自社セミナーなどに誘導したりします。EBITDA重視ですから、ある程度のフィルターを通した問い合わせに対してのみ営業(フィールドセールス)が対応することになります。

 ドラッカーは「マーケティングは営業をなくすことだ」と極端な意見を述べていますが、要するに営業活動を効率よく行うことは顧客創造(Create a Customer)につながりやすい、ということなのでしょう。まさに、マーケティングオートメーションはLeadをHotにする育成プロセスの自動化を支援するもので、マーケティングにより営業活動を効率化するものです。そのため、自動化のプロセスでインサイドセールスに引き渡され、フィールドセールスがface to faceで面談する前に電話がかかってくることもあります(インサイドセールスの役割)。


 あるマーケティングオートメーションベンダーに問い合わせを入れたときのことです。インサイドセールスから電話があり、やりとりを行った後に営業に引き渡されると思っていたら、動画セミナーに誘導されてしまったのです。私としてはQ&Aを行いたい事項が具体的にあったので、営業なり、Sales Engineer(PreSales)と話がしたかったのですが、電話での答えが適切でなかったのか、四半期内のLeadとして認識されなかったのか、有望なLeadに非ずの烙印Lead Qualificationを押されてしまいました。

 Q&Aを満たすための残る方法は、友人、知人に質問をするか、マーケティングオートメーションの網にかからない別の問い合わせルートを使うしかありません。友人、知人の場合は商談にできるかどうか分からない段階では結果的に失望させる可能性があるため、できれば避けたいものです。

 となると、別のルートということで、米国本社に知っているトップマネジメントの外人がいたので、そこから日本法人の代表を紹介してもらいました。いまだに会えずじまいのままですが、インサイドセールスとマーケティングオートメーションの副作用で人と人との面談が以前より難しくなって行くのではないでしょうか(EBITDA重視であるかどうかに関らず)。

 前述の外資系ITベンダーでライセンス契約が数億円のカナダの商談を、PreSalesが現地に訪問することなくWebnar(Webとセミナーを組み合わせたWebカンファレンス)だけでCloseできた、と社内で話題になっていたことがありました。しかし、日本人の私たちはWebnarだけで数億円の契約書にサインをしてFAXできるでしょうか。やはり、リアルなface to faceがあった方が安心できるのではないでしょうか。もちろん、必要以上に営業訪問されるのも「鬱陶しい」ですが、ネットだけでは不安です。

 もし、face to faceの対面が必要ならば、インサイドセールスからの電話やメールに対しては以下のことは伝えた方が必要な情報が得れる可能性が高まります(例え、その通りにならなかったとしても...)。

  • 3か月以内に決断すると言う
  • 予算はその製品が導入できそうな予算を言う
  • コンペティターの製品名を言う
  • できれば会社名、業種ぐらいは言う
  • 質問したいことをある程度具体的に言う

 もちろん、自社に特定のITベンダーやSIerが常駐していたならば調査を依頼するという手段もあると思いますが、特にマーケティングオートメーションは自分で問い合わせを入れ、自分がモルモットになることで良し悪しが分かるタイプのツールなので、各社の「紺屋の紺袴」マーケティングオートメーションを知る簡単な方法「紺屋の紺袴」)を体験してみましょう。

 極論ですが、ネット中心のマーケティングオートメーションが進むと、営業とface to faceで会う機会が減ることは確かです。となると、「この人だから購入する」という要素の強いタイプの商品はどうしたら良いのでしょうか。特にこの分野では、副作用を起こさず競争力があり、なおかつ効率的でSmartな方法を創意工夫する必要がありそうです。

● 雑談のネタ【Coffee Break】
https://blogsmt.itmedia.co.jp/CMT/coffee-break/

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